シニア小説家志望の雪ん子おばさん

シニア小説家志望の雪ん子おばさん

最近の記事

毒親からの解放ストーリー (23)

 本からはたくさんの事を学んだおかげで知識が増えていき、知らないうちに成績も良くなって、徳島の大学に来ることができている。 最近は、書く事にも興味を持つようになった。自分ではまだ表現出来ない事はたくさんあるが、親子についての物語を書いてみたいと思い始めた。  家族から離れてみて初めて感じる事がある。そして母から距離を置くことで客観的に見える事もある。そうした事を文章にできたらと思ったのだ。   母とは離れているから、こちらでは楽しく暮らせるはずだった。それなのに、家が恋しい

    • 毒親からの解放ストーリー (22)

       私は小学生の時に図書係にならなかったら、今こうして医学部にはいなかっただろう。初めのうちは図書室が私の逃げ場所だった。 母の目も、先生の目も届かない、図書室のかび臭い書棚の陰に隠れて、幼稚園生が読むような絵本を読み漁った。  その頃の私は、いつも母から怒鳴られたり、ぶたれたりしていたものだから、どうすれば母から怒られずに、家で過ごすことができるかばかりを考えていたので、授業を受けていても上の空だった。当然成績も振るわず、家に帰れば母から怒鳴られ、怒られるという悪循環の毎日

      • 毒親からの解放ストーリー (21)

         四月、無事入学式が終わった。徳島での母のいない生活が始まった。見張られていない生活は初めてなので、心地良いのか悪いのか、自分でも判らない。とてもおかしな感覚だ。 自由に振る舞い、誰からも命令されない生活をするということが、なんだか自分を不安にさせるのだ。これで良かったと自分に言い聞かせながら下宿生活に慣れていくしかない。 一年生は教養課程なので、高校の延長の様だが、一般教養の科目ばかりだけではない。実験や実習があると、その度レポートを書かなければならないのでかなり忙しい。

        • 毒親からの解放ストーリー (20)

           ユリの学校長からの電話には本当に驚いたわ。私には何も話さないで、夫とユリの二人でしめし合わせてやった事なのね。何かコソコソしているなとは、思っていたけれど、まさか医学部を受験して、そこに合格したなんて、晴天の霹靂って、こういうことを言うのね。  あの子があんなに頑張り屋だなんて、誰に似たのかしら。私が上手に育てたからよ。きっとそうだわ。  それに比べると宏はだらしないったらないわ。大学には行きたくないって言っているし。夜遊びばかりしているみたいだし。小さい頃は本当に可愛が

        毒親からの解放ストーリー (23)

          毒親からの解放ストーリー (19)

           まず母に報告しなければならないので、学校から母に電話をしてくれる様に頼んでみた。私は私の高校から、現役で国立の医学部に入学した初めての学生だったので、校長先生をはじめ、全学年の先生方も大層喜んでくれた。そして担任の先生は私のお願いを、少々いぶかりながらも快く引き受けてくれた。 「こんにちは、中井さんのお宅ですか。ユリさんのお母様でしょうか?私、学校長の林と申します。この度はユリさんが徳島大の医学部に合格致しました事を心よりお祝い申し上げます。本校で初めての国立医学部への現

          毒親からの解放ストーリー (19)

          毒親からの解放ストーリー (18)

           日曜日、久しぶりに父が家にいた。 「学年一位を取り続けることが出来たので、校長先生から褒められたの。それで大学は徳島大にしようと思っているのだけれど、お母さんは何て言うのかな?私が家を出て地方の大学に行くことを」  父の反応を伺いつつ、勇気を出して言ってみた。 「大学を決めるのは自分自身だから、トライするだけしてみたら良いのではないかと思うよ。母さんには私から言っておくから」  以前、春期講習の件で、父をあてにして母に頼んでもらった時の事を思い出し、不安になったけど自分で

          毒親からの解放ストーリー (18)

          毒親からの解放ストーリー (17)

           父のお父さん、つまり私の祖父は高校の教師として神奈川県に赴任して来たと聞いていた。だから徳島には縁がないわけではないが、頼れるような親類縁者がいるわけでもなかった。  夏休みに入る前から週に一度、担任から個人的に小論文の書き方の指導を受けられるようになった。初めは小論文など全くといってよいほど書けなかった。例えば『今日は早く課題が出来上がって嬉しかった```』という様な感じで書いてしまい、先生からは 「これは感想であって、小論文ではない」  との強烈なダメ出しを頂いたもの

          毒親からの解放ストーリー (17)

          毒親からの解放ストーリー (16)

           いよいよ四月から三年生、勝負の年だ。この一年で私の人生が変わるのだと思うと、身が引き締まる思いだ。昨日は体調が悪いと言って、母は部屋から出て来なかった。そこで、勉強しながら父の帰りを待つことにした。  十一時過ぎに帰ってきた父から少しお酒の匂いがした。父はお酒が入ると少し陽気になる。だからチャンスだと思って、進学したい気持ちがある事を伝えた。 「四月から三年生になるでしょう、だから春季講習に行きたいけれど、どうしてもお母さんには頼みづらいからお父さんから言ってほしの」  

          毒親からの解放ストーリー (16)

          母の後悔 (38)

           そして、それは私にとっても助けになったはずだ。今は残り少ないであろう彼の人生を手助けしてあげなければ、きっと私は後悔してしまうだろう。そう思うと、私の心は、納得できたし、決心もついた。   三十数年前に夫が行方不明になった時には、色々とその原因を探したて、相手を恨み、ののしりもしたけれど、今はそんなことはどうでも良いことだ。私が望んであの人と結婚して家族になったのだから、私が彼の後始末をきちんとして子供達に手を煩わせないようにすることが、この結婚に対する自分なりのケジメな

          毒親からの解放ストーリー(15)

           大学へは出来るだけ推薦入試で受験したかったので、学校の成績は全科目、オール5を目指した。そのためにも土・日の図書館で、母に邪魔されずに復習と予習ができるのは、ありがたかった。  母には図書館に行ってきたという証拠として、図書カードを見せるのがルールだ。図書カードには貸出した本の日付が入っているから本当に図書館に行ったのかがわかる。  市立図書館は学校のそれより規模が大きくて音楽を聞いたり、映画を見る事もできる楽しい場所だ。それに学校の友達と待ち合わせをして一緒に勉強をして

          毒親からの解放ストーリー(15)

          母の後悔 (37)

           日の出の時間が早くなると、いつまでもベッドになんて入ってはいられない。天気が良ければ一刻も早く洗濯をして干してしまいたいからだ。   その日も早々と洗濯、掃除をすましてホット一息入れていた時に携帯電話が鳴った。いつもはこんな時間に連絡が来ることがないので、少し身構えて出た。二才の孫のヒトミがまた熱でも出したのかしらなど考えながら携帯電話を耳に当てると、電話越しのハルミの声がいつもと違う感じで飛び込んできた。  「おはよう、起きていた?驚かないでね、今沖縄の警察から電話があ

          毒親からの解放ストーリー(14)

           父と母を密かに観察してみると、父の仕事のうえでの接待で、ホステスのいるバーなどに行ったりした事が、母の私への叱責に関係している事がわかって来た。それ以来母への対策が取り易くなった。 しかもそれが母の他の女の人に対する嫉妬がそうさせていたなんて、見てはいけないものを見てしまった感じだ。そのうえ私をうさ晴らしの対象にしていじめていたなんて呆れてしまう! 母親として最低だと思う。    学校から帰ると直ぐに夕飯の支度の手伝いをするが、最近は母の体調不良のせいで、買い物も頼まれてい

          毒親からの解放ストーリー(14)

          毒親からの解放ストーリー (13)

          四        高校生になると、私への母の監視は以前より緩くなったような気がする。小さい頃、私が母に対していつも怯えていたのは、母の機嫌ひとつで、理由もなく罵倒されたり、頭をぶたれたりしていたからだ。  中学二年の夏休みから私の身長は急速に伸び出した。高校生になると、母よりも背が高くなったので、以前のようには頭を小突かれたり、叩かれたりされなくなった。理由は単純だ。母より背が伸びたし身体も大きくなったからだ。母より大きくなった私に対して暴力を振るいにくくなったのだろう。

          毒親からの解放ストーリー (13)

          母の後悔 (36)

           プラレタリュームでの一件以来、私は中野さんを避けるようにして、時間をずらしながらも以前のように運動は続けていた。 特段中野さんと何かがあったわけでもないが、たったあれだけのことで彼を避けるのは彼としても何か釈然としないものを感じているかもしれないけれど、私が生理的に嫌悪を感じてしまったことに理屈なんてはないのだ。  ただ自分だって老人であることを棚に上げただけなのだ。つまり中野さんの手の感触が私に老いを生々しく再認識させてしまったのだ。老いていながらも恋に溺れるなんてあり

          母の後悔 (36)

           いつもそうなのだ。私がもたもたしているうちに、こうなるのだ。夫の時もそうだった。二,三日もすれば帰って来ると思って、帰りを想定してどうやって怒ってやろうかと考えているうちに、一週間がたち、一ヶ月が過ぎていって、今に至っているのだ。    自分の考えは思いがけない方へと転がって行ってしまう。自分の仕事などはほどほどにうまくいくのに、自分に近しい人や動物が絡むと自分の思っている方に進まないのは何故なのだろう。自分ではわからない欠陥があるのだろうか?神様に聞いてみたいものだ。

          毒親からの解放ストーリー (12)

           ユリが成長するに従い子育ての負担は楽になったけど、ユリに対しては、可愛いと言う気持ちにはなれなかった。時々ユリは夫と婚約者との間の子ではないのかと思ってしまったりしたこともあった。私のお腹から生まれたのだから、私の子だと分かりきっているのに。多分あの頃は精神的にもおかしかったのかもしれない。  兎に角、ユリには、私に対して絶対に逆らえないようにしなくては、と考えたけれど、どう育てれば良いのか全くわからなかった。だから、ユリの育児に興味が無くなってしまった。子供なんて放って

          毒親からの解放ストーリー (12)