【フリー台本】霞む星

陰鬱一人用台本です。
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【利用規則】


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 台本のアレンジは自由ですが、台本の意味合いが大きく変わるような改変(大幅にカットするなど)は不可とします。
 便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。

◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。


【台本】


 星を眺めるのが好きだった。
 マンションの屋上で眺める星は、何故だか近くに感じられた。

 そんなもの、ただの錯覚なのに。
 星の輝きに見惚れて、勘違いをしてしまった。

 気づけば冷たい雨が降っていた。
 重たい雲が空をすっかり覆ってしまって、星を隠してしまう。
 それでも僕は、同じ場所から動けずにただただ立ち尽くす。

 ずぶ濡れになっても、凍えても、どこにも行くアテはない。
 こうしている間にも星は遠くへ遠くへと行ってしまうのに。


 何度、あの星に手を伸ばしたのだろう。
 届くわけがないのに。
 星との距離が埋まることなど永遠にあり得ないのに。
 僕はこの場所で、何を期待したのだろう。

 打ち付ける雨は激しさを増すばかりだ。
 これが全て矢だったらよかったのに。
 全身を貫いて、僕をズタズタに引き裂いてくれればよかったのに。
 そんな馬鹿らしいことすら考える。

 いっそ、ここから飛び降りて仕舞えば僕も星になれるだろうか。
 せめて、同じところへいけないかな。
 なーんて。


 そんなくだらないことを考えていたら、遠くの空から一筋の光が差し込んでいるのが見えた。
 どこかで誰かが願ったのだろう。
 分厚い雨雲に生じた切れ間から、星明かりが見えた。


 ああ、そうか。
 力があれば。
 選ばれるような者ならば。
 その資格があれば。
 星は、空は応じるのか。

 きっと、あの星明かりがここに注ぐことはない。
 この先も、ずっと。

 どうしてなのか、その理由も全て、頭の中では分かっている。
 理解もできている。
 けれど何故か、感情は置き去りにされていて。
 その厄介なものが冷たい雨に濡れて、重くのしかかってくるようだ。


 いつか、星は見えなくなるのだろう。
 少しずつ開いていく距離が、時間が、そうさせるのだろうと容易に想像させた。
 それを分かっていても尚、僕はここで星を眺め続けるのだろう。

 どうしようもない莫迦ばかだ。
 さっさと諦めて仕舞えばいいのに。
 執着なんてしなければいいのに。


 分かっていた。
 きっといつかは終わってしまうのかもしれないって。
 だけど心のどこかでは、ずっと続くのかもしれないと、そう思っていた。
 期待してしまっていた。
 割り切れなかった。
 諦められなかった。

 だから。
 だからこそ、こんなにも早くその時が来るなんて思ってもみなかった。

 これから先、僕はいつか消えると分かっていながら、少しずつ霞んでいく星を眺めることになるのだろう。
 そうしてふとしたときに、随分と星が見え難くなってしまったことに気付くのだ。

 その頃には、この冷たい雨は雪に変わっているだろうか。
 何もかも白く染めて、何もかもを奪っていくのだろうか。

 それならそれでいい。
 何もかもを奪い取って、僕ごと消し去ってくれ。
 星が、完全に見えなくなる前に。

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