プレシャス プランナー

〜小さなバラと素敵な音楽物語〜🎶 シューマンを愛する クラシック音楽ライター。 ・演奏…

プレシャス プランナー

〜小さなバラと素敵な音楽物語〜🎶 シューマンを愛する クラシック音楽ライター。 ・演奏会&CDの楽曲解説、 レクチャーコンサート企画。 ・Pincet Rose ピンセットローズ (1分で作れる世界一簡単なミニ折バラ)

マガジン

  • note クラシック音楽の普遍化を達成する

    • 1,449本

    クラシック音楽の歴史や作曲家、作品について、哲学的な視点から分析し、その普遍性や深さを探求する和田大貴のnoteです。クラシック音楽について語り合えることを楽しみにしています。参加希望の方はマガジンの固定記事でコメントしてください。

  • SF、ファンタジー(短編〜中編)

    絶滅のレクイエム、10分未来のメッセージ、セピア色の舞踏会・白のRondo・#ないたずらっ子(3部作)、微笑みの額縁・ハプスブルクの鏡・額縁幻想(音楽付3部作)、7軒目のはちみつ屋

  • 「お菓子な絵本」長編ファンタジー(全39章)

    兄は幻想世界、弟は現実世界と、異なる次元で生まれ育った兄弟の出会いと運命の物語。冒険活劇に、ほのかな恋や謎解きも。最終話はエンディングテーマ〈End of Dream〉の録り下ろしBGM付♪

  • ふしぎエッセイ(宇宙、野鳥、執筆裏話etc.)

    太陽系儀、かもだちの掟。宇宙や自然の話に芸術関連。飛行機乗り違え未遂や真相は闇の恋文といった謎の執筆秘話など、ちょっとおかしな迷宮へ⭐︎

  • 「オケバトル!」長編音楽小説(週刊)

    TV番組の仕掛けバトルで、音楽家らが熾烈な争いを展開。トンデモ事態も乗り越えて「栄光のオケマイスター」を勝ち取るのは果たして誰か!?  毎週土曜の深夜0時に1〜3話ずつ公開します。 プレシャスおはこの楽曲解説もふんだんに盛り込まれた、本格音楽小説です♪

記事一覧

固定された記事

小さなバラと素敵な音楽物語

♪♪♪ 小さなバラと素敵な音楽物語 ♪♪♪ 名曲物語 & 演奏会プログラム  筋金入りシューマニアーナの音楽ライターです。ロマンティック・シューマンを初め、偉大なリ…

「オケバトル!」 37. 純朴審査員のトンデモ提案

37.純朴審査員のトンデモ提案  朝の六時を告げるE(=ミ)の音の鐘。  喜歌劇《こうもり》の舞台では、この鐘を機にオルロフスキー公爵邸での舞踏会がお開きとなり、…

「オケバトル!」 36. 一括おやじの夢のオケ

36.一括おやじの夢のオケ  果たして良いのだろうか、という上之忠司に対し、一同は、 「日々の演奏会を次々こなさなきゃならない限られた時間の中なんですから、仕方ない…

「オケバトル!」 35. 課題のヒントを見逃すなかれ

35.課題のヒントを見逃すなかれ  次なる課題曲は《こうもり》序曲の可能性が大。もしくは劇中のアリアか何かかも知れないが、課題が《こうもり》には違いなかろう。  …

「オケバトル!」 34. ウィーンバトルの幕開け

34.ウィーンバトルの幕開け  舞台における審査の時間以外、長岡幹と青井杏香のレギュラー審査員二人は上層階のスタッフ専用隔離フロアにこもり、ミーティングルームで様…

「オケバトル!」 33. 彼女がつれない、そのワケは

33.彼女がつれない、そのワケは  この期に及んでの音出しは興ざめになりかねない。あとは自分らの力を信じて本番の空気に委ねよう。とのことで、Bチームも二時間たっぷ…

「オケバトル!」 32. 明るい夏の朝

32.明るい夏の朝  たいていの人間は就寝時、もうろうと意識を失いかける寸前に、その日に繰り返し行った作業や印象的な出来事、さりげない会話などが漠然と脳裏を駆け巡…

「オケバトル!」 31. ハメルン男と深夜のワルツ

31.ハメルン男と深夜のワルツ 「何かが引っかかる」  初日からの三日間ずっと張り詰めてきた中で、今宵はゆったりディナーに極上のワイン、広々とした眺めの良いスパでじ…

「オケバトル!」 30. うさぎレベルの陰謀

30.うさぎレベルの陰謀  バトルのルールでは、本番の開始時刻が迫っている旨を出演者に告げに来る役割のタイムキーパーは存在せず、リハーサル室から舞台袖へと移動す…

「オケバトル!」 29. 都会のダンスと田舎のダンス

29.都会のダンスと田舎のダンス  名もなきトゥッティ族の悲哀に酔いしれ、公の場で己の名前を出し渋ったがために、かえって「マエストロ」の呼称をつけられたあげく、指…

「オケバトル!」 28. 怪我の功名と砂男の正体

28.怪我の功名と砂男の正体  Bチームでもやはり誰も指揮をやりたがらなかった。  ただでさえ、生粋のセンスがさらけ出される曲というのに、Bにおいての指揮者は、ど…

「オケバトル!」 27. 誘拐の企みと、歌姫の素顔

27.誘拐の企みと、歌姫の素顔  我々Aはフルート、Bはホルン。ついに管楽器から脱落者が出されてしまった。これはゆゆしき事態だぞ。  ホルンは元から四人もいたのだ…

「オケバトル!」 26. ひとたび音を出したなら

26.ひとたび音を出したなら 「Aチームでは指揮者とコンサートマスターが持ち場を離れたことで、音楽もこれまで? と思いましたが、ほどなくしてフルートが何事もなかっ…

「オケバトル!」 25. トゥッティの、名もなきギセイ者くん

25.トゥッティの、名もなきギセイ者くん  ファーストヴァイオリンの外側の席で、オランピア嬢の華麗なる歌声とダンスにうっとり酔いしれつつ、最高に幸せな気分でワルツ…

「オケバトル!」 24. 指揮者は指揮棒を放り投げ、コンマスはヴァイオリンを投げ出しはしなかったが……

24.指揮者は指揮棒を放り投げ、コンマスはヴァイオリンを投げ出しはしなかったが…… 「大衆的な楽しいオペレッタの作曲家としての生涯の最晩年に、オッフェンバックはつ…

「オケバトル!」 23. 砂男と自動人形

23.砂男と自動人形  次なる課題がオッフェンバック作曲の歌劇《ホフマン物語》からの第二幕のアリア〈森の小鳥は憧れを歌う〉であるとの発表を受け、ランチもそこそこに…

固定された記事

小さなバラと素敵な音楽物語

♪♪♪ 小さなバラと素敵な音楽物語 ♪♪♪ 名曲物語 & 演奏会プログラム  筋金入りシューマニアーナの音楽ライターです。ロマンティック・シューマンを初め、偉大なリスト、哀愁のチャイコフスキーが、とりわけのお気に入り。クラシック音楽の源泉バッハに、天上のモーツァルトは別格として、主にロマン派ピアノ音楽を軸に、作曲家や名曲にまつわる愛にあふれた物語を綴っています。 小説  短編あり長編ありの小説は、軽やかなファンタジーや、心躍る冒険物語の世界に皆さまを誘いたく、執筆秘話

「オケバトル!」 37. 純朴審査員のトンデモ提案

37.純朴審査員のトンデモ提案  朝の六時を告げるE(=ミ)の音の鐘。  喜歌劇《こうもり》の舞台では、この鐘を機にオルロフスキー公爵邸での舞踏会がお開きとなり、一同が散り散りに帰途につく──実際は自宅に戻るのではなく、各々が思惑を隠しつつ第三幕の舞台となる刑務所へと向かうのだが──。  華やかな序曲の中で、この鐘の音は非常に効果的に使われており、通常は鉄琴の一種であるグロッケンシュピールが用いられる。  しかしリハーサル室には当のグロッケンが用意されていない。  A

「オケバトル!」 36. 一括おやじの夢のオケ

36.一括おやじの夢のオケ  果たして良いのだろうか、という上之忠司に対し、一同は、 「日々の演奏会を次々こなさなきゃならない限られた時間の中なんですから、仕方ないんじゃないですか?」  といった当然の意見を述べる。  定期演奏会や特別演奏会といった一般の音楽ファン向けの通常の演奏会だけでなく、プロオーケストラの多くは、拠点を置いている地域や関連企業のための慈善的な演奏活動も常々必要とされている。日々の流れに大いなる疑問や問題点があったとしても、根底から大改善しない限り、

「オケバトル!」 35. 課題のヒントを見逃すなかれ

35.課題のヒントを見逃すなかれ  次なる課題曲は《こうもり》序曲の可能性が大。もしくは劇中のアリアか何かかも知れないが、課題が《こうもり》には違いなかろう。  絃人は確信を持ってAチームの仲間に通達した。 「指揮は、この有出絃人が全責任をもって振らせてもらいます。皆さんは、シュトラウスの、この名作オペレッタについて、ランチ休憩の時間にうんちくを語り合うか、仮に疎い者がいるならば正直に周囲にあれこれ教わるか、できればリハーサルまでにライブラリーに出向いて過去の名演を観賞

「オケバトル!」 34. ウィーンバトルの幕開け

34.ウィーンバトルの幕開け  舞台における審査の時間以外、長岡幹と青井杏香のレギュラー審査員二人は上層階のスタッフ専用隔離フロアにこもり、ミーティングルームで様々な打ち合わせをしているか、あるいは自室にて、既に審査の終了した演目におけるリハーサル状況の録画をつぶさにチェックするなど、バトル参加者個人個人の資質を見いだすことに多くの時間を費やしていた。  最終的には、たった一人の「オーケストラ・マイスター」を選出せねばならないのだ。  既に有力候補と目星をつけられている

「オケバトル!」 33. 彼女がつれない、そのワケは

33.彼女がつれない、そのワケは  この期に及んでの音出しは興ざめになりかねない。あとは自分らの力を信じて本番の空気に委ねよう。とのことで、Bチームも二時間たっぷりの自由時間を得られることになる。  多くの者は朝メシ抜きだったので、カフェで優雅なブランチをとったり、スタッフにお願いして、バスケットにサンドイッチやスティック野菜、カラフルな彩りのフルーツにノンアルコールのシャンパンなどを豪華に詰め込んでもらい、陽光の降り注ぐ中でのピクニックとしゃれ込むのだった。  最初は

「オケバトル!」 32. 明るい夏の朝

32.明るい夏の朝  たいていの人間は就寝時、もうろうと意識を失いかける寸前に、その日に繰り返し行った作業や印象的な出来事、さりげない会話などが漠然と脳裏を駆け巡るもの。Aチームの面々もまたしかりで、多くの者がめくるめく舞踏の旋回に記憶を委ねつつ、その夜は幸せな眠りについたのだった。伝統のウィーン風舞曲のリズムも潜在意識にしっかりすり込まれながら。  有出絃人のもくろみも、あながち無駄ではなかったようだ。  ダンスでは普段使わない筋肉を駆使し、慣れない姿勢を保ち続け、身体

「オケバトル!」 31. ハメルン男と深夜のワルツ

31.ハメルン男と深夜のワルツ 「何かが引っかかる」  初日からの三日間ずっと張り詰めてきた中で、今宵はゆったりディナーに極上のワイン、広々とした眺めの良いスパでじっくり身体をほぐしたりと、充分なくつろぎタイムでかなりのリフレッシュをはかれたものの、どうも腑に落ちない。有出絃人は自室のベッドで仰向けになっての完全睡眠モードに至っても、何かが気になって仕方がなかった。 「何だか騙されてる気がするんだよね」  眠気への誘いとしてウォルター・スコット詩集の原書をうとうと眺めていた

「オケバトル!」 30. うさぎレベルの陰謀

30.うさぎレベルの陰謀  バトルのルールでは、本番の開始時刻が迫っている旨を出演者に告げに来る役割のタイムキーパーは存在せず、リハーサル室から舞台袖へと移動する時間配分も、チームごとの判断に任されていた。そして何らかの勘違いなどで、舞台に乗る時刻に袖に待機が出来ていなければ完全アウト、個人でも、チーム全体でも、即刻脱落となる。  なので、セカンド首席を希望しながらも、指揮者の立ち位置でリハーサルを仕切り、洗練にはほど遠く、とってつけたような妙ちくりんなワルツのリズムと

「オケバトル!」 29. 都会のダンスと田舎のダンス

29.都会のダンスと田舎のダンス  名もなきトゥッティ族の悲哀に酔いしれ、公の場で己の名前を出し渋ったがために、かえって「マエストロ」の呼称をつけられたあげく、指揮棒を持って仲間の前に立たされる羽目になってしまった浜野亮。正直に名乗っとけば良かったと反省するも、皆からの温かな、そして期待に満ちた拍手に迎えられ、辞退は不可能と察するのだった。  Aチームのリハーサルを途中で抜けてきたエキストラのハープ奏者が、折しもBチームリハーサルの後半に加わるところであった。既に舞台に

「オケバトル!」 28. 怪我の功名と砂男の正体

28.怪我の功名と砂男の正体  Bチームでもやはり誰も指揮をやりたがらなかった。  ただでさえ、生粋のセンスがさらけ出される曲というのに、Bにおいての指揮者は、どう転んでも脱落一直線の運命なのだから。 「オランピア嬢とワルツまで踊っちゃった彼ならどうだろうか?」  誰かが提案した。 「あの勇敢なナイトさん?」 「楽器も腕も故障で、自分は脱落なんて決めつけてたけど、タクトならオーケイかも」 「そうですね! ワルツの優雅な足さばきもちゃんと身につけてたから、振るのだっていけ

「オケバトル!」 27. 誘拐の企みと、歌姫の素顔

27.誘拐の企みと、歌姫の素顔  我々Aはフルート、Bはホルン。ついに管楽器から脱落者が出されてしまった。これはゆゆしき事態だぞ。  ホルンは元から四人もいたのだから一人くらい抜けたって何とかごまかせようが、二名しかいないフルートから一人が抜けるとなると、たとえ嫌われ者だろうが、ヘボ奏者だろうが、いなくなってバンザーイというわけにはいかないのだ。  この痛手をどう回避すべきか。  フルートの二番手がいないだけなら音のバランスもどうにかなろうが、仮にピッコロが重要な役割を果

「オケバトル!」 26. ひとたび音を出したなら

26.ひとたび音を出したなら 「Aチームでは指揮者とコンサートマスターが持ち場を離れたことで、音楽もこれまで? と思いましたが、ほどなくしてフルートが何事もなかったかのように、すっと入ってきましたよね。指揮者とコンマスとオランピア。音楽も何もかもが静止して、驚きのあまり呼吸すらも忘れて、時が永遠に止まってしまったかのような中に、フルートのメロディーが重なって……。時間が再び動き始めたというか、はっと我に返ったというか。あれは不思議な体験でした」  そこまで語り、司会の宮

「オケバトル!」 25. トゥッティの、名もなきギセイ者くん

25.トゥッティの、名もなきギセイ者くん  ファーストヴァイオリンの外側の席で、オランピア嬢の華麗なる歌声とダンスにうっとり酔いしれつつ、最高に幸せな気分でワルツのリズムに身を任せていた浜野亨。  それでも彼女の、舞台ギリギリまでステップを進める無謀ともいえる危うさに、始終警戒心も同時に保ち続けていたので、「あっ」と思った瞬間には即座に飛び出すことができた。手にしていた楽器の存在も忘れて電光石火の素早さで身を投げ出し、オランピアもろとも舞台から転落する。  落ちゆく彼女を

「オケバトル!」 24. 指揮者は指揮棒を放り投げ、コンマスはヴァイオリンを投げ出しはしなかったが……

24.指揮者は指揮棒を放り投げ、コンマスはヴァイオリンを投げ出しはしなかったが…… 「大衆的な楽しいオペレッタの作曲家としての生涯の最晩年に、オッフェンバックはついに本格オペラ《ホフマン物語》の作曲に意欲を燃やします。ですが残念なことに、志し半ばで病に倒れ、作品は未完に終わり、後に別な作曲家の手によって完成されました。そして今日この《ホフマン物語》は、オペラの名作中の名作として世に知られております。  ドイツロマン派を代表する作家であり、作曲や指揮もこなし、画家で裁判官でも

「オケバトル!」 23. 砂男と自動人形

23.砂男と自動人形  次なる課題がオッフェンバック作曲の歌劇《ホフマン物語》からの第二幕のアリア〈森の小鳥は憧れを歌う〉であるとの発表を受け、ランチもそこそこに地下のリハーサル室で待機していたAチームの面々は、 「またオッフェンバックなの?」と一様に首を傾げた。 「そう来たか!」  気合いを入れてこぶしに力を入れた有出絃人が一同に説明する。 「今日の流れは作曲家というより原作、E.T.A.ホフマンの『砂男』がテーマなんですよ」 オッフェンバック作 オペラ《ホフマン物語