母となり一生母であることの瞬間地面を獣は蹴った 母となり一生母であることの爪先地上を永遠に離れて
小樽から帰りのフェリーに乗る前のお弁当屋が何度も浮かぶ
眠るまで水槽に浮く練習を明日の午後には止むはずだから
スーパーに〈無洗米〉の文字追えば家庭科実習の記憶さらさら
〈ひざまくらカフェ〉の看板行き過ぎて二十歩立ち止まり検索す
ラベンダーとバラが咲きそう一日の澱をゆうらり手繰り寄せつつ
突然に庭の花壇のあちこちにキノコは吾の分身として
『道頓堀川』をあなたに貸したこと其処に向かって小雨を歩く
大人ピンクのマーガレットの花束をきみの瞳の海へ沈める
暴力はえんえんえんとあるだろう恐怖の羽織る紅いローブに
真っ青な着物に裸足を覗かせてうつらうつらと舟を漕ぐひと
青年の羽ばたくようなスキップと地べたに眠る少女、東雲
位置確認しているだけさ僕たちは子宮から出てまだ間もないし
つんとして見えなくもない唇の素直な「はい」に耳すすがれる
ビニールにブチッと爪を突き立てるタラの身あわくピンクに透けて