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Xをもっと楽しむためのX

新しいプロモーション動画がアップされました。レンズだと三本目の動画でしょうか。
FUJIFILMオフィシャルだと視聴者は海外の方が多いので、「フジの50mmF1.0や23mmF1.4の動画に出てたよね」と覚えてもらえて、思わぬところから反応があって刺激にもなります。
今回のミッションは、次世代レンズの魅力と役割について、最初期からXシリーズを使い続けている立場から、それぞれのレンズの個性を引き出すような写真を撮って、それについて語っていくこと。

写真家は、素材の魅力を深いところで理解して引き出し、わかりやすい形にして提示するのが仕事だと思っているので、こういう役割は好きです。
レンズのテストを繰り返しながら、どんな写真が撮れるだろうかって考えている時間が楽しいし、締め切りもそんなにキツくないからチャレンジもできます。
自分で出演するのは慣れないけど、そこ上手くなっていっても・・・。


みどころ

動画撮影スタッフのプロフェッショナルな仕事により、ぎゅっと凝縮されたビデオになっていると思います。使われている写真もすごく気に入ってます。
とくにカメラを構えるときのタイム感は、ぼくが実際に写真を撮るときの心の動きに近くて好きです。
これまで何度か撮影しているところを撮ってもらったことがあるのだけれど、ぼくの心の動き———あっ、あれいいな、タルコフスキーみたいじゃないか! ちょっと露出アンダーにしてみるか、それだとフィルムシミュレーションはアスティアにして、もうちょっと待ったほうが・・・いや、今だ———というような流れは残せません。
ぼんやり歩いているおじさんが急にカメラを構えてすぐに下ろしちゃうだけ。
でも今回のビデオでは(実際にはあんなゆっくりカメラを持ち上げないしファインダーを覗いているのは一瞬だけど)心のタイム感が動画から伝わってきます。スナップ写真を撮るってこの感じなんだよなって思う。そこはすごく嬉しかったです。

個人的にやってみたかったこと

スナップにちょうどいいバッグ
カメラ一台とレンズ三本(実際には予備があるからカメラ二台)を持ち歩くのに、ちょうどいいバッグはなかなかないので、きっとみんなも苦労しているはず。

例えばビリンガムのハドレーは、サイズ感はいいけど、マチがほとんどないため膨らんでしまって蓋がうまく閉まりません。いまの時代、あれでもクッションが過剰に思えます。愛用しているBradyは、重さがある機材を入れると中央が垂れ下がってしまう。
バックパック型は小型カメラに最適化されていないし、底が浅い船形のショルダーだとレンズをつけたボディが収まらないです。
そこでハンティングワールドのショルダーバッグを引っ張り出してきて、薄手のクッション仕切りを入れ、一台はたすき掛けすることで、けっこうスマートに持てたんじゃないかと思います。

このバッグがいい、他はダメってことじゃなく、身近なバッグを自分の使いやすいように改良してみたり、定番だからって自分に合わないことがあってもガッカリしないのがいいです。苦行みたいに考えないで、いつか最高のバッグと出会えたらいいなって楽しみながら。

二十年くらい前にトランジットで台北に寄ったとき免税店で買いました。廃盤かも。


大人がカメラをどう持つか

首だと痛くなるし、肩だと滑り落ちるのが怖いし、昔からカメラはたすき掛けするのが好きで、それ用の長さのストラップを自作しているくらい。
ときどき「たすき掛けするとき似合う服は何かな?」と考えることがありました。
オシャレに見られたいとか、カッコよくなりたいってことじゃなく、いまご時世としてカメラを持って歩いていると周囲の視線が気になったり、スマホが大きくなったせいでカメラを持ち出すことが減っている人も多いだろうから、気軽にカメラを持てるようだといいな、と。

朝から晩までスナップを撮っていられる日なんて例外で、そのまま知人とランチをしたり、美術展に寄って、無印良品やアップルストアで買い物するのに、街に溶け込んでいて、でもちょっと大人っぽい落ち着きはあって。
バブアーは流行りすぎてコスプレみたいになっちゃう気がするし、初めてビデオに出たときにもう着ました。マウンテンパーカー、バラクータのようなブルゾンも試してみて、結局はステンカラーコートに決定。
会社員の通勤着のイメージが強いけれど、パリではジーンズに合わせてカジュアルに着ている人が多く、ポール・ウェラーが「フレンチ・アイビー*」と言われるファッションスタイルを流行らせたとき、アイコンになっていたアイテムです。

*伝統的なアイテムに違和感を持ち込むことでドレスダウンするファッションで、ステンカラーコート、リジッドのデニム、白い靴下、ローファーの組み合わせが代表。基本はアイビー、でもアイテムにひねりが効いている。
プレッピーともちょっと違い、とにかく雰囲気がいいけど、ポール・ウェラーのかっちょよさがあってこそ。リバイバルブームが来ているらしいです。

ステンカラーコートといえば、上に書いたように音楽ファンだとポール・ウェラーでしょうが、映画ファンなら「ブリット」のスティーブ・マックィーン。じつは二人ともバーバリーじゃなくアクアスキュータムらしいので、僕もそれを。
この二人より漫画「タンタン」の影響があるかもしれません。トゥーサンの小説「カメラ」とか。

写真のための写真じゃなく、日常のなかの発見や驚きを


松尾芭蕉の解説本を読んでいたことや、コロナ禍で旅行に出かけられなかったこともあって、ふだんの暮らしのなかで心が動かされたことを写真にして残そう、しかもそこに華を加えてみたいという気持ちがありました。
だから「作例を撮ろう!」と構えて撮った写真はありません。連写もしてないし、いつも通りRAW現像もなし。

今回の三本が18mm,23mm,33mmで、レンズ自体の個性で面白くなる画角じゃなく、「まなざしに寄り添う」レンズだったことも、きっと影響しています。

できることならそれぞれのレンズが持たれがちな先入観、18mmだと荒々しいスナップかナチュラルな風景、23mmだと散歩しながらの何気ないスナップ、33mmはスナップポートレート・・・というような既存の使い方に、新しい提案を加えられたらという願いもありました。ズームでカバーされる画角だけれど、単焦点で切り取っていく楽しさも含めて。

りんごが光る時代のMBAを使っているのはオマージュ

ここに挙げてきたことのどれかひとつでも、写真と併せてみなさんの心に届いたら嬉しいです。X,GFXともに動画が充実していて、エンジニアから写真家まで、それぞれの立場で写真を交えてメッセージを発信しています。
迷っていることの答えや、新しいところへの扉があるかもしれないので、ぜひ見てみてください。

大きさやデザインはX-T系に最適化されているように思うけど、X-Pro3やX-E4に付けても楽しい。



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