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【読後感評】面白いって何なんすか!?問題

博報堂の元先輩、井村さんがひたすら
『面白い』ということに向き合い続ける様を
横から眺めるような体験。
(画像からamazonにとべます)

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井村さんと言えば、僕らの世代ではTVから流れてきてゲラゲラ笑い続けた
ファンタの先生シリーズや、

国内外の賞をまさかの総なめをした、
さけるグミのCMを企画された天才おもしろクリエイティブディレクター。

とにかくめっちゃおもしろい作品を考えられている印象で、
博報堂時代に『面白い』に苦しまされ続けた僕としては
「こういう人はひたすらに天才なのだろう。。」と思っていた。

実際天才なのかもしれない。
ただこの本には、その天才だと思っていた人が、
自分と同じように悩んでいるということが書いてあった。

プレゼンの前日になっても企画が出ず悩み、
恐くて寝ることもできずに考え続け、
結果として何も得られなくて
「こんなことなら寝るべきだった…」となる。

あるあるすぎて笑うシーンを、
この先輩も同じように過ごしていたのかと思うと、
なんだか勇気の湧く読書体験だった。

実際この本は、
『公式を教えてくれる本』ではなく『悩む人を応援する本』
だと思った。

『公式』を教えてくれる本はたくさんある。
実際、
企画を始める上で何の道具も持たずに考え始めるのはあまりに非効率だし、
スタートを切るという意味ではとても役に立ってくれる。
言い換えると、6-7合目くらいまでは一気に連れて行ってくれると感じる。

一方でその『公式』は頂上までは連れて行ってくれない。
連れて行ってくれたように見える頂上は、
まやかしの頂上であることも多い。

『公式』はどれも、成功事例を後追いで科学した法則である。
それは、
本質に近づくほど使いにくくなり、流行に近づくほど賞味期限が短くなる。
即物的なものに飛びつくと、
縮小再生産を繰り返してしまうだけなのだと思う。

井村さんは本書の中で下記のように語っている。

今までにない新しいアイデアが、
ある考え方に沿って考えれば確実に出るなんて、論理的におかしい。
今までにない新しいアイデアならば、
偶然、と言ったほうがむしろ論理的に思えてくる。

『公式』が出すアイデアからは、『公式の匂い』がするのだと思う。

いま必要なのは、きっと悩むことなのだろう。
人の認知変容はすべて、
『接点(メディアやイベント、クチコミなどすべてのタッチポイント)』と
『メッセージ』の組み合わせで起こる。
『接点』も、
『メッセージ』を受け止める価値観そのものも変化しているこの時代に、
『公式』が機械的に通じるとはなかなか思えない。

これまで学んだ『公式』を脱ぎ捨てて着の身着のままで、
人の感覚とか、社会の空気を感じ取って、
言語化していくほかないのだと思う。

「いや、そうはいっても締め切りは来てしまうから正解を出さなきゃいかんのじゃ!」

そんな状態に、この本は少しだけ背中を押してくれる。

閃こうとしても、具体的に取れる策がない。
ならばやみくもに「面白い」を閃こうとするよりも、
ケアレスミスをなくす、と頭を切り替えてみてはどうだろう。
つまり、「面白い」とは「面白くない部分を省いたもの」と考えてみる。
「面白い」とは「似ていないこと」
素直に考えたものの中から、似ているものを省くだけでいい。
面白いとは違うこと、とは言わず、面白いとは似ていないこと、としたのはそういう意図でした。

これは『公式』そのものというよりむしろ、
「それだけ悩んだのなら、きっとその中に答えがあるから、一度こう考えてみてはどう?」
という先輩のアドバイスのように感じた。
追い込まれたときの先輩のアドバイスには、藁にもすがりたくなる。。

マーケターとして10年目。
これまで学んだことを逆に落としていくのが重要だと感じ、
そして引き続き悩んでいる僕にとっては、
横で応援してくれるような読書体験だった。

悩める中堅マーケターのみなさまにぜひ読んでほしい本でした。

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