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【エッセイ】心の会話

流れゆく季節の風を感じて
生まれ育った町の景色のなか
足早に歩く道──

久しぶりに顔を合わせるから
何となくイメトレを繰り返しながら
黙って歩いていた。


家に着くと──
庭先では弟と姪っ子が草むしりをしていて
どうやら朝から3時間以上もしていたようで
縁側でカップ麺とお茶を飲みながらお昼休みしている。
化学療法の治療中だから
家の中にははいってないんだという。

「めっちゃたくさん草むしりしたから、ゴミ袋4つもあるでな」
「木曜日のゴミ出しの日にゴミ捨て場に出しといてくれへんかな、いっぱいあるで、リアカー使って持って行ったほうがええかも・・」

親父とお袋が仲良く一緒に闘病しているから
兄弟で力を合わせるのは当然のこと
でも、こんな機会は40年以上ぶりなんだと思うと
何だか不思議で少し照れくさい感覚もある。


これからはじまる介護のこと
ぼんやりと自分たちの将来も考えながら
小さい頃にもどったみたいに
小さい頃に遊んだ縁側で
ちょっとした会話のやりとりをしていると
やっぱり血が繋がっていることを肌で感じる。


マスクをして手を洗って部屋に戻ると、
お袋が楽しそうに一生懸命におしゃべりしていた
手土産のお菓子の話、日々の生活の話、体調の話、

少し離れたところからその様子を眺めていると
近くにいるだけで、
喋らなくても心が通じているように感じた。


夕飯の買い出しにスーパーまでひとりで歩いてでかけた───
夕方なのにまだ昼間みたいに明るくて清々しい風が吹いている。


流れゆく季節の風を感じて
生まれ育った町の景色のなか
足早に歩く道───


近くにいるだけで
心の会話がとびかってあったかくなる。

離れていても
心が繋がっていると素直に感謝できる。

心と心が感じ合うことが人生なのかな、とふと思った。



明日は一緒に散歩に出かけようかな──────



©︎2024 Mahalopine

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