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漆16:漆器の歴史(日本・後編)

おはようございます。
今日は昨日から雨が上がり、曇り空でちょっと肌寒い朝。気温的にはこの位の気温の日がこれからしばらくは続きそうだ。

さて、漆に関して、昨日から日本での歴史を振り返り始めてたところで、今日はその後半、江戸時代からをみていこう。

江戸時代

江戸時代は日本のあらゆる文化が花開く安定期であり、もれなく漆も本阿弥光悦の琳派をはじめとした芸術家が出現し、独自の漆作品を世に残している。特に船橋蒔絵硯箱に見られるように、その斬新な造形と意匠はまさに工芸品の域を超えた芸術品として昇化させた。
江戸時代の代表的な漆の素晴らしい小物に印籠がある。 水戸黄門の、例のアレだ。極めて小さな物であるが、ボディーは和紙を何枚も張り重ねて作った一閑張り(江戸時代初期に戦乱の中国から日本へ渡った明の学者、飛来一閑によって伝えられ、丈夫な和紙で日本で独自に発展した技術、和紙と漆なのでとても軽くて丈夫)の技法を用い、その上から繊細な蒔絵を施している。武士はもとより江戸の上層階級の持ち物で、ステイタスのひとつとして、薬丸などを入れる容器として身に付けられていた。

また、江戸時代には各地に豪商が誕生し、全国でも地域の特産品として漆器が生産される。石川県の輪島塗、福島県の会津塗、青森県の津軽塗などがその代表格だ。漆塗りの生活雑器が全国各産地で作られるようになり、箸から椀、家具・建築内装まで、この時代からなくてはならない日本独自の文化として今もなお脈々と続き、生活に潤いを与えてくれている。
そして開国して海外との貿易が盛んになると、繊細で鮮やかな日本の漆器は海外で人気になり、海外で日本の漆・漆器は「JAPAN」と呼ばれるようになった。

明治時代

武士の時代に終わりを告げ立憲君主国として開国してからは、欧州各国で開催される博覧会において漆工品は日本の代表的な工芸品として世界に発表・紹介された。同時に各種賞に輝き、その精巧な蒔絵の技は西欧においてますます評価されていく。明治期の代表的な漆作家である、柴田是真・六角紫水・白山松哉は、日本美術院を創設し、現代漆工芸の礎を築いた。

“漆”はあらゆるものを劣化から守り、強度・耐久性を増すと認知され、日露戦争からは軍艦、火縄銃などに漆が塗られるようになる。日本軍は、イギリスの戦艦を輸入し、造船所で軍艦の表面に漆を焼き付けて軍艦の強度を高め、防錆塗料として、戦艦を加工していました。戦争など悲劇な歴史もありますが、日本の歴史上、あらゆる場面で漆は使われていたのだ。

大正・昭和時代

帝展(現在の日展)が1907年第一回文部省展覧会として開催されるようになってから、漆芸品は芸術品としての道を歩み始める。そして戦後、帝展から伝統工芸展が分かれ、伝統工芸展を率いた昭和の漆の天才、松田権六(人間国宝)の作品数々は後世へ大きな影響を与えた。第二次大戦中(1943年)に弟子の大場松魚(人間国宝)と共に制作した蓬莱の棚(石川県立美術館所蔵)が特に名品とされる。
一方、日展の高橋節郎(文化勲章授章者)に代表される漆パネルの作品の数々は、漆をよりアートとして発展させた点において、特筆すべき漆工品として位置付けられている。

平成時代

漆工品は現代において、日展を中心としたアート作品、伝統工芸品、また実用品としての漆器などが渾然としている。
そんな中で、1998年開催されました長野冬季オリンピックでは金銀銅合わせて500個あまりの金属と組み合わされた漆メダルが、日本の文化の象徴としてアスリート達の胸を飾り、海を渡っていった。

しかし、明治・大正・昭和時代になると、産業革命による近代化や戦争による軍事費などにより、高価な漆器の需要が大きく減少していく。高度経済成長により高級品の象徴として国内需要が高まり、一旦は再び盛り返すものの、平成から令和になった今、需要は低下の一途を辿っているというのが現実と言わざるを得ない。


*上記の情報は以下のリンクからまとめています。

江戸時代には、それまで庶民は持てない、憧れの的だった漆が各地で産業として奨励されたことで庶民でもなんとか手に届くものになった(イメージとすれば、江戸時代の三種の神器的な位置付けか)。当時の日本人はものを大切に直して長く使う精神が(もったいないというよりも)当たり前に根付いていたことを考えれば、軽くて丈夫で長持ちする上に抗菌性にも優れている漆ほど、そんな彼らの生活に寄り添うものもなかっただろう。それがどこで道を違えて、漆は我等の生活から遠いところへ行ってしまったのか。庶民の生活の変化によるものなのか、漆の供給によるものなのか、理由は何であれいずれにせよ僕らは日本文化の一部として漆に一度は触れてみるべきだよね。そう思わずにはいられない。
明日は漆の世界の歴史を見てみよう。


僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。


皆様も、良い一日を。

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