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君が星こそかなしけれ

一年前の写真を見ていた.
息子が大きくなったら行きたいねと妻と話していたホテルに泊まった時のものだ.
その年の遅い夏休みに,もちろん一人で.
夜に海辺を散歩できる庭は,妻との最期の旅行を思い出させた.

海を向いた露天風呂からの景色.
夜はもう肌寒い季節だった,対岸の灯りと,曖昧になった水平線を見ながら湯に浸かる.
真上には満月、東の空には冬の星座が浮かんでいた.
君たちが見たら何というだろうか.
君たちが星ならどんなに美しいだろう.
消えてしまうのはどれほどかなしいだろう.

君が星こそかなしけれ.
有名な詩人の,それは美しい詩の一節だ.
また,それがもとになったであろう,僕の好きなロックバンドの,これも美しい一曲にも使われている.

悲し,哀し,愛し,美し.
どれも,かなし,と読むのだと.
二人の死後の休み中に読んだ本で知った。(若松英輔さんという方の)
Twitterでもnoteでも,ひらがなでかなしと書くようになった.

悲しいだけではなくて,愛しさや美しく思う気持ちを添えるできることなら,それは二人を思うときの気持ちに他ならないからだ.
美しいものを見て、誰かを思い出し愛しく思い,その不在を悲しむ.
あの時何も感じなくなったはずの心にあるものが,かなしみだと知った.

今日は夕空に浮かぶ白い三日月を見て,そう思う.

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