【音楽】グッド・バイ・マイ・ラブ/アン・ルイス
(1050文字)
アン・ルイスといえば、ボクらの世代だと、好き嫌いに関わらず「六本木心中」のヒットをよく覚えているはず。
ボクは当時から好きでも嫌いでもなかったけど、まだアイドルとして売り出されていた頃の「グッド・バイ・マイ・ラブ」という曲だけはいまだに好きだ。
発売は1974年だから、ボクは当時4歳。
もちろんリアルタイムで聴いていた訳でもなく、何で知ったかも覚えていない。
だけど何故か、この曲は今でも口ずさみたくなり、自分に合わせたキーでギターを弾きながら、誰もいない部屋で呟くように歌ったりする。
オーソドックスなコード進行をハチロクのリズムに乗せたバラードで、馴染みやすいメロディは平尾昌晃の作曲。
そして作詞はなかにし礼。
この、なかにし礼の詞、とりわけサビの部分が、今になって心に響いてくる。
付き合った人数は、そう多くはないけれど、この曲を聴くと、彼女たちのことを思い出す。
よく、ドラマや映画で別れ際に「幸せになれよ」なんてセリフがあるけれど、ボクにはそのセリフが嘘くさく聞こえていた。
別れる時に、相手の幸せを願うような余裕はないし、他の男を選んで離れて行った相手には、到底そう思えるわけもなかった。
だけど今は、長い年月の末に、幸せであって欲しいと思う。心から。
そして彼女たちは、ボクのことを思い出すことはあるのだろうかと思う。
そう思った時に、この曲の歌詞を思い出すのだ。
ボクの声を、仕草を、手の温もり、キスの感触を覚えているだろうか。
少しでも覚えていてくれたら嬉しいけれど、そんなことはないだろうな。
ただ、ずっと最後の一文だけが疑問だった。
「そうよあなたの あなたの名前」
名前を忘れるなんてことがあるだろうか。
たくさんの相手と付き合った人ならそうかもしれない。
だけどボクが付き合った相手は両手で余る程度。
忘れるなんてことはないだろうと、指を折ってみると、名前が思い出せない相手がいた。
少しショックだった。
細く長い髪が頬に触れた時のくすぐったさや、見た目より豊かな乳房の感触、話す彼女の口を塞ぐような最初のキスは覚えているけど、名前が思い出せない。
あれから30年以上が経ったということを思い知らされる。
長い時間、長い距離を旅してきた気持ちになる。
そして、もうあの場所には戻れないけれど、少しだけ、その時に戻ったような気分を味わいたくなる。
そんな時に、この曲のイントロが聞こえてくるのかもしれない。
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