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役場の課題がわからないのが課題

先週始めた町役場の元ICTアドバイザーのよもやま話、2回目は「課題がわからないのが課題」という話です。

前回は「仕事は現場にあるんじゃない、書庫にあるんだ」という話をしましたが、何故そこまでして資料探しをしたのか不思議に思わなかったでしょうか?

ICTアドバイザーですから、ICTを活用したい課題があって呼ばれると考えるのが普通と思いますよね?でもね、役場の職員の皆さんは呪縛などで、課題を見つけること、解決することに慣れていないんです。
なら、ICTアドバイザーが課題を見つければ解決しますよね、と思うかもしれませんが、そうは簡単にいきません。
課題を把握するためには当然市町村の業務や運用を理解しなければなりませんが、企業に比べてかなり特殊で市町村によっても異なります。役場職員の適切なサポートがないと短期でこの業務を理解するのは厳しいでしょう。

職員が効率良くやるとかえって評価されない呪縛

仮にICTを活用して役場内の業務効率を変えたとしましょう。本来は評価されるべきなのですが、役場のソト(例えば住民など)から成果がみづらい場合は、不効率でも長時間やってる方が評価されるなんてことが良くあります。効率悪い仕事をしているのに、まじめに長時間やっているから「頑張ってるね!」て言われたりするんですよね。結果、効率よくやるとかえって評価されない呪縛から、業務を改善して楽する意識が薄れてしまいます。

このような呪縛で、面倒なことや、無駄なことを効率良く楽したいという意識が薄い状況で仕事を続けると、さらに課題には気づきにくくなります。
それでもICT活用や、DXが話題となりこのままではいけないという意識からICTアドバイザーなどが呼ばれるのですが、その反面課題かわからないままでいますので、結果「何をお願いして良いのか?」という状態に陥りがちです。

幸い私の場合は、過去役場職員時代の経験と、比較的呪縛にとらわれてない方もいて最初から具体的な課題を1つ提示されていたので、比較的に良い方だったのかもしれません。

ICTアドバイザーが特殊な役場業務を理解しずらい

役場の事務作業は企業とは全く異なり、経験がないと理解できないものが多くあります。例えば「款・項・目・節」って言われて何かわかりますか?

企業ならお金の管理は経理で仕分けして、損益計算書で売上や仕入れ、や貸借対照表で試算や借金を管理します。役場には通常この損益計算書や、貸借対照表はなくて、変わりに予算書と決算書でお金の出入りを管理しています。予算書や決算書では収入(税収や交付金、補助金など)、支出(町や役場を運営する出費)を管理しますので(細かな規定などを除き)シンプルなんですが、この予算を管理する単位が「款・項・目・節」なんです。

実際の例をネットに公開されていた泉南市のICT関連の予算を参考にしてみましょう。
http://www.city.sennan.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/11/R1.3yosankessan10.pdf
款 2.総務費、項 1.総務管理費、目 10.情報管理費、節 19.負担金及び交付金 に「中間サーバ利用負担金」が 2,030千円 計上されています。
「中間サーバ」とは国が管理するマイナンバーと市町村が連携するための中間処理を担うサーバなどのことで、各市町村が負担金を出し合って運用しています。総務費ですから総務部総務課辺りが負担金支出を管理していますが、推測できましたか?
初めて見る方には「なんじゃこりゃ?」ですよね。

とまあ、会計管理でも企業と市町村で全く違いますが、役場職員の皆さんは新卒で転職経験のない方が多くて、役場でやっている業務が企業からみて変わっているとはあまり思っていません。ですからICTアドバイザーが着任しても、事前にこのような説明はしてもらえない場合がほとんどでしょう。ICTアドバイザーが自力で理解するには、多大な工数と負荷がかかりますよね。

その他の要因と解決に向けてのアプローチ

その他にも、課題を意識しずらい要因として以下などがあるでしょう。
・国、県の方針に従うのに慣れて、言われた通りやる体質
・条例などの規定を守る意識が強く、改善する発想を産まない
・公平性を求められ、改善を阻まれる
・業務範囲を意識し過ぎて、広い視野が持ちづらい
よく言われる上意下達と縦割りの話ですね。

とはいえ、職員の皆さんは決して業務に手抜きしているのでもなく、改善したくない訳ではないんです。一部を除き多くの職員の皆さんは日々の業務に真剣に向かって取り組んでいます。
ただ、先に述べた呪縛や、特殊な業務であるがために、外部からICTアドバイザーを迎えても最初の課題を選定からつまづく可能性が高いです。この状況を解決するためには、ICTアドバイザーが役場職員と一緒に伴走しながら課題を掘り起こす必要があります。言い換えれば、ICTアドバイザーから歩み寄り職員から役場を学びながら、課題を明らかにするアプローチが必要でしょう!

ちょうどこの記事を書いている時に以下のニュースを見つけました。

このニュースの舞台は国のデジタル庁なんですが、民間企業から参加された皆さんは半年間で本当の課題を把握するアプローチや、職員との伴走はどれほどできたのでしょうか?
無理して続ける必要もないのかもしれませんが、これが事実なら残念なニュースです。

次回は「電算(ICT)担当はつらいよ」な話を書いてみようかと思います。

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