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最近の若者は見かけによらず「夜と霧」
先日、都内某メトロに乗り込むと対面に20代と思しき若い男性が座っていた。ヨレヨレのロックTに穴が開いたボロボロのジーンズ、キャップを深くかぶりヘッドフォンをして足を組み、スマホ片手にふんぞり返っている。都心では別段珍しくない光景だ。
しばらくしてふと顔をあげると、なんとその若者はみすず書房から出ているフランクルの「夜と霧」を読んでいた。全く同じものをこれまで何度も読んできたために、その背表紙から
遠くつながった「遠い朝の本たち」
タブッキやカルヴィーノなど、とりわけイタリア文学の素晴らしい翻訳で知られた須賀敦子さん、一方では瑞々しいエッセーを数多く書いている。そのうちのひとつ「遠い朝の本たち」。平明で親しみのある文章は軽快妙味、まったき嘘のない言葉に感じられる。誰にも書けるようでいて、書くにはもっとも難しい文章かもしれない。
「遠い朝」とは、自身の少女時代のことを指す大変詩的な表現だが、少女から大人へ成長する道すがらに出