【声劇フリー台本】贅沢者
何の取り留めもないひとりごとです。
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【利用規則】
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【台本】
……ぼくは贅沢者なのかな。
あんなに欲しくて欲しくて仕方のなかったものが手に入るようになったというのに、どうしてか虚しくて仕方ないんだ。
むしろ、手に入る度、貰うたびに何かが大きく欠けていくんだ。
どうしてだろうね?
いつのまに、こんな我儘になってしまったんだろうね。
満たされることなんてなくて、ずっと空っぽで。
痛くて……どうしようもなく痛くて、仕方がないんだ。
毎日、溢れそうになる何かを堪えてようやく立ってるよ。
ぼく自身を騙して、「大丈夫だ」って言い聞かせて。
そうしたら、いつのまにか何もかもが分からなくなっちゃった。
こんな思いをするくらいなら。
こんなに痛いのなら。
最初から手に入らないままだったらよかったのにって、そんなことすら思ってしまうんだ。
……こんなぼくに、きみは呆れるかい?
呆れるだろうな。
自分でも思うよ。本当にどうしようもない、救いようのないバカだって。
この手には何もない。
何を為すこともできない。
いやと言うほど分かってて、とっくの昔に諦めがついてしまったんだ。
もう、無理なんだ。
気が狂いそうだよ。
少しずつ、自分が無色透明になっていくような感覚がするんだ。
誰の目にもうつらなくなっていくような、そんな。
ぼくは確かにここにいるのに、どこにもいないんだ。
だったらいっそ、最初からどこにもいなければいいのかなって思ってしまう。
一方で仕方がないよなって諦めてる自分もいるんだ。
この手には何もなくて、誰かに何をすることもできないから。
何も生み出すことはできなくて、楽しませることもできない。
そんな奴に、時間を浪費させるわけにはいかないよなって。
だったら少しずつ存在が薄くなって、消えていくのも当然のことだよなって。
冬に降り積もった雪も春には溶けて、夏にはその存在を思い出すこともなくなるだろう?
それと同じことさ。
少しずつ失くしていくのを自覚するぐらいなら、自分から全て捨ててしまいたい。
その方がずっと楽だから。
期待してしまうからいけないんだ。
その味を知ってしまったからいけないんだ。
諦めたままでいればよかったのに。
ぼくは傍観者になりきれなかった。
結果待ち受けていたのは、無力で、無価値で、何もできないっていう現実だけ。
楽しそうな人を見る度、幸せそうな人を見る度、その先の未来にぼくはいないのだろうなっていう諦めがついて回るようになった。
本当に、どうしようもない。
どうすることもできない。
日増しに増えていく痛みに、いつまで一人うずくまって耐えていればいいんだろうな。
……なんて、くだらない恨み言まで出てくる始末だ。
劣等感と疎外感と孤独感を混ぜ合わせた何かを今日も飲み干して。
嘘で塗り固めたハリボテを支えにしていくよ。
それでも痛みが誤魔化せなかったら、瞼を閉じて闇に溶けていけばいい。
こんな言葉を綴って、どうしようもないひとりごとを吐いて、ぼくは一体どうしたらいいんだろうな。
この贅沢者は、いつになったらその欲望を捨ててくれるんだろうな。
ぼくにはもう、よくわからないよ。
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