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なんか将棋の話題がトレンドに出ていたのでちょっと話す

理由はともあれ将棋がいま話題なので、むかし動画にしようと思ったけどまとめ方が難しくて頓挫した話をちょっとだけ書いておこうか。なにしろ僕は将棋の話をよくする YouTube 投稿者だからな。

「将棋」といえばだいたい日本にしかないと思われており、将棋をやっている組織といえば連盟(日本将棋連盟)みたいな感覚の人が多いと思うが、実のところどちらも誤解だ。海外にもあるし連盟以外の組織もある。メディアでほとんど取り上げられないだけで、活動している。これはなんというか、それまでの付き合いやしがらみによる露出の関係だ。
たしかに将棋の強い人間(この「強い」は人間としてはかなりの異次元である)が集まっているのが連盟であり、10 年か 15 年かくらい前まではその強さそのものに価値があった。なぜなら、この世に彼らより将棋が強い者が存在しなかったからだ。
「一番」といわれると、なんとなく価値があるような気がしてしまうのが人間だ。16 フィートにせまる高さの帽子や、ヒゲに爪楊枝が 3,500 本以上刺さった記録と同じで、それがなにかの役に立つかどうかはともかく、一番は「すごいね」ととりあえずいわれるものだ。

問題は昨今の情勢だ。
まだ勘違いをしている人も稀にいるが、将棋を指すコンピュータソフトの強さは人間のそれをとっくの昔に抜き去っている。たとえプレイ環境があったとしても、少なくとも地球上には対抗できる人間は存在しないとみられている。もちろん、連盟とて「一番」であるはずもない。
しかし、一部の連盟の職員(通例「棋士」と呼ばれる)たちは矜持の拠り所が「将棋が強い」なので、この「一番でない」という点を嫌がっており、「将棋ソフトの推奨する手」と「棋士が指した手や読んだ手」とを比較される機会をなんとかして減らそうとする涙ぐましい努力を続けている。
その最たる例が「棋譜(どんな手を指したかの記録)をソーシャルメディアや動画などで利用する際には許可を得ろ」とする指針である。無限のツッコミどころで構成されている公式のページがあるので、知らない人は見ておくとよいだろう。

これが簡単に問題点を列挙するだけでもとめどなく、

  • ソーシャルメディアの文字数制限のある短い投稿にまでスポンサー名を入れることを求められたりする

  • 指針の作成以前の対局についてまで要求される

  • 許諾を出した後でも、主催者に不適切だと判断されると一方的に削除を求められる。明確な基準はない

  • 棋戦ごとに利用の方法や範囲が違っていて煩雑このうえない

  • 問い合わせをするだけでも「名前」「住所」「電話番号」「メールアドレス」が必要

  • そこに書いた個人情報は 30 近くの会社や団体に提供すると書いてあるが、保護するとはいっさい書かれていない

などなど、棋譜を利用したいと考える人間の絶滅を狙っているとしか思えない仕掛けがワンサカ並べてある。こんな面倒を押しつけられれば、「将棋ソフトでこの手がどんなもんなのか検証してみよう!」といった記事や投稿は確かに減るだろう。
しかしそれは、新たなファンを掘り起こすための露出を激減させる。「おい、この手が凄いぜ! 見てみろよ!」という投稿が将棋を知らない人間のタイムラインになんとなく流れる可能性を潰して、どうやって新規のファンを獲得するのだろうか? 僕は将棋自体は好きだしプレイ人口が増えてほしいと思っているので、連盟のこのような振る舞いにきわめて憤っている。あといいかげん英語くらい対応しろカス。

そもそも彼らは、ただの記号としか考えようのない棋譜をあたかもなんらかの権利の付随した作品であるかのように誤解させようとしているという問題がある。
まあ、これはそのうち話そうか。

ちなみに件の彼は、そもそも将棋ソフトの開発に協力してはいけないという立場だった。自分の立場がおびやかされる未来は読めていたのかもしれない。もうちょっと……いや、この話はやめよう。

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