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ポスト・ウイルス

これは443回目。ウイルスの感染拡大で大変な状況にありますが、その後に起こることを、びっくりニュース的に並べてみました。

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新型コロナ・ウイルスの終息のあかつきには、これまでの世界秩序とは違うことがたくさん起こってくるかもしれない。

要するに、それ以前の体制に対して修正が求められるというケースに、なにがありうるかということだ。わたしたちの日常生活では、なかなかこれまで浸透しなかった、デジタル・トランスフォーメーションが一気に進むかもしれない。

未だにタイムカードを押していること自体がナンセンスなのだ。ただ、こういう日常的な大きな来たるべき変化というのは、ここでは一応横に置いておこう。もっと大きな話を考えてみたい。ウイルス後に、世界的なレベルでどういう大きな変化が起こるだろうか、という話だ。

ウイルスに直接影響を受けた部分と、直接は関係ないのだがこの騒動に便乗して行われた「事件」と二つのアプローチがある。

まず、ウイルスに直接影響を受けた部分だが、これは明らかにチャイナ・リスクの問題に尽きる。

ウイルス終息後、起こることはいくつか考えられる。

・アメリカは、ウイルス発症序盤におけるWHOと中国の蜜月的なメッセージに深い懐疑を抱いている。これは、おそらくアメリカだけではない。多くの一般人が疑念を持っているはずだ。とくにアメリカが問題視しているのは、WHOのポストを中国人が多く占めていること、アフリカ中心に帝国主義的なヒモつき経済援助を行ってきたことなどで、WHOがウイルス発症時点で中国に明らかに肩入れしたスタンスだったことを糾弾している。WHOだけではない。中国人が国際機関を牛耳り、裏金に物をいわせてグローバリズムを壟断している状況に対して激怒しているわけだ。アメリカはWHOへの資金拠出を拒否し始めている。この流れは、WHOにとどまらず、国連組織全体に大きな激震になってくるはずだ。アメリカのことだから、「話にならなきゃ、おれはもう一つ別の国連でもつくるぞ、いいな?」と言い出しかねない。国際秩序の再編成だ。

・各国が、今回のウイルス騒動の元凶として、中国に対する賠償請求が一気に噴出する。すでにアメリカはその意思を表明しており、各国にこれに追随する動きが出始めている。初動でSARSのときのように隠蔽があったとすれば、これはグローバル規模で炎上することは間違いない。少なくとも、人から人への感染をしないと言い切っていただけに、この中国とWHOの初動のミスリードは損害賠償に値する重大な行為だったといえる。

・ウイルスの原因となった武漢の発生源の究明に対する徹底的な追及がなされる。そこに中国の軍事組織である某化学研究所の関与(人為的ミスも含めて)の有無が焦点になる。仮に関与があったとみなされれば、中国に対する政治・経済的な制裁がグローバル展開する可能性がある。つまり、バイオハザードであったかどうかの問題だ。

・中国の外貨準備が底をつくので、景気回復は一時的に終わり、これまで以上に、長期デフレ化が進行。失業率恒常的な増大と、所得格差が拡大し、民主化運動が共産党体制を脅かす。最初に「のろし」を上げるのは間違いなく香港である。今回のウイルス拡大の初動のミスをやはりテコにするはずだ。中国政府は対処を間違えれば、レジームチェンジ(体制転換)が起こる。

・その場合、台湾が独立を選択するかどうか、歴史上千載一遇の機会にもなってくる。香港の自治権回復の程度、あるいは強硬に独立を希求する場合には、台湾の独立運動は必至になる。

・各国は、経済的に中国に深入りすることに大きなリスクを認識したことから、従来のグローバリズムに大きな方針変更がなされることになる。マスク一つそうである。ウイルス感染拡大序盤、日本は中国に大量のマスクを供与したが、後になってそれどころではなく、国内で逼迫するという事態に陥った。つまり、今後生産設備の一定の国内回帰が鮮明になることで、中国経済は従来のように各国の足もとを見た強気の外交ができなくなってくる。

・こうした中国の長期的な苦境をテイクチャンスして、アメリカは二強の覇権争奪戦に一気に勝利しようとする。したがって、11月のトランプ政権二期目に入ると、一期目どころではない中国への経済制裁を強め、香港・台湾・ウイグル自治区への政治的関与を強め、外から中国のレジーム・チェンジを後押しする。貿易紛争は、第一回目のただの貿易紛争と違い、知財の問題や、補助金制度の問題など、ぜったい中国は触られたくないところを、アメリカはぐりぐりねじ込んでくるはずだ。それを中国に呑ませるのに格好の取引材料が、民主化問題・少数民族弾圧問題なのだ。

・中国というガブ飲み国家が急速に世界の経済的規模を縮小させていくときに、代わりに台頭してくるのがインドであることは火を見るより明らかで、世界は中国という経済ファクターが抜けてしまう穴を、インドでカバーしようとすることになる。総人口自体、インドは中国を逆転する。各国政治家や企業の中国詣では鳴りを潜め、インド詣でが盛んになってくる。

こうした中国という焦点だけでも、これだけのことがありうる。

それでは今回のウイルス騒動に、便乗した事案とはなんだろうか? 言うまでもなく原油暴落である。

これは直接ウイルスとは関係無かったが、別のシナリオが進行しているためである。たまたまウイルス問題が出て、いったんは国家主導で経済活動が緊急避難的に停止状態になり、金融市場が大混乱するため、そこに便乗して原油を暴落「させた」意図があったことは明らかである。アメリカにとっては、ウイルス感染拡大で経済停止状態にならざるをえないので、むしろ原油暴落で、半値以下になったほうが、国民経済にとっては非常に助かるのだ。

サウジとアメリカという最大の原油生産・消費国家の二つが周到に練ったシナリオだと思うが、標的は「邪魔な」ロシアとイランを黙らせることにほかならない。もっと言えば、両国の体制転換(レジーム・チェンジ)を狙っていると想定できそうだ。

ロシアの国家収益の7割が資源依存である。過去、原油暴落でソ連が崩壊したのと同じパターンを狙ったものであろう。

イランも同じである。パーレビ国王の体制が崩壊し、革命イランが成立したのも原油暴落によってである。

両国とも原油依存度が大きすぎ、この間まったく国内に新しい産業を生む努力をしてこなかった。

この弱点を衝くには、原油暴落を起爆剤にするのが最適であるというのが、サウジ=アメリカ枢軸の既定路線にほかならない。

こうしてみると、世界の政治地図でポスト・ウイルスで大きくパラダイム・シフトが起こるとしたら、やはり一番の注目は、中国、ロシア、イランという十九世紀か、それ以前にも擬することができるくらいの旧制度国家(アンシャン・レジーム)の崩壊が起こるかどうか、のような気がする。

振り返って、日本ではなにも起こらないのだろうか。

なにも変わらないこの国で、一番変えなければならないものはなんだろうか? 今回のウイルス騒動で、とりわけ浮き彫りになったのは、やはり官僚制度の動脈硬化なのだろうと個人的には思っている。

たとえば、この騒動の真っ最中に、一世帯30万円の緊急避難的な現金支給とう案が浮上した。

しかし、申請ベースであった。一体、固定資産評価、所得が減少した証明など、どうやって具体的に個々の世帯が行い、それを役所が審査し、いつ実際に支給されるのか・・・こうしたあまりにも非現実的な対策案を出したのは、官僚である。

官僚は、富裕者と所得の低いもの一律は不平等だという。そのために、申請ベースで資産・所得の評価ごとにやるべきだという、ばかばかしいほど杓子定規な原理主義を官僚というものは持ち出すのだ。

それによって、どれくらい第一線の役所の現場が混乱するか、各家庭がどのくらい余計な作業の負担を強いられるか、どのくらい支給が遅れるか、そうした問題を考えもしないのである。

安倍首相は10万円一律支給を要求していたらしいが、やはりそこでも足を引っ張ったのは官僚であるらしい。

そもそも官僚(財務省)は、こうした現金支給に難色を示したともいわれる。消費に効果がない、というのだ。

前回消費増税のときに、1万円だか1万数千円だかの支給が行われたが覚えておいでだろうか?

官僚はあのとき結局国民はそれを消費に回さず、貯蓄に回したから、今回もばらまいたところで意味が無いと反論したようである。

だいたいからして、たかだか1万数千円もらって消費に効果があると思って具申したのだとすれば、そういう官僚の頭のほうがどうかしていよう。今回は1人当たり10万だ。しかもその月、越せるかどうかという危機的状況にある人たちがいるという状況下で、1人10万円(総額12兆円)は大きい。この勘定すらできないのだろうか。

しかもである。今回は、消費をさせるために支給するのではない。月末を生き残れるかどうか、そのために支給するのだ。借金に回そうだなんだろうが、どうでもよいのだ。こういう血の通った政治というものを、官僚は考えられないのである。なんのためにばらまくのか、その意義すらまったく考え違いをしている。消費喚起ではない、緊急事態だと言っているのが、わからないのだ。

結局、あちこちから非難轟々だったのであろう。官僚も「一律」10万円支給で折れたようだ。当たり前の話だ。申請や、資産・減収評価などしている暇などないのだ。それでも5月一杯で支給などという呑気なことを言っているらしい。今月越せるかどうかわからないという状況なのにである。

聞けば、ドイツは申請したら、2日後には現金が銀行口座に振り込まれたそうである。この驚くべき速度が政治なのだ。

この日本の政治に稚拙遅滞という惨状を変更することが、なにより一番重要な問題だろうと個人的には思っている。

解決は簡単である。

・退職後の天下りを、永久的に全面禁止にする。罰金を課せば、有名無実化しないだろう。天下りした上級官僚は退職金没収といったようなものだ。また各省庁のトップと次官級まで、新任の首相に人選を一任。官僚ではなく、民間からの抜擢を自由にする。そうすれば、東大出身者が猫も杓子も国家公務員上級を目指すなどという馬鹿なことも起こらなくなるだろう。えらくなれないのだから。

・国家公務員上級試験合格者は、10年に1度、2年間、民間企業に出向を義務付ける。それも所轄の分野とはまったく無縁の業種であることが重要だ。30-40年間の公務員生活のうち、6-8年間は、民間に従事することになる。その間の給料は当然役所持ちだ。これをしない場合は資格を失うということにすればいい。要するに、一般社会の現場を見てこいということである。机の上で、くだらない勘定ばかりしているな、ということなのだ。

今回、日本政府が120兆円の政策発動だと胸を張ったが、(GDPの2割である。各国は1割がだいたいのところだ。ウイルス騒動で、経済価値の1割は軽くすっ飛ぶという計算だからだ。)とんでもない話で、実際に国家が実弾を出す真水はこのうち39兆円でしかない。

つまり2019年のGDP総額が557兆円であった。39兆円ということは、7%でしかない。明らかに見劣りする拠出額なのだ。足らないのである。

おまけに、39兆円のうち、16兆円はウイルス発生以前に決まったものであるから、実は22兆円くらいしか「真水の真水」が無いということになる。つまり、GDPのたった4%である。ウイルス騒動で、緊急事態だと言っていながら、官僚が絞り出してきた額というのが、GDPの10%という穴(仮説)にはるか及ばない4%だけだということだ。

驚くべきほどケチなのだ。これは、誰がこういう案を考えたかといえば、官僚である。

財政健全化主義という最悪の原則論を建前にしているからにほかならない。

やっと今回、安倍首相がこだわって一人当たり10万円の支給になるようだから、これで真水の真水が12兆円分増える。

合わせて、33兆円前後の真水の真水だ。これでもやっとGDP総額の6%前後でしかない。とてもではないが、危機に際して、勝負すべきところで「なにもしない」国家だということがよくわかる。

結局足らないということになって、また補正予算を断続的に組むことになるはずだ。ずるずると、二回目、三回目と補正予算を汲んで、GDPの1割になっていくことになる。もう、見え見えだ。

少しずつ、そして遅い対策というのがいつも日本の政治の悪弊である。これはほとんど誰のせいかというと、官僚機構の硬直化によるものだと言っても過言ではない。

先の大戦も同じである。軍人が、明治のころの侍の延長だった頃と違い、軍事官僚と化していたのとまったく同じなのである。

日本の政治がことごとく失敗してきたのは、この官僚化という病理である。

東日本大震災という自然災害が、そして今回のウイルス蔓延という不可抗力的な災難が、それにとどまらず、不必要なダメージがとめどもなく増大してしまうのは、常に政治という「人災」によって起こっていると、わたしは思っている。

いろいろ、変わらなければならない日本の問題というものはある。

しかし、なにを変えたところで、まずこの官僚機構を根本的にひっくり返さない限り、この伏魔殿がすべてを台無しにするのだ。

きっと、変わらないのだ。そしてこの国民は騙されても、お上を信じたまま、愚痴と不平だけ言う無責任な民主主義が延々と続いていくのである。




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