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米国女子バスケビジネス躍進の背景

東京五輪で銀メダルを獲得し、注目度が増す日本女子バスケ界、米国ではその注目度がここ5年で爆増しているが、その真の背景をご存知だろうか?
これは青天の霹靂ではなく、緻密に計算されたものや社会背景が密接に噛み合わさってのものなのだ。今回はその背景を紹介したい。(最後に紹介する点が実は最も大事。)


1) 17年に発生した#MeToo運動

少し前にスポーツ界に限らず、米国を発端に世界中で巻き起こった、女性の社会的地位向上を目的にしたこの運動、実はこれによって女子バスケも凄い恩恵を受けている。

この運動により、米国メディアの中でも特に左寄り(注:米国はメディアによって政治色が強く出る)のそれが、女性コンテンツを増やさざるを得なくなったのだ。これに伴いこれまでの然程女子スポーツを扱わなかったESPNといったスポーツメディアもバスケ含む女子スポーツを積極的に扱う様になり、必然的に露出が増加する事に。

2) 大学に待望のスター選手が複数誕生

これまでも米国女子バスケでは、大学時にスターとなったダイアナタルーシ、キャンディスパーカー等がいるが、今の新大学3年生は過去のスターを凌駕するスター選手の宝庫。

その代表格が史上最高の選手になれるのでは?との呼び声も高い、アイオワ大のクラーク、そしてケガ前はルックス含めクラークより評判高かったベイジベッカーズ、そして昨年までルイビル大で今野選手と共に戦った(最近少し評価と人気が落ちてる印象の)ヘイリーバンリスと言った、女子バスケファンに限らず全米中皆が知るスター選手が揃っており、スポーツの人気を後押ししてる。

3) 高校以下のバスケメディアの充実

2ではバスケに詳しい人であれば、ご存知かもだが、実はその彼女たちを有名にしたのが、オーバータイム、ボールイズライフ、コートサイドフィルムズといった高校生以下を対象にした、ある意味インディーズ(注: 表現がわからず..)のメディアなのだ。というのもそれらメディアが彼女達を高校生の頃から注目し、撮影し、You Tube、IG、TT等といった主要SNSに投稿し続けた結果、SNSをスポーツコンテンツ消費の主戦場とするZ世代に彼女達の名前が広がったのだ。 その為、大学に入る頃には彼女達の名前は既に多く知られており、また彼女達のSNSにはプロ選手以上のフォロワーがおり、ベッカーズに至っては100万人ものフォロワーが既にIGにいるのだから恐ろしい。。

4) WNBAの存在、同選手による大幅給与Upの要求

WNBAの人気はお世辞にもまだ高いとは言えず、設立から25年以上たった今でも毎年赤字となっている。数年前のシカゴ.スカイの優勝パレードにファンが全く来ず、逆にその写真(以下)のお陰で彼女達が優勝したのが有名になった程だ。

しかし、重要なのは財政的に厳しい中でも親会社であるNBAが毎年投資をし続け、リーグをここまで存続させた点にも目を向けるべきだ。 通常赤字が3年も続いたら解散となる所、NBAは長期目線で女子バスケの発展を優先し、存続させ続けた事でMetoo以降の女性地位に関わる地殻変動で、大きなメディア注目を受ける事に。

更に、ここ数年その運動に乗じて多くの女子選手がNBA選手と同等程度の給与をSNSや(放映量が増えた)メディアで求め始めた事で、良くも悪くもまた話題性が上昇し、メディア時間が爆発的に伸び、リーグ・個別選手の知名度/注目度を増すことに。

5) (最重要!!) 「ビジネス商機」を見出した企業がこぞって参戦

年始に衝撃が走ったのはWNBAが約1400億円の評価額で、Nike他から100億円規模の投資を受けた事だ。

これだけ聞くと、Nike他は儲かったお金で女子スポーツの発展を支援して良い会社だ!などと世間では騒がれるが実際には全く違い勿論、その要素もあるが、最大出資者であったNike経営陣の目論見は最低でも異なる。 Nikeは表向きには女子スポーツ発展の為にWNBAへ出資したと言っているが、真実は1)極めて伸び代の大きい市場で、2)独占的な地位を築き、3)メディア注目度が高い今、先行投資を行なったと言える。

これはデータを見れば明らかである。

こんなにも女子スポーツが人気を増しているにも関わらず、実は女子スポーツへのスポンサー金額は男子のそれ含めたスポーツ市場全体に対して、0.3%(!?)に過ぎないのだ。

その中、世界の女性購買力は男性の2.3倍で全体の70%にも及ぶ。スポーツを行う女性が増加傾向にあると考えると、まさに論理的に考えここに突っ込まない理由はなく、Nikeは「ビジネス的に大きな利益を見込め」かつ、「社会的に良いイメージを残す」という一石二鳥をこの投資を通じてやり退けたのだ。

この投資により男子バスケ以上に女子は益々Nikeの一強となるだろうし、Nikeのマーケ力を通じてWNBA/女子バスケは益々注目度を増していく事が容易に類推される。

いかがだっただろうか、今回の紹介は?

米国ではある意味女子スポーツの人気が上がるのを皆が指を咥えて待っているのでなく、1)メディアの力、2)社会的なムーブメント、そして何よりも3)資金の力でそのウネリを創造している

6) 最後に

今後最低でも欧米では優良企業による女子スポーツへの参画・投資はDEIの観点(社会的なイメージ向上が主か?)から益々増加していくと思われる。

まだこの領域が未開拓な日本では、今であればかなり安価に女子スポーツにスポンサード・参画でき、そのリターンは極めて大きいと言える。

ぜひ来年からプレミア化で注目を集める新Wリーグに和製Nikeとしてアシックス、ミズノ、デサントといった日本の主力スポーツ会社に入って欲しいし、それが実現したら女子バスケリーグがいよいよニッチリーグから、メインストリームになるのではないだろうか。

個人的には超注目している。

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