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佐藤正午さん「ファンならではのネタ」を私に語らせてください

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天神山にのぼろう

佐藤正午作「冬に子供が生まれる」の二次創作小説を書きました。 いろいろ「その後」を考えていたら描きたくてたまらなくなって。 では、いきます。 *     *      *   天神山にのぼろう  「理科の理と書いてオサムと呼びます」  佐渡くんは自分の名前をそう説明する。  あまり覚えてくれる人はいない。苗字だけで事足りるくらいの存在なのだと自分では思っている。  佐渡くんは、息子の創理(ソウスケ)が18になるのを待って妻の美典(ミノリ)と離婚した。  妻は結局タバコ

「冬に子供が生まれる」佐藤正午      ※後半部分にネタバレ考察あります

「冬に子供が生まれる」感想 表紙にいる2人の子供が「マルセイ」と「マルユウ」です。 丸田誠一郎(まるたせいいちろう)と丸田優(まるたまさる)。 同じ小学校に通う2人は小学生のときに、転校生の佐渡理(さどおさむ)と共にUFOに遭遇し、その事件は新聞にも掲載される。 そして10年後「あのときの子供たち」という取材が行われ、そのときの山道での事故で先導のバイクと取材者の2人が亡くなってしまう。 運命が変わる。 大学入学目前の春休み、事故のあとにマルセイとマルユウには変化が

佐藤正午さんの「冬に子供が生まれる」2024年1月30日発売予定です!

待ち切れない気持ちが長すぎて「自分のなかでの情報解禁は2週間前」と決めていました。 7年ぶりの新作? 「月の満ち欠け」から7年? 自分の中では5年くらいの感覚だったのですが、月日のたつのは早いものです。 同学年の友人の「マルセイ」と「マルユウ」の物語。 同級生の思い出話にびみょうな食い違いがあり、読者の記憶も混同される。「UFOのこどもたち」だった2人が巻き込まれた事件のこと。それに関わった人々の違和感。そういうものが語られるうちに、わたしたちは「気づかされて」ゆく...

佐藤正午「新刊ヒット祈願」わたしの推し活グッズを披露します。

 2023年8月まで小学館「webきらら」で連載されていた「冬に子供が生まれる」。  詳細の発表はまだですが、完結した小説なので、早遅新刊として発売されることは間違いありません。  そこで。  かなりフライング気味ではありますが「新作ヒット祈願」として、わたしの「推し活グッズを披露します。    では、いきます!(年代に関係なく、順不動です)  大事にしているつもりでも散逸してしまうものです。  そして、わたしが死んだら、きっとあっさりと処分されてしまうような些細なものなの

泣き散らかしたおまえがなにを言う〜「月の満ち欠け」〜映画の感想

* この文章には激しくネタバレがあります。映画を観る前の方はご注意ください 小説の映画化されたものを見るときに、自分に言い聞かせていることがあります。 自分は小説の文章を自分の頭の中で組み立てている。人も同じように頭の中で組み立ててゆく。 だから、けして自分のイメージどおりの映画化というのはありえない。 映像化というのは妄想を具現化するものだから、ちがうのは当たり前。 だから「違うというのを理由に」その映画をに違和感を抱いたりするのは、まったくオカド違いの感想なのだと。

今日から「めめ推し」、今日から「snowman箱推し」! 早く見たいよ「月の満ち欠け」

佐藤正午の「ロングインタビュー 小説のつくり方」は、小学館の「きらら」での連載。 往復書簡の体裁でのインタビューで、きらりの創刊時から欠かさず読んでいます。 とちゅうで冊子からweb連載になったけれど、そのままずっと読んでいます。 書簡集は現在4巻まで発売中で、5巻が予約受付中。 ファン垂涎のネタが多くて…というのもあるけれど、「好きな作家の生存確認を毎月行なっている」というのが正直なところです。ええ、お若く見えてもやっぱり健康は気になります。 長編の進み具合はどうなのか、

そうだ、名前を変えてみようと、ある朝おもった

今日から「さとうあかつき」と名乗ることにしました。 以後よろしくお願いします。 *     *     * 知らない人と出会うために新しい名前を名乗ることに抵抗はなかったし、ずっとそんなふうにしてきたように思う。 けれど、なんとなく「替えてみたいなあ」とうっすら思っていて。それで「そうだ!変えてみよう」とこのタイミングで決めた。 名前は「さとうあかつき」。 漢字がいいか、平仮名がいいか迷ったけれど、平仮名にしました。飽きたらまた変えるかもしれません。 それではここ

佐藤正午さん「ファンならではのネタ」を私に語らせてください 「月の満ち欠け」映画化記念に「登場人物相関図」を作りました。

佐藤正午ファンなので、何度も何度も読んでいる作品です。 ストリーのおもしろさもさることながら、その文体を追うだけで幸せな気持ちになれます。 正木瑠璃が公園の砂場で佇んでいたり、小山内瑠璃が「黛ジュンの夕月」を口ずさみながら校庭の鉄棒よりかかっていたり。 そのひとつひとつの文章が、まるで映画のスクリーンのよう。 だから自分なりの映画シーンを何度も頭の中に思い浮かべていました。 「シャフトのアニメだったらこんな感じになるだろうな」などとアングルまで考えてみたりしてw そんな「月の

「書くインタビュー」4 佐藤正午 (佐藤正午さん、ファンならではのネタをわたしに語らせてください)

まったくもってふざけた装丁だと思います。 あの「直木賞の賞状?」がそのまま表紙になってるのだから。 しかも! 表彰式に行かれてこの賞状をいただいたというのならまだしも、ご本人は会場に行かず編集者の坂本氏に出向かせたのに。実際に受賞の挨拶を代読したのは坂本さんなのに! そうですか、なのに、表紙にするわけですか? いえ、作品は素晴らしいし、大好きだし「日本を代表する7人の佐藤正午ストーカー」を選ぶなら、絶対に選出される自信ありまくりの私ですが。 いやはや、この表紙には唸りました

映画「鳩の撃退法」本通り裏を歩いてみる

ネタバレ可の本通裏サイトの謎ときに参加してしました。 考察① 津田伸が書いた小説はどこまで本当だと考えるか#その質問は受け付けないまず、全てをフィクションと仮定して、その中で「これだけは本当だろう」というところをピックアップしてみました。 *この町に幸地秀吉という本好きの男がいて、ときどきドーナッツショップで見かける。 *この町の本通り裏に「倉田健次郎」という男がいて、会ったことはないけれど、裏社会をとりしきっているらしい。 それだけ?  いやいや、それだけなら「書いち

映画「鳩の撃退法」にまだ翻弄されている

パンフレットを読みながら時系列を整理しているのだが、まだ翻弄されている。 小説は何度も読んでいる(連載も含めて)。 なのに、まだ、微妙な違いや仕掛けに翻弄されている。 読み解きたい気持ちと、いつまでも翻弄されていたい気持ちが入り混じる心地よい時間。 ああ、こんなふうに作品についていつまでも考える時間って本当に幸せですね。 それではおいおいネタバレしながら、この映画について紐解いていきたいと思います。 ネタバレ1:ピーターパンの本の行方についてそれでは、まずは「ピーターパ

映画「鳩の撃退法」を見てきました!佐藤正午さん。ファンならではのネタをわたしに語らせてください6

好きな作品が映画化されるときの気持ちって、みなさんはどんな感じですか? 「おもしろかったらお得だろうけれど、おもしろくなかったら、ひどくがっかりするにちがいない。だから、最初から期待はしない」。 わたしはそんな感じです。 「こんなものが映画になるのか?」と思われるほど難解な時系列の「鳩の撃退法」。 映画にできるわけがない。 できたとしても期待通りなわけがない。 などと言い聞かせ、自分の期待感に自分でブレーキをかけながら、今日までの日々を過ごしてきました。 たまたま今日は仕

再生

佐藤正午さん「ファンならではのネタ」を私に語らせてくださいその5:「月の満ち欠け」の編集者の坂本政謙さんが岩波書店の社長に就任しました

「月の満ち欠け」の編集者である坂本政謙さんが、岩波書店の社長に就任される。吉報だ。いてもたってもいられなくなって、お祝いのムービーまで作ってしまった。もともと佐藤正午さんのファンであった坂本さんは18年前に執筆のお願いに佐世保を訪れる。「待ちます、いつまでも」と、他社の原稿があがるのを待ちながら、エッセイ「ありのすさび」などを出版。そうして2017年に「月の満ち欠け」が出版され、直木賞を受賞した。伝説はいくらでもある。サイン会前のレストランで「直木賞をとりましょう」と言って作家にたしなめらりたり、あげくは直木賞の授賞式で原稿の代読をさせらりたり。そんな坂本さんのすごいところは「この作家にぜひ描いてほしい」という自分の思いを、長い年月をかけてを貫いたことだ。佐藤正午は「知る人ぞ知る」作家だった。それを直木賞作家におしあげたのは坂本さんだと思う。ただただ素晴らしい作品描いてほしいという、とてつもない情熱。サイン会のあとの記念撮影のときに作家はこう言う。「坂本くんもいっしょに撮って」。ここにもまた編集者の力をリスペクトした作家の愛を感じた。愛には愛で返せ、だ。わたしもいちファンとして、いてもたってもいられず愛をこめて動画を作りました。坂本さん、岩波書店社長就任おめでとうございます!

佐藤正午さん「ファンならではのネタ」を私に語らせてください:その4「驚愕!鳩の撃退法が映画化されたってよ」

「鳩の撃退法」が映画化された! え? あんな複雑な小説がどうやって映画になるの? というのが正直な感想。 しかし、わたしの正直な感想なんてすっ飛ばして、公式ツイッターがあれよあれよと更新されている。Time flies like an arrow! 「鳩の撃退法」は2014年11月より小学館より出版された上下巻の長編小説である。 もともとは小学館の「きらら」で連載されていたものだが、毎月読んでも複雑でわからない。 そしてやっと出版されて一気読みしたが、やはり時系列と「現実