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LA PERLA遍歴と雑記と愛

その話を聞いたのは1月のパリ。

パリ国際ランジェリー展のために行ったパリ初日のディナーで業界関係者の方から。
まだ公にはなってないけどLA PERLAが倒産するんです、もう数ヶ月従業員に給料が払われてなくて…と。

ものすごい衝撃だった。衝撃、悲しみ、ショック。久しぶりのパリそして明日からランジェリー展なのに初日からこんな話だなんて。

商品が良ければちゃんとお客様は理解してくれる、売れる。私はそう教育もされてきたし実際そうだった。そう信じていた。それが崩壊した、壊された気がした。

LA PERLA。ラペルラ。
日本以外のランジェリーを買ったことがなかった時からその名前は知っていた。インポートランジェリーの女王ラペルラ。イタリアの真珠。10代の私は一体どこで知ったんだろう?記憶ない。

とにかく一番最初のインポートランジェリーはどんなに高くても絶対にラペルラを買う、と決めていた。
そして買った。21歳くらいの頃かなあ。とってもオーセンティックな白のケミカルレース。

私はイノセントな雰囲気の白のランジェリーを着るようなキャラではなかったし、その頃は特に白や黒のニュートラルカラーより日本では見たことがないような鮮やかで楽しい色のランジェリーが好きだった。
でもその白は着てみたかった。美しくて。

実際に試着したら綺麗よ、ぴったり!ってフィッターさんが褒めてくれた。私自身も綺麗だな〜!と感動した。ヨーロッパならではのバルコネット型でカップの不織布は下側だけ。上側はレースだけでバスト上側にボリュームのある鳩胸タイプの私には特に合う形。嬉しくて即買いした。即買いと言ってもリボ払いで。身分不相応だったかもしれない。けど欲しかったんだもん。

…と言いつつ、実はその頃はそこまでラペルラにがっつりはハマらなかった。
当時からラペルラはプライスも他のヨーロッパブランドから頭ひとつ飛び抜けて高かったのもあるけど、それより私の年齢的にもディフュージョンブランドのほうがデザインやコンセプトがハマることが多くてそっちを買う方が多かった。


ということで私のラペルラ変遷。
以下ラペルラグループのランジェリーの記録。
全て私の一消費者としての実録であって業界人としてラペルラの方に聞いた話とかは1ミリもない。取材記事ではない。単なる忘備録として書いてるだけで事実と違うこともあると思う。なのでもし自分のSNSでもネタにして発信したい人はちゃんと調べて裏を取ってから書きな。


まずよく買ってたのはMALIZIA(マリッツィア)。
甘い。可愛い。でもちょっと気の強そうなじゃじゃ馬感。丸っこいお花でキュートな雰囲気なのにノンパテッドですっけすけとか、黒でセクシーに見せるのかと思いきやドット柄やフリルで甘々とか、サーモンピンクでフェミニンな雰囲気かと思ったら超華奢なアンダーフリーのブラとGストリングで露出度大だったり、その可愛さと攻撃性(そんなふうには意図してなかったと思うけど)が大好きだった。


あとはOCCHI VERDI(オッキベルディ)。
OCCHIのほうがカジュアルでデザインも素材使いも遊び心があるものが多かったかな。プリント生地使いも多かった記憶。ポップ。キュート。
陽キャのランジェリーって感じで露出度高めのミニスカートとかの日に着るのがテンあげだった。


その後より攻撃的エロティック路線が好きになった私はMARVEL(マルベル)に課金する人生が始まる。

ラペルラらしい余裕のあるオーセンティックなパデッドブラなのに超鮮やかなカラーリングとか、普通のブランドだったら隠すであろうバストトップやボトムのフロントを逆に透けさせるとか。

いずれにしてもカバレッジは至極ミニマム。自分の身体に自信がないなら着なくていいよ、という感じだったけど素材が上品でカッティングが秀逸なので着るとなんかスタイルがよく見える。

バストトップがメッシュで抜かれたトライアングルブラのセットアップをこれ着た私超エロいじゃん最高!!と思ってデートで着て行ったらこんな下着を普段から着てるなんて性産業で働いてる…?と相手に警戒されドン引きされた。ふん。


ただMARVELは私が出会ってから2〜3シーズンくらいで日本の店頭から見なくなった。実際はどのくらいの期間やってたんだろう?

こういうエロティック度強めのデザインのランジェリーはアダルトショップ、セックスショップなどでとても安価で買える。粗悪な素材だな…と感じることも多いけど相手を目で楽しませることやプレイが目的であってガチの実用品ではないのでそれで問題ないと思う。

MARVELのプライスはそういったものの5倍〜10倍。ちょっとNastyを気取った贅沢な大人たちの遊び、という感じで私にはめちゃくちゃ最高だったけどそういう遊びを楽しむランジェリー好きは世界でもそんなに多くはないのだろう。

そしてその後、MARVEL日本に入ってこなくなっちゃったな〜…と思ってたときにスタートしてガチハマりしたのがLA PERLA BLACK LABEL。死ぬほど大好きだった。今でも大好き。好きなブランドのトップ5には確実に入る。

BLACK LABELの何が好きだったか、もうそれは完全に下着の常識と既成概念を逸脱したデザイン、設計。
こんなデザイン初めて見た、こんなパターン初めて見た、こんな素材初めて見た!の連続だった。

鳥の羽根がびっしりと縫い付けられたブラとかチュールのフリルをボワボワに重ねたショーツとか、どう考えても水洗いできなそうで買って試着はしたものの1度も着ていないものもある。

いいのだ。
私にとってランジェリーは女の夢、女のロマン。
見てるだけで幸せ。持ってるだけで嬉しい。ミニマリストに興味はない。


そしてここまでを経てようやくLA PERLA着たいな、という時期が来た。

私はラペルラはオーセンティック、クラシックなものが好きみたい。
素晴らしいパターン技術は分かっているので、できるだけストイックに味わいたいと思う心がそうさせるのかな。いいお肉はシンプルに焼いて良い塩だけで食べたいと思うのと同じで。

チュールレースのノンパテッドのモールドカップも、どこかスポーティなフルカップ風のデザインもどちらもナチュラルに整えつつ色気を感じさせる秀逸なカッティングとパターンなのだけど、サテンとエンブロイダリーレースのアイコニックなコレクション、Maisonはブラを着けた瞬間に「!!!!!!!!!!!!!」と頭の中にビックリマークが100個出るくらい驚いた。

私の嫌いなモールドカップなのにすごく薄手で、密度がみっしりと高い素材なのに硬くない。
しかもバストをカポっと覆うんじゃなくて支え寄り添いバストにピタッと貼りつく。どこも無理をせず快適そして美しい。

私が直近まで携わっていたブランドでモールドカップを開発したときはこれを目標にしていた。

シンプルなものやオーセンティックなデザインを見てこんくらい私でも作れそう、と言う素人(私は口が悪いのであえてこの単語を使う)とか、シンプルなものは(デザインが足りないから)つまらない、みたいなことを言う素人をいっぱい見てきたけど、それは表の顔だけを見ての話でその裏にどれだけの技術が隠されているかを知らないから言えるんだよな、と思う。

こういう高級ブランドのいわゆるベーシックライン的な商品の凄さは着てみて初めてわかる。逆に言えば着たことがない人には一生わからない。
昔エルメスのシンプルなロングコートとか試着させてもらったときびっくりしたもんね。本当にシルエットが綺麗で驚くほど肩周りが動きやすくて信じられないくらい軽くて暖かい。
ラペルラもまさにそう。肌に貼りつくものだからその衝撃といったら私はコートを上回るものだった。


近年イタリア生産のラペルラはどんどん値上がりしてなんだか遠い存在になってしまって(その反面ちょっとお手頃な中国生産のコレクションも出来てはいたんだけど)、手を出すことがなくなっていた。でもそうしてる中で終焉への道が少しずつ作られてしまったのかと思うとやるせない。ラペルラの代わりはいないしこの先も出てくることはないだろうな、と思う。


私に夢を見させてくれる美しいランジェリーたちが消えてしまうのが本当に悲しい。悲しいな。

LA PERLAへの愛と敬意を込めてここに記録。

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