雪水雪技(ゆきみずそそぎ)

詩人。随想など。 ▫️「週末詩集」(有料)→更新停止中。 各種活動・応募作品雑誌掲載…

雪水雪技(ゆきみずそそぎ)

詩人。随想など。 ▫️「週末詩集」(有料)→更新停止中。 各種活動・応募作品雑誌掲載歴等 → https://lit.link/yukimizusosogi

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予感

「この会社に来年勤めている自分を想像出来ない」その予感は当たる。 予感以外は大凡妄想である。 願いも私の妄想である。 妄想は妄想として、知らないうちにお焚き上げされて、私の手を離れていく。 願いにしがみついた時、願いは逃げてゆく。 ずっと夢見ていることは、夢だから美しい。 叶えば現実であって、逃れようの無いものだ。 可愛げも消えてしまう、かつての夢に、今度は幻を見て逃避して、捕まり、息詰まる箱の中でかつて愛した夢と見つめ合う。 予感めいたものは空から来るようで、畢竟、

    • 散文詩的ナンセンス

      18xx.6.18 或る男が消えた。 部屋には窓が無く、内側から鍵がかかっていた。 市は、築5世紀に及ぶ建物を区画整理のため解体すべく、8年前からこの建物に暮らす(文字が滲んでいて解読不能)氏へ退去命令を下すも、返答が無い。 職員が部屋の扉を蹴破った際、誰もその部屋にはいなかった。 ただ、机の上のサンドウィッチは、その日の朝食のようであった。(食べかけでありながら、トマトとレタスが新鮮なままであった) そうして、職員は簡素な部屋に散らばった無数の紙切れを読み上げるので

      • 【詩】表現的幸福論の一考

        誰かの想像力につぶされるとき わたしは幸福におかされてゆく 涙だけでは足りない 万人のための物語であり、 人をたすけるためではない語り部が わたしが足りなくなるような気持ちが もとめてもとめて、かわくこころに 沁みてゆくものが、染まりゆくものが 押し潰される、多幸が、多幸が、

        • 【詩】弾けた憧憬

          数多の文字 数多の星 サイダーの中で弾けた春 戻らないもののために 戻らないものに祈っていた ながい、ながい、春を氷と混ぜた サイダーの中で弾けて、息をしている 数多の文字 数多の星 寒天のなかにとじこめている台所の事件 冷蔵庫を開けて、雪崩が起きた真夏 おひるすぎ、サイダーをのんでいる 裸足のまま出掛けた、わすれている、なつかしい、 影が、大きく、手を振っている、早く来いって、 さけんでいる、でかけなくちゃいけなかった 寒天はたべない、サイダーも残した 最大瞬間風速の白昼夢

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        記事

          【詩】迷宮未満

          ミステリィの中でわたしは共犯を申し出る 役に立たないトリックで罪を犯した この犯人の手と同じになりたくて 探偵を刺しに行く セオリーを壊して 犯人を守ろうとして 裏切りに遭ってわたしの崇拝する罪人に刺される 裏切られたというのは何とも健気な言い草だろう わたしはわたしの愛した罪人の手駒にもなれずに 一行で幕引きとなり、犯人は探偵と共に堕落する ここはミステリィの墓場であった 推理より勝るのは耽美であった わたしは銃を持ち、ナイフを持ち、 赤い文庫本の前で、無力であった、

          【詩集】明け方を生き残る

          明け方がこわかった はじまりはいつも首を絞める どうしたって不安をシーツと共に掴む 真っ白な空に、夜の名残は消えてゆく 寒々しくて、胸の奥はふたたび冷える 毎朝、ここがどこか、わからなくなる 目を閉じても逃げられない キャンドルに火を灯して すこしでも何かを燃やして 【希望のない朝】 バラックのなかにうみおとされた光 とおいとおい日々を懐かしんでいる ここにうまれおちた日よりもとおく どこから来たかについてばかり問う わたしたちの故郷、まばゆいひかり さみしいこころを

          【詩集】明け方を生き残る

          【詩集】薔薇の見た夢夢

          邪悪に魅せられる心にのみ 薔薇のうつくしさの棘が刺さる 紫立つ天気は悪の身より放たれるムスク 路地裏にて打たれる雨に、いたいけな心は滅びゆく 月は化粧を落とさずに、雨と共にかがやいている 悪にゆらめく真正に魅入られ その指からは蔦がのびてゆくことに、 気がつくことなく… 今宵は誰が刺されるか 今宵は誰が囚われるか (遅れてきた光に照らされる) (ただ、きよらかな、ましろの骨に捧ぐ) 【プロローグ】 絢爛豪華な薔薇に似つかわしくない卑小な庭園 わたしのつくるものは、

          【詩集】薔薇の見た夢夢

          【詩集】鑑賞するうた

          とうめいなとうめいな コップにみちているのは だれのこころだろうか 何杯も何杯も汲みにゆき こころを満たそうとする かわきとは何故起こるのだろうか 雨水が空気に満ちても コップは空になってゆく 水をふくむ空気はコップを押しつぶす ひびわれたコップを持って だれのこころを救おうかと佇む すくわれたい我が身をもちながら 【かわくこころ】 誰かが植えた花を見て その気持ちを推しはかる 観念の域を出ない情念 わたしは泣く意味を欲す 植えられた花の前に佇み 泣けないわたしが居

          【詩集】鑑賞するうた

          【詩】カーラジオ

          記憶だけが周波数になり 高速を逃げるようにとばす ??Hz うたが流れる 車の中、聞いたことのある声 懐かしさよりかなしさが入り混じる 誰かが誰かのためにうたっている この電波に乗せて その人に届くのか きっとその人はうたすら忘れている このこえすら忘れている 逃げ出すように生きはじめてから ボリュームはおおきくなってゆく そのうたに重なれられたのなら 安全運転ができるだろうか アクセルを踏み締めて トンネルを走り抜ける

          【詩】椅子

          もういない、誰も座っていない椅子を見つめて、座っていた人の顔を忘れていた。性別も、声も、顔も、言葉も、思想も、全てが、椅子を残して消え去ってしまった。 その椅子に座る人と、わたしは、話をしただろうか。目を合わせただろうか。時間が過ぎたことが、結論のように、わたしは椅子を見つめている。 そこに居た、存在した、それは記憶、それは、存在証明の根拠になるのだろうか。 わたしに残るさみしさ、それを信じることは、存在証明の根拠になるだろうか。

          【詩】全能

          かつて、わたしたちの一歩は静寂だった 静かにはじまり、長いあいだを無垢として存在した 必要と気がつく叡智に、反対するものはいなかった まちがいが必要な為に、ひかりになることを決めた 星々にわかれをつげた、今なら涙をながせるだろう すべてを肯定することは、すべてを否定すること わたしたちには、必要であった 喧騒の中から、這い出たものを愛することにした 忘れていくこと、手にしていくもの、 こころ奪われるもの、置き去りにするもの はじまりのころは、幾億とまわりはじめる そ

          【詩】しろいおと

          とおくにからん、 とおくにからん、 おいてきたもの からん、からん はいよるよなか にげだせぬまま からん、からん、 わたしをうらめ わたしをたべろ からん、からん、 ほねにちかくて こどうはとおい からん、からん、 わたしをうらめ わたしをたべろ

          【詩】悪の鑑賞者

          グレモリーロジックによれば 万人の幸福のためのに善悪は要される 芸術をつかさどる神秘性を証明するのは ヒトの悪意へ魅せられる鑑賞者 身勝手な恋慕、妄執は、より耽美に昇華される うつくしきものの為に、不幸は生贄にされる 天使を呼ぶ時、同時に悪魔を召喚している 天に召される時、同時に地獄へ落ちてゆく

          【詩】快速ブルー

          群れたる人々のうえに夜はいきつづける 絵の具はきらめきながら雨と共におちる それぞれの夜を持ち合いながら 始発電車に乗り込んでゆられる 絵の具は混ざり、混ざり合っても、 濃いブルーから、はみだすこはない それぞれのブルー 雨にぬれてゆく べつべつの改札を抜け出て いくぶんかの悲しみを分け合い 白い空をみあげるとき 心なくぶつかる人とすら つながりあうと思うのならば

          【詩集】くびなし

          わたしの落としたわたしのあたまで 子どもらは蹴鞠をはじめている ぽーんぽーん 青空のしたは実に、実におだやかで わたしのあたまは心地よく飛び上がる ぽーんぽーん ああ、そろそろ日の沈む時刻 子どもらは夢中に蹴り上げる ぽーんぽーん 赤蜻蛉が飛ぶ ずるり、ずるり、皮がめくれる ぎゃあ、ぎゃあ、 子どもらは悲鳴をあげて散り散りになる ぎゃあ、ぎゃあ、 あれは、だれの、しゃれこうべだ 皮のめくれて、緋染の地面に ごろ、ごろ、 ごろ、ごろ、 重たいしゃれこうべが揺れている わたしの頭

          【詩】哲学者

          I トランクにつめたのは、海辺の砂 空のビール瓶、期限切れのチケット 片手にパンを持てるのなら、なにもいらない 乗り物もいらない この足がいけるところまでが終着とわかるから 不要なものを持つことが最大限のセキュリティ どこへ行くかも決めていない もらったパンフレットを風に飛ばした 青空へと還る絶景たちに大きく手を振った Ⅱ 馬を引く男が或る哲学者の話をする その話を悲しいと一瞬だけ思いすぐに思い直した わかりあえぬことに知性はいつでもたたかってきた さみしさは永遠