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無題

私は出来の悪い娘なのかもしれない。
連絡ひとつ寄越さず、帰省もせず、自分の世界で生きている。
でもそれって何がいけないのだろう。これが私にとっての自衛本能なのに。
はたして私が悪いのだろうか、という言葉を飲み込んでスマホの画面をタップする。

「心配かけてごめんなさい」と。

あの日、私と母が路上で罵り合ってから3年以上が経った。人がまばらな田舎の駅前で、互いに一歩も譲歩せず喧嘩をした。何を言って何に怒っていたのかなんて、覚えていない。その頃の記憶は、殆どないから。ただ旦那さんに仲裁されたことを覚えている。

早朝送られてきた「心配している」という文字に
どう返していいのか途方にくれる。

心配していただけるのは有難いのだが、この6文字にどれほど心かき乱されるか、どれほど足がすくむのか、あなたは知らないのでしょう。
私がGWに帰れない代わりに、母の日のプレゼントを熟考していたことも。結局母の好物を贈ったことも。

会ってしまったら、もし何かのきっかけで、罵り合いの引き金ワードを聞いてしまったら、また、私たちは数年来会えなくなってしまうから。
いろんな言葉を、気持ちを飲み込んで、一旦横に置いて、文字を入力する。

「心配かけてごめん、ありがとう。」

出来の悪い、不器用な娘でごめん。
今はまだ帰りません。

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