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【旅日記】雨の誕生日は森の中の喫茶店で

九州を出発して50日目くらい。
ついに北海道までやってきた。
そして今日はぼくの21回目の誕生日。
ここんとこは車のルーフテントで寝ている毎日。
でも誕生日くらいはあったかい宿に泊まりたい。
そう思ってGoogleマップで宿を探して予約した。

上富良野の宿、旅の途中で誕生日を迎えるのにぴったり

宿につくと気さくなおじさんが中に入れてくれた。
よるごはんはセコマで買ってきた親子丼。
「帆立の稚貝よかったら食べない?」とおじさん。
GW用にたくさん仕入れてあまったらしい。
食べてみたらめっちゃ美味しかった。
おかわりしてガサッと3杯、20匹は食べた。
夜の11時くらいまでおじさんや宿泊客と話した。
そして日付けが変わる前に寝た。

20歳、最後の晩餐

次の日起きたらぼくは21になっていた。
実感が湧くにはまだしばらく時間がかかりそうだ。
この日は雨だったからなにしようかなーと考えた。
おじさんは「絶対宗谷岬行くべきや」と言った。
ここまで来たなら雨でも行っとくべきやと。
遠いけど向かうか〜と思い宿を出た。

北に1時間ほど車を走らせると旭川まで来た。
郵便局でお金をおろしてガソリンを入れた。
そしてもう一度考えてみた。
うん、やっぱり雨だから喫茶店でゆっくりしたい。
こうやってよくその時の気分でプランを変更する。
これもひとり旅の醍醐味のひとつである。

Googleマップで「ゆっくりできる」と検索。
街のはずれの森の中に小さな喫茶店をみつけた。
「今から行きます」と電話して向かう。
街を抜け田畑を抜け最後は少し砂利道を進む。
そして森に一歩踏み入れたところに喫茶店はある。

お店の名前は「魔女来夢」、ほんとに魔女がいそう

やわらかくてやさしいおばさんが迎えてくれた。
「あら~若いね!」とおばさん。
「今日21になりした!」とぼく。
誕生日だってことを早めに打ち明けておいた。

お店の中には古民具がめっちゃたくさんあった。
よく見るとひとつひとつ値札がついていた。
しかもどれもこれもどう考えても安い。
お店の奥におじさん(旦那さん)が座っていた。
古民具の数々はこのおじさんが集めたものらしい。
なんだかわくわくする不思議な空間だ。

めちゃコミング

おばさんがメニューを渡してくれた。
ぼくはコーヒー(350円)を注文して席についた。

外向きのカウンター、大きな窓の外には雨の森

窓から外を眺めると、むむむ!きつねがいる?!
「いつも遊びに来るのよ」とおばさん。
いじめないからこわがらないらしい。
それから小鳥たちもたくさん遊びに来ていた。
鳥かごの中にパンが入れてあるのだ。
きつねはそのパンを小鳥が落とすのをまっている。

いつまででも見ていられちゃう

おばさんがコーヒーとビスケットを出してくれた。
おばさんとおしゃべりしながらゆっくりした。
このお店は20年くらい前に建てたらしい。
だけどネットに情報が出はじめてからは7年くらい。
それまでは友だちが遊びに来る場所だったらしい。
なんて贅沢なー!

ぼくがいる間にもふたりの常連さんが訪ねてきた。
そのうちひとりのおばさんはパンを持ってきた。
「はいこれ、小鳥ちゃんに」って。
なんていいところなんだろう。

おばさんはコーヒーのあとにお茶を出してくれた。
そしてお茶がなくなったらぶどうジュースを。
ぶどうジュースがなくなったら今度はまたお茶を。
ビスケットを全部食べたらチョコが補充された。
どれもおいしくて幸せな気持ちになった。

「せっかく誕生日なのにこんなところに、、、」
おばさんは少し気が引けたような口調で言う。
「いやいや、こういうとこに来たかったんです!」
「それだったらあそこも好きかも」とおばさん。
友だちがやってる森の中の喫茶店を教えてくれた。
ふむふむ、行ってみよう!
気づけばもうお店に来て3時間くらい経っていた。

ぼくは最後に1600円のオイルランタンを買った。
中国製の水色のけっこう年代物っぽいランタン。
火の明かりを灯すっていいなって思って。
これは300円引きの1300円にしてくれた。
その上コーヒー代はただにしてくれた。
「誕生日だから」って。

「またね、気を付けてね」と見送られ店を出る。
そこから少し峠を登ると和寒町に入る。
ちなみに読み方はwassamu。
冬はちょっと驚くくらいさむくなるんだろう。
和寒に入ってわりとすぐ、ログハウスが現れた。
ここがおばさんの友だちの喫茶店「覚礼」だ。

山のカフェKAKURE-覚礼-

ママさんは7年前まで東京で暮らしていたらしい。
だけど馴染みすぎてて全然そんな感じがしない。
ストーブに薪をくべて、お白湯を出してくれた。
ログハウスは丸太が太くてどっしりとしていた。
20年くらい前にカナダから輸入して建てたらしい。
窓の外にはヤマバトが遊びに来ていた。

客席は少なくてお家におじゃましてる感じ

「おなかはすいてる?」とママ。
「さっき魔女来夢さんでお菓子を食べてきました」
「それだけ?そりゃぁ、、、」と何か出してきた。
そして火鉢の上に網を乗せて何かを焼いている。
「おっ、おもちですか?!」
「かぼちゃもち、和寒はかぼちゃが有名なのよ」
ほへーーー。

熾火でじっくりじんわりこんがり

火鉢はあったかかった。
「このあったかいってのがごちそうだったのよ」
昔はよく「火の気がごちそう」って言ったらしい。
「お茶してく?」じゃなくて「あたってく?」って。
なるほどな~、こりゃごちそうや。

ここ道北エリアは道内でも寒さが厳しい地域。
寒いときは−40度くらいまで下がるらしい。
でも冬は1日中ストーブついててあったかいらしい。
家もちゃんと熱が逃げないようにできてるし。
だから意外と今頃が一番肌寒く感じるんだって。
ストーブつけるか迷うくらいの季節がね。
冬は雪国より九州のほうが肌寒く感じる現象だ。

さあ、やけたやけた。
かぼちゃもち、いざ実食!、、、!?
中にかぼちゃペースト!すご!!
かぼちゃ練り込んだもちの中からかぼちゃ。
この辺ではよくやるんだって。
これがいわゆる「おばあちゃんの味」らしい。
こんなんおばあちゃんがつくってくれるんや!

味付けは塩だけ、甘さは全部かぼちゃの甘さ

「こんにちはー!」と常連さんがやってきた。
「はいにんじん」と大量のにんじんがやってきた。
うれしそうなママさん。
田舎の物々交換文化にほっこり。

ママさんがコーヒーも入れてくれた。
ゆっくりここでも2時間くらい過ごした。
帰り際、お支払しようと思ったけどいらないって。
友だちの紹介だから友だち判定なのかも。
わーい!ごちそうさまでした!

そこから車に乗ってオホーツク海めがけて3時間。
海沿いの温泉に入って今日は車中泊。
北海道は寒いな〜と思ったら外は3度。
でも大丈夫、心はぽかぽか。
いい誕生日でした。

明日は最高3度!

(追記at翌朝)
今日は早くおきたからモーニングにきた。
トースト単品(450円)を注文。
そしたらサラダとゆでたまごもつけてくれた。
それから昆布茶と昔ながらのお菓子も。
さらに友だちがもってきてくれたという卯の花も。
昆布茶のおかわりもくれた。
もーまったく、あったかいんだから~!

お菓子は昔からあるなつかしのやつらしい
おからの煮物「卯の花」

(また追記)
↑これをゆっくり書いてたらお昼が近づいていた。
出よっかなって思ったら「ちょっとまってね」と。
そしたらジャージャー麺ときのこでてきた。
ん?ここおばあちゃん家?
そしてまた誕生日祝いでトーストも無料になった!

ごちそうさまでした!

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