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にんじんケーキの話

にんじんのケーキは、我が家の定番のおやつの1つです。何十年もつくっているものの、毎回少しずつ違います。違ってもまあ、いつもおいしくできる、という家庭料理ならではのすばらしさがあります。「まあおいしい」。この粒度の緩さが私はとても好きですが、レシピ本などの場合は、そこの部分がなかなかお伝えできないので、こちらに書くことにします。

<にんじんケーキの基本分量>(21.5×8.5×6cm型)

①粉類 150g 
②にんじん 中1本(150g前後、半分を千切りにして半分をすりおろす)
③卵 2個
④植物油 1/2カップ弱(80g程度)
⑤砂糖 1/2カップ強(65〜80g程度)
⑥ベーキングパウダー 小さじ1
⑦シナモンパウダー 小さじ1
⑧レーズン、ローストくるみ 各30~50g
⑨塩 1つまみ

※フロスティング
クリームチーズ100g+レモン果汁大さじ1/2+粉糖大さじ4を混ぜたもの

です。
①粉類とは、薄力粉だけでもよく、薄力粉100g+全粒粉50gなら香ばしさがあり、薄力粉がちょっと足りなければ強力粉と合わせて150gにすればよく、薄力粉120g+アーモンドプードル30gの組み合わせなら、コクが深くなります。
⑥と⑦と合わせて、ふるっておきます。ふるうのが面倒なら、①⑥⑦を合わせて小さなボウルに入れて泡立て器でシャカシャカシャカシャカとまぜてもいいです。

②にんじんは、長さ15cm(私の指でL字をつくった親指から人差し指の長さぐらい)、一番大きな直径が5cm(私の親指と人差指で輪っかをつくったぐらい)程度の大きさが目安です。きっちりその重量でなくても、120〜150gの間であれば、おいしくできます。
たわしでゴシゴシこすれば、皮付きのまま使えます。せんぎりとすりおろしにするのは、すりおろしだけだと水分が出過ぎるからです。粗くおろせるなら、切り分けなくてOK。ちなみに私はチーズグラインダーでゴリゴリと全部おろします。にんじんシリシリカッターもアリです。

③卵は、使う前に冷蔵庫から出して常温にしておけば混ざりやすくなります。私はL玉を使っていますが、M玉でもちゃんと出来上がります。

④植物油、これは香りの強くないものがいいです。オリーブ油、太白ごま油、米油、グレープシードオイル、ひまわり油、大豆油、サラダ油どれでもつくれます。太白ごま油を使えば、ごまの風味が優しく香ります。

⑤砂糖は、私はきび砂糖を主に使います。コクを出したいときはきび砂糖2:黒砂糖1ぐらいの割合で、黒砂糖を混ぜます。上白糖や三温糖でももちろんできますし、糖分が気になる方はラカントなどがおすすめです。とても甘い冬場の寒じめにんじんを使うときやレーズンを多めに入れるときは、砂糖を65gぐらいまで減らして焼いています。

⑥ベーキングパウダー、以前は重曹と組み合わせて使っていましたが、主にベーキングパウダーは縦に、重曹は横に膨らませるので、重曹は省略することにしました。それよりも、卵をよく混ぜると生地によく空気が入ってきめ細かく膨らみます。

⑦シナモンパウダーは、お好みで調節してください。香辛料の香りが強めなのが好きなので、私はナツメッグも入れることが多いです。

⑧レーズン、ローストくるみは、30〜50gの間で好きに加減してください。レーズンがないときには、プルーンを刻んで入れることもあります。時々りんごの煮たのを混ぜることもあり、これも子どもたちはとても好きです。

⑨塩は1つまみなので省略してもいいですが、入れると味がしまります。ちょっとのことなのに不思議だなあと思います。

<型について>
型1台(21.5×8.5×6cm)を使いました。

この型でなくても、正方形やマフィン型に焼いてもいいです。
型にはワックスペーパーを敷いておきます。

<つくりかた>

❶ボウルに卵と砂糖、塩を入れて泡立て器でよく混ぜる。(オーブンは170度に設定して温めておく)

❷次に、油を2〜3回に分けて入れ、その都度泡立て器で全体がなめらかになるまで混ぜる。ドレッシングみたいにちょっとモッタリする感じまで混ぜる。

❸ゴムベラに持ちかえる。ふるった粉類(①+⑥+⑦)を半分入れてざっくり混ぜ(粉っぽさが残っていてOK)、にんじんの半量を次に入れてざっくり混ぜ、を交互に繰り返します。混ぜすぎると焼き上がったときに生地が硬くなるので、ざっくり混ぜる。

❹レーズンと、つぶしたローストくるみを加えて、またざっくり。ここで粉っぽさがなくなればOK。型に流し込んで、170度に予熱しておいたオーブンで50〜55分焼く。

❺焼いている間にフロスティングをつくる。クリームチーズを600wで30秒加熱してやわらかくして、レモン果汁と粉糖を加えてよく混ぜる。

❻焼き上がったら型から外して金網で冷ます。フロスティングを塗って、冷蔵庫で30分ぐらい冷ます。

<できあがり>

フロスティングを塗った状態でラップで包めば、冷凍保存もできます。解凍の際は、冷蔵庫に一晩置いて、が一番おいしく解凍できます。

話の中のにんじんケーキ

偶然なのか、私が好きなお話には、にんじんケーキが出てきます。
吉本ばなな『キッチン』では、主人公のみかげが「手順を暗記するほど作ったキャロットケーキには私の魂のかけらが入ってしまった」と言います。どんなふうに作るのかの記載はないですが、きっとすごくおいしいのだと思います。

瀬尾まいこ『卵の緒』では、主人公の僕が、朝焼きたてのにんじんブレッドを食べながらそのおいしさにうっとりし、登校拒否中の同級生に食べさせたいと言います。このにんじんブレッドはバターの香りが高いようなので、にんじんケーキの仲間だと思う。その時に主人公のお母さんが「すごくおいしいものを食べた時に、あの人にも食べさせたい、と思う人こそ、今自分が一番好きな人なのよ」と言うのが印象的です。

もう1つ、その名もずばり『にんじんケーキ』というアメリカの翻訳絵本があります。初めて読んだのはずいぶん前。当時は子どもだったのですごく面白いお話だったんですが、大人になったらなんだかずいぶん印象が変わってしまいました。

ネタバレしてしまいますが、お話の中身はこんな感じ。
新婚夫婦のうさぎの話で、夫が弾丸のようにしゃべる。それに相槌を打つだけの妻に、返事が待ち切れないのか、そうじゃないこうやって答えればいいんだよ、と夫が言う。会話がどんどんすれ違う。最初は妻は、意志があるのかないのかって感じなんだけれど、その夫に我慢ならなくなって、怒って木の棒で叩くんですね。私は内気だけれど、あなたが思ってるほどバカじゃないのよ、私の話も聞いてよと。最後には、二人でだまって幸せな気持ちでにんじんケーキを食べるところで、お話はおしまい。
初めた読んだ子どもの頃と今だけでなく、そのときそのときに置かれた環境や立場で、確実に本の中身の読み方が変わる本です。

ちなみに小5の息子は、これを読むとゲラゲラ笑います。大人になるほど笑えなくなるのかな。


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