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【本】チームダイナミックスの行動科学-チーム・モチベーション-

チームワーク、と聞いてどんなことを想像しますか?私はチームワーク、と聞いてワクワクするタイプなのですが、苦手意識を感じている方もいるのではないかと思います。

ちなみに、山口(2008)は、チームワークをこう定義しています。

チームワークとは、チーム全体の目標達成に必要な協働作業を支え、促進するためにメンバー間で交わされる対人相互作用であり、その行動の基盤となる心理的変数も含む概念である。

『チーム・ダイナミックスの行動科学』


チームワークの研究は様々ありますが、今回はチームワークとチーム・モチベーション(主にモチベーション・ロス)についてまとめていきたいと思います。参考にしている本はこちらになります。

チームワークにおいて「モチベーションって何だろう?」「モチベーションがどのように影響を受けるか?」「モチベーションを保つには?」などなどの疑問を持っている人の参考になれば幸いです。


チームにおけるモチベーション

池田(2021)によると、組織において、自らの職務や目標に向かって意欲的に遂行している状態のことをワーク・モチベーションといいます。

組織には多様な仕事があります。ある人は、よりよい人材を確保して会社の発展に貢献すること、ある人は営業で取引先を増やして利益を上げることを目指すでしょう。

このように、組織における職務は多様な特性を持つからこそ、池田・森永(2017)は職務特性に応じた多面的ワーク・モチベーション・モデルを提案しています。

『チーム・ダイナミックスの行動科学』より抜粋

このモデルは、達成志向モチベーションがあらゆる職務に共通して求められる中核的なモチベーションとして位置付けられているのが特徴です。

チーム活動はタスクワークとチームワークに分けられることを考えると、この中でも、達成志向モチベーションと、協力志向的モチベーションが求められているといえます。

モチベーション・ロスについて

チームで動けば、チーム全体のモチベーションが自然と上がる、ということは決してありません。むしろ、モチベーションが抑制されることもあります。

モチベーション・ロス(チームで動くことでかえってメンバーのモチベーションが低下する現象)の代表的な現象に「社会的手抜き」があります。

例えばチームでとある課題に取り組んでいるときに、めちゃくちゃ動いてくれるメンバーが一人いたとします。ふと、「この人が動いてくれるから自分はそんなに動かなくて良いかな」と思ったことはないですか?

これが、社会的手抜きです。

モチベーション・ロスはなぜ起きるか?

社会的手抜きが生じるには原因が2つあると言われています。

①責任性の拡散


例えば、20人いるslackで、全員にメンション(@channel)をつけて「皆さんへ。この資料について意見をください!」と投げたとします。何人の人が意見をくれるでしょうか?

もちろんその組織の風土にもよりますが、おそらく、2-3人なのではないかと思います。なぜなら「自分ではない誰かが反応してくれるだろう」と誰しもが思うからです。

これは、ある状況に居合わせる他者が多いほど、その状況に対する個々人の責任感が低下することで起きます。

②評価可能性の欠如


例えば、4人のチームでとある課題解決に向けプレゼンテーションを作成していたとします。1人のメンバーがめちゃくちゃ動いていて、もう1人のメンバーがそんなに動いていなくても、その活動量は公に知られることの方が少なく、全体に隠れてしまうことがほとんどです。

結果、誰がどのように貢献したかが不透明になりやすくなります。この状況はめちゃくちゃ動いているメンバーに乗っかるだけのフリーライダー(タダ乗り)が発生することにも繋がります。

モチベーション・ロスを克服するには?

では、モチベーション・ロスを防ぐにはどんなことを意識すれば良いのでしょうか?研究では、克服する条件が2つ示されています。

①課題の意義や価値(George,1992)


チームメンバーにとって課題の意義や価値を感じることができ、さらに自分と関連づいていると強く感じられている時、課題にコミットするようになるといわれています。

ただ課題と向き合ってください、というのではなく、チームメンバーそれぞれがこの課題のどこに意義や価値を感じるのかを考え、動機付けをする(言語化して伝えてみたり、問いを用意してみたり….)ことが重要なのでは、と思います。

②チームメンバーの努力の明確化と評価


各メンバーの努力が明確になり、評価されることで社会的手抜きが抑制されます。さらに、チームの課題に対して、メンバーの責任感が高まる場合にも手抜きが抑制される効果を持つことも明らかにされています(Hoon &Tan,2008)。

チームが結成された初期段階で、各メンバーの役割や責任を明確にし、定期的にモニタリング&評価できる体制をつくることが重要だと思います。


モチベーション・ロスはどんな組織であれ、起きる可能性があります。「自分は大丈夫」と思っていると危険です。人は誰しも、自分に対して甘い部分を持っているのでは、と思います。

常に自分自身やチームの動きを観察し、時に疑い、定期的に点検し、対話をするということも、チームでモチベーションを保つ上で重要だと思います。


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来週あたりにはリリース予定なので、よければフォローなどしていただけると最新の情報が届くかと思いますので、よろしくお願いいたします◎

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