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結婚はわたしにとっての更正施設だった

わたしは多分だらしない。
ガサツでいい加減である。

お茶っ葉は袋から
スプーンも使わずザッザッと入れるし
洗濯物もたたまず下着類は
ぐちゃぐちゃと放り込むだけ。

そんな性格なので
AがおきたらBという対処をする
みたいな事が一般的な場合に
AがおきたらAのまま
という事がままある。

新婚当初ももちろんそんなかんじで
ある日わたしが朝ご飯を作っているときに
パジャマのズボンにバシャッと 
なにかのタレをかけてしまった事があった。

たぶん、きちんとした奥さんなら
最低限、洗濯機に服を入れるなり
着替えるなりするのだろう。

だがわたしはこの性格なので
ズボンを脱ぎすて
床に散らかしおき
不法滞在と書かれたバックプリントTシャツに 
ヨレヨレの紫のTバック、
お腹には腹巻き代わりにしていた
ピンクの安産祈願の腹帯を巻いて
右に左に縦横無尽に料理をしていた。

しばらくすると
後ろから何やら声がきこえたので
振り返ると
虚無僧のようにわたしに向けて手をあわせ

「求めない。
それは魔法の言葉。

求めない。
そうすれば楽になる。」

と読経のように1人自分に言い聞かせる
夫の姿があった。

あれから数十年。
育児を通し
起業もどきのようなことをしては失敗し
いろんなものに揉まれて揉まれて
今では子供の習い事先のお母さんたちと
まともな会話を楽しめるほどの
ちゃんとした人間になれた。

二十代のころに付き合いのあった
十才の頃にスペインのサーカスに売られた子や愛人の子に生まれて中学生の頃にライブハウスに棲んでいた子、
アメリカンサイズの巨漢なのに内腿に
ティンカーベルを彫ってる彫り師見習い
としか話が合わなかったわたしはいない。

結婚という更正施設にはいり
40すぎてちょっとミーハーな、
だけど普通の人間になれたのだ。

それがうれしくてイーオットにとうとう
感謝の意をこめて先日

「わたし最近(あなたのおかげで)
常識的な人間になれてきたんだ✨」

と言ったらまっすぐな瞳で

「二度と、
そんな、
うそを、
つくな。」

と力強く言われた。

十五年の結婚生活の重みを感じた日だった。


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