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#075 やさしいポートフォリオ分析(1) - 「満足度」と「重要度」の2軸でアンケートを整理する

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今回から、7回シリーズで、「ポートフォリオ分析」のやり方について書いてみたいと思います。

「ポートフォリオ分析」はアンケートの分析手法の1つで、アンケート結果を「満足度」と「重要度」の2軸で表現します。
自社製品のいろいろな要素を2次元の平面上にマッピングすることで、まずどこから手をつけたら良いかがひと目でわかる、シンプルですがとても効果的な分析手法です。

ポートフォリオ分析の例

では、具体的な例を見ていきましょう。

以下は、あるコンシューマ向けワイヤレスイヤホンのポートフォリオ分析を行った例です。
アンケート項目として、ある特定の製品について以下の5項目(以下、「要素」と呼びます)のアンケートを集計した、という想定です。

・機能(ボタンの数や音質調整機能など)
・装着性(イヤホンを耳に入れたときのフィット感など)
・デザイン
・音質
・価格

ポートフォリオ分析1

横軸は、各要素が顧客にとってどれくらい重要かを示しています。
縦軸は、各要素がどれくらい満足されているかを示しています。

縦軸の満足度を中心にこの結果を見ると、機能や音質、装着性については満足して頂いているものの、デザインや価格については不満を持たれていることがわかると思います。

あなたが企画担当者としたら、まずどこに手をつけますか?

では、あなたがこの商品の次モデルの企画担当だった場合、どのような方針で次モデルのスペックを決めていけば良いでしょうか?

ここで重要になるのが、横軸の「重要度」です。

例えば、デザインと価格は両方とも満足度が低く、次モデルでは是非改善していきたい項目ではあるのですが、実際の製品開発の現場では、これら項目を両方とも改善するのは困難な場合があります。
例えば、デザインを良くしようとすると、デザイナーに高額の報酬を支払ったり、高級感のある素材を使ったりしなければならず、その結果コストが上がってしまい、結果として価格も上がってしまうことがあります。
つまり、デザインと価格を両方とも改善するのは困難、ということになります。

そのような観点でもう一度上の図を見ると、お客さんがまず求めているのは価格をもっと安くすることであることがわかるでしょう。
すなわち、次のモデルで考えるべきは、まず如何にコストダウンして価格を安くできるかであって、デザインの改善は一旦後回しにしておくのが良い、ということになります。

ポートフォリオ分析の見方

上記の話を一般化したのが以下の図です。

ポートフォリオ分析2

ポートフォリオ分析の結果を見るときに、まず注目したいのは、右下の「重点改善項目」
ここを改善できると、商品の魅力がぐっと増すでしょう。
今の商品で不満を持っている人が買い換えてくれる、買い替え需要も期待できそうです。

次に見るのは、右上の「重点維持項目」。ここは自社製品の強みになっている可能性が高いです。
また、仮に他社がここを実現できていない場合、USP(Unique Selling Proposition: お客さんがその製品を選ぶ理由)として積極的に広告宣伝で押していきたい部分です。

注意したいのは左側の要素。
これらは、自分たちは重要だと思っていても、実はお客さんはそれほど重要視していない要素かもしれません。あまりこれらの要素に力をかけてもなかなかお客さんには刺さらないことが多いです。

特に、ポートフォリオの右側の要素とトレードオフの関係にある場合、例えば前述の「デザイン」と「コスト」のトレードオフの関係にあるような場合は、勇気をもって切り捨てる(デザインをあきらめてコストを下げる)という戦略をとる必要があるかもしれません。

ポートフォリオ分析は、トレードオフに対する答えを提供してくれる

このように、ポートフォリオ分析は、「満足度」に加えて「重要度」も同時に見ることで、複数の要素のトレードオフに対する答えを提供してくれます。
これにより、次の商品企画の軸となる商品戦略を立てることができるようになります。
戦略立案において大切なのは、何をやらないかを決める、ことだと思います。

さて、次回は、このようなポートフォリオ分析を行うためには、どのようなアンケートを作れば良いかについてまとめていきます。

まとめ。

(1) ポートフォリオ分析とは、アンケート調査の結果をまとめる際に良く使用される方法で、アンケート結果を「満足度」と「重要度」の2軸で表現します。

(2) ポートフォリオ分析を行うことで、製品の各要素を、「重点改善項目」「重点維持項目」「改善項目」「維持項目」の4種類に分けることができます。

(3) デザインとコストのように、製品開発においてトレードオフの関係になる要素がある場合、ポートフォリオ分析の結果を見ることで、どの要素に優先的に取り組むべきかの戦略を立てることができるようになります。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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