ひめくり☆トラベル:1/10

 裕美はむくりと起きあがった。しかし、そのまま前に突っ伏してしまう。
「あー、なんか色々、気付かされたかもかも・・・」
 自己嫌悪に似た気持ちは、「10」の窓を開けて更に強くなった。底に書かれていた言葉は、「precious?」だった。


「さて、何か見つかりましたか?」
 その声と同時に、周囲がぱっと明るくなり、裕美は思わず目を閉じた。しばらくしてから、そっと目を開ける。
「残念ながら、まだ何も。というより、何かを見つけようって、思ったかな?」
 裕美は、目の前に立っているウサギ男を見上げて、そう答えた。
 ウサギ男の口元が、笑みの形を作る。そうして彼は、白手袋をはめた手を差し出した。その手を取った裕美が立ち上がるのを、手助けしてくれる。
「ぎりぎり及第点、というところでしょうか」
「悪かったわね、出来が悪くて」
 少しむくれてそう言う裕美に向かって、ウサギ男は一礼する。
「なに、旅はまだ始まったばかりです。あなたが何かを見つけるまで、お手伝いしますよ。なにしろ私は、あなたの案内役ですから」


Do you know what is your precious?

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