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『ローション』

ある日、職場の電気部材の売場にローションが置いてあった。ひとくちにローションと言ってもいろいろである。売場にあったそれは、避妊具で有名なオカモト工業のラブローションだった。
電気部材担当の偉大なるアイ本先輩(女性)はとてもエロスが好きな人なので、とても素晴らしい発見に興奮し、とても水を得た魚のようになっていた。ちなみに、彼女は昔「私の赤裸々なエロ体験」みたいなことをついたての後ろで語るテレビに出演したことがあるらしい。


ところで、このローションはなにゆえ電気売場に放置されていたのであろうか。弊社ではエロスグッズは販売していない。念のためレジに通してみたが、やはり登録はされていない。となると、誰かがわざわざ鞄の中からそれを取り出し、人目を盗んで売場に放置したのであろう。それが単に置き忘れただけなのか、意図したものかはわからない。
しかし、私は今回の件について丸善に檸檬を放置した梶井基次郎を感じた。犯人(?)は鬱屈した気持ちでローションを握り、その幾分かくびれた円柱形に雑貨屋の風景を収縮したのである。

令和において、丸善は雑貨屋になり檸檬はローションとなった。ただ、人の気分は不変なのである。もし、いま梶井が生きていたら『ローション』という小説をしたためていたに違いない。

ところで、ローションって使った後の掃除が大変そうですが、どうやって処理するのでしょうか。

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