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「指数」が高くても落ちる!?学童クラブでの選考方法の問題点について解説します

 学童クラブの申込が12/1から開始されました。この申込にあたって、申込を予定されている方からある問題提起をいただきまして、たしかに問題だと感じたのでその内容の解説と、対処方法、今後のあるべき姿について書いていきます。

 その問題とは、学童クラブは保育園などと同様に「指数」の高い家庭、つまり保育の必要性が高い家庭が優先して利用できるのが基本であるにも関わらず、一部のケースで逆転現象、つまり指数が低い家庭の方が入れてしまう状況が発生しうる、というものです。


どういう問題なのか?

比較としての、保育園の選考方法(一列方式)

 まず、本当に必要性の高い家庭に定員が割り当てられる理想的な形について。それは、保育園で行われている選考方法です。

 保育園の場合にはその家庭がどこを希望しているかは関係なく、まずすべての申込者を指数によって序列化します(同点の場合には「居住日数」などの優先順位によって上で厳密に序列化されます)。定員を割り当てていくための順番を決めるということです。これを一列方式とします。

 赤の数字が指数で、それに基づいて序列化した順番が紫の数字。

保育園の選考方法①(一列方式)


 そして、その上でその順番の上から第1希望に書いてある園に決定、第1希望の園の定員が埋まっていれば第2希望、第3希望の園といった調子で決定していきます。

保育園の選考方法②(一列方式)

学童クラブの選考方法(並列方式)

 一方での学童クラブでは、ちょっとやり方が異なります。

 こちらの場合は、全体での序列化は行わず、各クラブへの申込の中で指数が高い人から決定していくという方式を取っています。この方式を並列方式とします。各クラブにおいて並列で決定していくため。

学童クラブの選考方法②(一列方式)

 この作業をそれぞれの学童クラブで行い、第1希望の人ですべての定員が埋まればそこで終了。余りがあれば、選考から漏れた人のうちでその学童クラブを第2希望として書いていた人の中からポイント順に決定していきます。

具体的にどういう問題なのか何が問題になる?

 この方式によって生まれる問題が、冒頭に書いたとおり指数が高い/低いによって学童クラブを利用できるか否かが必ずしも決定されない、指数が低い家庭の方が入れてしまうという逆転現象が発生しうるということ。

 並列方式では各学童クラブごとに選考が行われることから、あるクラブに指数の高い家庭が多く集まってしまうと決して低くない点数でも落ちてしまう可能性があるのです。

 実は、先ほどの絵はそれを表しています。

並列方式における逆転現象のケース

 各クラブはどちらも定員3という前提です。画面左の学童クラブ(赤)だと高い点数の家庭が上位にいることで、40点でも落ちています。一方で、画面右の学童クラブ(緑)の方は上位に高い点数の家庭がいないことで38点でも入ることができています。こういうことが起こりうるということです。

 「理想的」とした一列方式(保育園の方式)だとこのような逆転現象は起こりません。あくまで指数に基づく序列によって定員を割り当てるか否かが決定され、各家庭の希望(第1希望か第2希望か)に影響を受けないためです。


 まったく同じ条件で一列方式と並列方式、それぞれの場合の決定/非決定の結果を比較したのがこちら。

一列方式と並列方式での比較

 大半は同じ結果になっていますが、40点の田中家と38点の山本家は結果が覆ってしまっています。この違いはこれまで説明してきたとおり、一列方式ではあくまで序列に従って決定していくのに対して、並列方式では第1希望にしている家庭を優先する形になるためです。

問題の背景にあるもの

 学童クラブという施設は保育園と同様に福祉のための施設であって、あくまでその必要性認定を行い、必要性の高い家庭から割り当てていくというのが前提。この観点からすると、今の選考方法には課題があります。今後の改善は不可欠。

 一方で区側を擁護しておくと、この問題はこれまではあまり顕在化していなかったのです。学童クラブはそもそもそんなに数が多くなくてエリアに点在していたことから、保育園ほど複数を希望するということはこれまでなかったため。

 その状況が一変したのは次年度から始まる小学校学童の始まり。これによって、子どもたちの移動できる範囲に複数の学童クラブが設置されることになり、今回の問題が生じることになったのです。

今後の対処はどうあるべき?

即座に変更は可能?

 これまで書いてきたとおり、本件は必要性認定の考え方からすると決して望ましいものではありません。

 一方で、これを即座に変更するというのは難しそうです。すでに募集案内を開始しており、入れるか入れないかが逆転してしまいかねないような変更をこの時点で行うことは公平性の観点から問題があります。

 また、事務的な処理の観点でも、一列方式を採用すると選考方法をガラリと変えることになることに加え、現状は学童クラブ内で行っている選考を区の担当部署で行うことになるのでその見直しも不可欠です。

現状で対応できることは何かある?

 ということで非常に心苦しいのですが、今回については現状の選考方法を受け入れざるを得ないところです。となったときに何か対応できることがあるのかについて考えてみます。

どのエリアで影響がありそうか?

 まず、どのエリアで影響が出そうかという点。先に書いたとおり、そもそも複数の選択肢がなければ問題は良くも悪くも生じないため。

 今回、学童クラブが設置される小学校は下記4つ。

・京橋築地小学校
・月島第一小学校
・豊海小学校
・晴海西小学校

中央区議会 - 福祉保健委員会(2023/6/6)より

 このうちで特に影響がありそうなのは距離的に近い築地(築地児童館と京橋築地小学校)、月島(月島児童館と月島第一小学校)ではないかと。豊海小の近接としては勝どき児童館、晴海西小には晴海児童館がありますが、やや距離があるように思います。

 その他の児童館においてはそもそも新設がないので、もちろん影響は受けません。ただ、将来的には続々と小学校学童が展開される見込みであることから同様の問題は生じてくることから対策は急務です。

対策は何かある?

 影響を受けそうなエリアで申し込もうとする場合に具体的にどのように選べば良いんじゃい、という点について。

 どういう場合に有利になるのか、不利になるのかという点でいうと、単純化して言うと「人気のない方を選ぶと入れる可能性が上がる」ということです。反対に言うと、「人気のある方を選ぶと入れる可能性が下がる」ということでもあります。

 その学童クラブに申し込む人たちが少なければポイントの上で低い家庭でも入ることのできる可能性が高まります。他方、人気のある学童で申し込む家庭が多いと高いポイントの方で定員が埋まってしまうことで、他を選んでいれば入れた家庭であっても選考から漏れるという可能性もあります。

 こう言うのは簡単なのですが、事前にどこが人気かどうかなどは見えないので机上の空論に過ぎないのがつらいところ。仮にそれぞれの人気を可視化できたとしても、その人気の有無をもって実際に申し込む先を変更するという動きも想定されます。経済学で言うところの「美人投票」ですね。

今後の制度改正は?

 当面の対応としてはこれまで書いてきたとおり、ちゃんとした対策がないのは大変申し訳ないところです。この点はこれまでの議論でも抜け落ちていたことから現時点まで放置してしまっておりました。

 他方、次年度に向けては絶対に変えなければならないという思いは強く持っております。どのように変更するべきかは明確で、保育園における選考で用いられている一列方式への転換です。

 先日さっそく担当部署の方とも情報交換しまして、現状の選考方法の問題は把握されていて次年度に向けて他の自治体の事例なども調査されているとのことでした。保育園という前例もあることから、十分に改善は期待できるものと考えております。

最後に

 今回は、学童クラブの選考方法における問題点について書いてきました。必要性認定の考え方からすると決して望ましいものではありません。現状の感触からすると次年度に向けて改善されそうであるものの、しっかり対応されるかどうか今後もチェックしていきます。

 一方で、本来的にこれは今回から対応されるべきものでした。前持って騒いでおけば何とかなったかもしれないにもかかわらず、区民の方から指摘されるまで気付かなかったのは反省点。実際の制度としてどう落ちるのかという部分について、現状以上に見極めることを心がけようと思います。


 最後に告知です。12/10(日)に区政報告会をやります。今回の件も含めてほづみがこれまで取り組んできていることについて報告する他、質問要望をいただく場として考えてます。現状だと片手で足りる規模感なのでお気軽にご参加ください。申込はこちらから。

10:00 〜 10:30:個別の何でも相談
10:30 〜 11:30:区政報告会
11:30 〜 11:50:個別の何でも相談(12時撤収)


 余談。公開前に読み返してて、シミュレーションの中で落選する家庭の名前が「田中」と「山本」で副区長と区長の名字になってるのに気付いたのですが意図はありません。何となくABCDとかよりホンモノの名字の方が良いかなというところから名字ランキングの多い方から取っただけです。


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