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漆18:漆器の歴史(中国編)

おはようございます。
今日は朝から遠くまで雲が立ち込める曇り空ながら、明るくて穏やかな朝。

昨日は日本の漆の延長線としてヨーロッパに広がっていく歴史を見てきたけれど、今日は日本と同様に漆文化が根づき発展してきた、お隣中国の歴史を見ていこう。

漆の木は、日本の他、中国、カンボジア、タイ、インドなどの東アジアの国々に分布しているが(各地の気候風土が異なり漆の性質も異なる)、その北限は日本。
再三お伝えした来た通り、漆にはとても長い歴史があり、日本では(世界で)一番古い漆器が約1万年以上前の縄文時代の装飾品にも漆が使用されていたことがわかっている。その日本と同じレベルで漆の歴史を持つのが中国だ。

先史時代

実際2021年、浙江省井頭山遺跡出土の木器2点が発掘され放射性炭素年代測定により約8200年前のものだとされ、現時点で中国最古の漆器であることが分かった。これにより、今まで現存する最古の漆器とされていた、浙江省の河姆渡遺跡から発見された紀元前7500から前7400年の木製の弓をさらに遡る形となった。
また、西周(紀元前1046年 - 前771年)に、注目されるような量の漆器が存在していることから、当時出現し始めた最古の時代であったと考えられている。

漢代

漢代(紀元前206年 - 220年)には政府の命令によって漆器職人が拡充され、精巧な彫刻が施された漆器が知られる。また、戦前に日本が中国ならびに朝鮮半島で発掘調査した遺跡からは漢代の漆器が多く出土しており、特に楽浪郡から出土した漆器群はよく知られている。

唐代

唐代(618年 - 907年)では、様々な形状、鳥・動物や花などの金および銀の薄い板を使用した漆器・漆工でいう『金銀平脱』が見られる。このような漆の定着剤としての使用方法から、この時代は漆器における彫刻の初期の修練期であるとされる。

宋代

宋代(960年 - 1279年)に生み出されたとされる、彫漆は生産工程で施される洗練された技術で、中国漆器を非常に芸術的な工芸品にした。異色の漆の層を重ね、適宜の色が出るまで彫り込む「紅花緑葉」といった技術も生まれた。張成・楊茂といった名工がこの時代を代表する。

明代

明代(1368年 - 1644年)後期に入ると、表現が一層緻密になり、琉球漆器にも見られる「戧金(そうきん=日本での沈金を指す)」は引き続いて施されている。これは東大寺に伝わる雲鳳戧金経櫃(うんぽうそうきんきょうびつ)などに現われている。この頃は、日本との貿易も盛んに行われ日本産の蒔絵が受け入れられた。楊塤・方信川がこの時代の名工である。

日本漆のパートナー

漢・唐・宋代の間に漆の処理工程は中国から広がり、 それは最終的に韓国・日本・東南アジア・南アジアに紹介された。
日本には8世紀に、漆器の技術が仏教と中国の文化財とともに朝鮮半島を通って伝えられ、14世紀明朝代に彫刻された漆器が伝えられた。

技術面で日本をリードして引っ張り続けた先輩中国だが、戦後は違う形で日本の漆産業を支えてくれている。それは原料となる漆そのものの提供だ。
江戸時代には約2,000トンあったとされる日本国内の漆の年間生産量は、2021年の特用林産物統計調査によれば、国内産地は1道1府11県でわずか2トンと1,000分の1に。そして、自給率はようやく8%を超えたものの、2000年代には2%を切っていたようなところからかなり回復した結果で、ほとんどを中国産の漆に依存して成り立っているのが、今の日本の漆産業の実情なのだ。
原材料や輸送量の高騰の影響は漆にも大きな影を落としており、そもそも格安で購入できるメリットが薄れている昨今、日本の気候に合った日本漆の(成分的な)強みも含めて改めて評価されて国内漆の生産が再注力される流れが起きている。と、徳島で北村真梨子さんの漆を拝見した時に彼女が教えてくださったことがまさに起こっている訳だ。


*上記の情報は以下のリンクからまとめています。

「日本の漆」という言う時僕は100% Japan madeであることを勝手に期待していたから、素材は中国の漆なんですよ、と言われて正直なぜか少しショックだった。でも、自分が今まで何のサポート(というのも烏滸がましいが)もせずに、そんなお気楽な期待をしていたことが恥ずかしかった。でもだからこそ、そうしたことも含めて色々漆のことを教えてくれた爽快なおば様から買いたい、漆のお椀が無条件に素敵だから日々使いたいと思った。そして、これこそ生きたお金を使い方であり、文化を守ることだなと腹落ちして、100%納得して最初の漆のお椀を購入させてもらった。
人が手で作っているものを購入するということは、作り手や産業に対する投資であり投票であり、ただの消費じゃなくて繋がりであり、所有ではなく人生を彩るパートナーを得るということだ。そう確信させてくれるお椀は、毎日目にしてニンマリしてしまう程に愛おしいし使う時の満足感は大きい。

今いる日本の職人たちの技を継承させてくれている中国の漆には感謝しかないし、何が悪い訳でもない。ただ様々な漆の記事を読み、ほぼ全員の職人さん達が「日本の漆は素晴らしい」と書いているのを見るにつけ、作り手として彼らが100%納得して満足できるものを作って欲しいという作り手の気持ちと、原料がない故に日本の文化として滅びるという憂き目を避けたいという日本人としての期待と、そして何かの折に100% Japan madeの漆を使ってみたいという1ファンの小さな希望とが入り混じって、今はただ日本に生えてきる漆の木がベランダで勢いよく伸びている木々の様に、少しでも早く大きくなって漆を作ってくれることを願うばかりだ。


僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。


皆様も、良い一日を。

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