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セクシャリティを売る

僕はLGBTのT。女から男に性別を変えて生きているFTMトランスジェンダー。1980年生まれ 鈴木優希。

仕事は、地元名古屋の繁華街錦三丁目で主に同じFTMを雇用したいわゆる「オナベバー Venusビーナス」とレズビアンを雇用した「レズビアンバー Wダブル」の経営をしている。

Venusには僕も現場に出ているので、経営者兼キャスト。
若いスタッフ達と日々昼夜逆転の仕事に明け暮れている。

オナベバーを始めたキッカケ

自分らしく働ける居場所が欲しかった。
女としての水商売の経験はあったが、オナベバーで働いた経験は無い。
でも、憧れがあったから女時代に貯めたお金で小さな店を始めた。

オナベバーの経験が無い分、宣伝広告に力を入れた。
当時はまだSNSも無く、水商売でホームページを持っているお店も珍しかった為、新規のお客様が物珍しさで多数ご来店してくれた。

でも、大きく支えてくれたのは女のホステス時代からのお客様だった。離れて行った人も居たけど、

姿が変わっても、変わらず応援してくれる人が少なからず居て下さった事には店の経営も僕の心もとても救われた。

FTMとして

性同一性障害と診断されてから大阪医科大学附属病院で治療を始めた。ガイドラインに沿って戸籍を心の性別に変えることをゴールとして慎重に進んだ。

2011年戸籍変更。待ち焦がれた「男」の戸籍を得た。

現在治療を受けている名古屋大学医学部附属病院の関連でLGBTの集まりにも参加するようになった。

その会の中で僕は度々このような質問をされる。
「なぜ、性別を変えて男になったのにオナベバーで働くんですか?」
「男として社会に出たくないんですか?」と。

僕の答え

僕は自分の事を普通の「男」とは思っていない。女から男に性別を変えたトランスジェンダーであるとの認識。ずっと心は「男」だったけど、生まれた性別が女である事実は変えられない。

生まれつき「男」だったら、やりたいこと、なりたいものはたくさんあった!
子供の頃は、野球で甲子園に出てプロ野球選手になりたかったし、
愛する家族の為にマイホームを建てて満員電車に揺られのサラリーマン生活もいいなとか。
ただ、就職を考える年ごろの僕は自分の性別違和を誰にも言えなくて悩んでいた頃。今の時代の様にLGBTと言う言葉すらない。カミングアウトをすることすら躊躇わなければいけない状況だった。
だから僕は
なりたいものではなく、なれるものを懸命に探した。

制服がスカートでないこと。
髪型が自由であること。
男と女の区別がはっきりしてないもの。

僕でもなれるものを探したけど、妥協したものに夢中になれるはずもなく美容師の道はなんとか資格は取ったがリタイヤ。

その頃からだ。僕は、自分のことを
こんな風(性同一性障害)に生まれてきたから僕の人生はうまくいかない。こんなに大きなマイナスを抱えてどう生きていけばいいのか?
そんな負の気持ちが強くなり、押しつぶされそうだった。

行き場のないストレス、不安を親にあたり散らかした。当時の事を振り返り、周囲は「この子は何にそんなに怒っているのか?」
確信部分の性別違和をカミングアウトできずにいたので、そんな本心だったとだいぶ経ってから知ることとなる。

本来の性格は「負けず嫌い」であるから、性別の問題で「出来ない」ことがあることがとてもストレスだった。
女だから我慢。女だからダメ。気持ちは男であるからこそ余計に出来ないことが辛くて悔しかった。

存在自体がマイナスでいることに耐えられなかった。
こんなに辛い思いをしたんだからそこを「プラス」に変えたかった。

このヒントが自暴自棄から辿り着いたこの街で見た「オナベ」の方だった。自分らしくあり、オープンで。好きな恰好、名前で働く。そしてそのセクシャリティを売りに集客をして商売としている。

これだ!!と思った。

その世界に行けば、このセクシャリティはマイナスでなくなる!

そこから僕は初めて「自分」になれた。

性別の問題でずっとずっと闇にいた僕が仕事の事、恋愛の事、家族の事という当たり前のことで悩める自分になれた。

同じFTMでも個体差であるから、それぞれの性格がある。
僕は心と体の性が違う事をマイナスと思ってしまったし、受け止めることが出来なかった。それを越えて男の中で勝負してやろうという強い思いも持てなかった。
だからこそ僕は、元女であることを売りにする事で気持ちのバランスが取れている。

セクシャリティを前面に出した商売をする事で、収入を得ていることがあべこべで生まれてきた僕のメンタルを支えている。

母が元気なうちに伝えられなかったことは悲しいけど、産んでくれてありがとう!と心から思える自分になれた。

今後の展望

時代はLGBTに優しい流れになっているが、だから全てクリアではない。それぞれの性格、置かれている環境などで法律が許してくれたとしても自分自身が受け入れられなかったりすることはなくならないだろう。

だからこそ、僕が出来ることは

自分らしく生きる場所を継続すること。もっと受け入れられる規模を大きくすること。

ボランティアよりも雇用。
ありのままの自分の姿で稼ぎ、自立することが一番自信がつくことであることを僕は知っている。

自分の生まれてきた意味。価値。
この仕事だけでない。
自分を売る!セクシャリティを売る!ことも僕たちにしかできない専売特許だ。自信を持って進もう。

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