正解。卒業式の歌に気づいたこと

今日は私がコミュニティスクール委員を務めている中学校の卒業式だった。久しぶりに入場制限のない卒業式で、在校生、卒業生、保護者、教育委員会、来賓、PTA、全員出席しての、久しぶりの卒業式。

最近、介護で実家に帰ることが多く、両親が、けっして豊かではない収入の中から、私と妹を大学まで行かせてくれたことに感謝をする機会が多くなってきた。

私は一人しか子供を育てていないけれど、それでも本当に色々大変だった。外国での出産、育児、そもそも病気がちだったし。これが2人となったら、さらに大変だろう。そのことを同情するレベルで理解できるようになってきて、改めて育ててくれたことに感謝している。
そんな気持ちで参加した卒業式だから、約150人全員、それぞれに家庭があって、それぞれの親御さんたちが本当に大変な思いをしてきたはずで「よくここまで大きく育ったね」と、まるで親戚のおばちゃんのような気持ちになっていた。

卒業証書を授与する時に、来賓席の前に立って、一度会釈をするという所作が必ず組み込まれているのだけど、私はその都度その都度、生徒の顔を見て「おめでとう」「大変な3年間だったね」「頑張ったね」「大きくなったね」（笑）などと、心の中で語りかけていた。

この子達は、入学式もなかったコロナ世代だ。制約の多い中、彼らは青春を楽しめただろうか。ちょっと心配になってしまう。

この中学校は、音楽に力を入れていて、入場退場の演奏は、1年生のブラスバンドが担ったし、合唱コンクールで録音されたそれぞれのクラスの合唱曲が、卒業証書授与の時に BGM で流れたり、また在校生からも1曲合唱のプレゼント、卒業生からも2曲の合唱付きの答辞があった。

その中でRADWIMPS の正解という歌を卒業生が歌った。大変申し訳ないけれど、私はこの歌を、この時初めて聞いた。そして、その歌詞に心が震えた。

あぁ答えがある問いばかりを教わってきたよ
そのせいだろうか
僕たちが知りたかったのは
いつも正解など
まだ銀河にもない
一番大切な君と仲直りの仕方
大好きなあの子の心の振り向かせ方
何一つ見えない僕らの未来だから
答えがすでにある問いなんかに用などはない

「正解」より

これ以降にも、正解がない問いがいくつか登場する

喜びが溢れて止まらない夜の眠り方
悔しさで滲んだ心の傷の治し方
傷ついた友の励まし方

「正解」より

そんな中、こういった歌詞で締めくくられる

明日からは僕だけの正解をいざ探しに行くんだ
中略
次の空欄に当てはまる言葉を書き入れなさい
君のいない明日からの日々を
僕は私はきっときっと「　　　　　　　　」
制限時間はあなたのこれからの人生
解答用紙はあなたのこれからの人生
答え合わせの時に私はもういない
だから採点基準はあなたのこれからの人生
「よーい　はじめ」

「正解」より

私は、教育者のひとりとして、いじめ防止条例制定委員会とか、学校運営連絡協議会とかに参加している。様々な場で、答えのない問いにどのように子供たちを向かわせるかとか、そんなことが討論されることが多かったが、こんなに人気のあるグループが、こんな素敵な歌詞で、こんな素敵なメロディーで、もうとっくに子供たちに伝えていた。

だとしたら、もう大人のすることはないじゃないですか（笑）
一瞬、そう思ったのだけど、
新型コロナウイルス感染拡大で、世の中さらに先が読めなくなった時代、そんな予測不可能な時代に、どのように子供たちの生きる力を育てていくか。教育者たちは教育者たちで、真剣に考えているんです。

最後の歌詞に出てくる「答え合わせの時に私はもういない」の「私」は、そういう大人たちかもしれない。そう感じました。

そんな子供を思う親と、教育者と、そして子供たちが、1つの場に集まって、卒業式というセレモニーを行ったことは尊い。
そしてその場に自分がいられたことは、絶対に意味があると思って、私はこれからも、答えのない問題に立ち向かう力を、子供たちにつけさせていきたいと、心新たに決意した次第です。
頑張るぞ。