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煙草は吸わなかった.
患者さんにも吸わないでいてほしいし,好きではなかったから.
それでも,ある時から時々吸うようになった.

喩えば家族の記念日とか,家族の誕生日とか.
持ち運ぶ事はないから,年に2箱も減らないペースだ.
それが週末で家にいる時に.
そのペースで苦はないから,依存してはいないと思う.
お酒に強くないのと一緒で,たまにしか吸わないから一本で頭がぼんやりとしてくる.
そうすると,何も考えず,ふだんよりはっきり思い出せるものもある.

夜にベランダに椅子を出して,向かいの公園を眺めながら,あるいは部屋を向いて妻と息子の写真を見ながら.
月や星や,それが見えなければ雲や,紺や灰色の空を見ながら.
風が葉を揺らす音や,雨音や,虫の声や,誰かの生活の音を聞きながら.

 今日のような雨の日は煙が広がるような感じがする.
冬に吸う煙草は今年が初めてだ.どんな味がするのだろう.

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