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<旅行記>東京散歩(旧築地場外市場)

もう明日には、羽田から出発してしまうということで、前日の昼に、昔良く通った築地場外市場へ、家族3人で出掛けた。

既に築地市場は豊洲市場に移転したので、築地市場があったところは更地になっているようだが、市場の外=場外の店は、多くが豊洲に移転したものの、まだ築地に残っているところもある。それに、知名度及び銀座から徒歩でも行かれる距離という近さからは、築地の立地条件は、観光客向けとして未だ魅力のある場所だろう。

しかし、今は外国人観光客がいないし、GO TO キャンペーンで東京に来る人もいないので、さすがに人は少ない。そのため、ちょっと廃墟に迷い込んだ雰囲気がある。都会の中の廃墟というのは、ある意味で希少価値だ。

ランチには少し早めだが、奥様が「海鮮ひつまぶし」が食べたいというので、それがメニューにある店に入った。冷たい生ビールで乾杯!自由な時間って、いいねえ。

20200902築地場外寿司1

私はシンプルに海鮮丼を注文したが、どうもこのメニュー写真よりは具材が少ない感じだった。

20200902築地場外寿司2

たぶん、客が減って、経営が厳しいのだろう。ここで食事をした後、場外をぶらぶらしたのだが、奥様と息子は、牡蠣やウニの立ち食いをしていた。この2人は、まるでトドのように魚介類を食べまくる。

その後、ちょうど交差点近くにある、一軒のまぐろ専門店が目に入った。

20200902築地場外祐斗地震時に食べた店

息子が言うには、2011年3月11日の東日本大震災の時、品川で会社訪問しているときに地震が発生して、集団での説明会は中止。当時は、木場の社宅に居たのだが、交通機関が止まってしまったため、息子は歩いて帰った。

品川から山手線沿いに歩いて有楽町から豊洲方面に向かえば、途中に築地がある。ちょうど歩き疲れたときにふと見ると、マグロ料理の店があったので、そこでマグロ丼を食べて元気を出して、また家に向かって歩き出したそうだ。

その話を聞いて、「なんというたくましさ!」と感心したのだが、それがこの画像の店。今も健在なのが、何か嬉しい。次に築地に行く時は、ここで食べて見たい。

その交差点に昔からのビルを綺麗に改築したところがある。ここも場外ということで、海産物の専門店が入っているのだが、その2階に星乃コーヒーというのがある。私は良く知らずに入ったのだが、実はかなりお洒落な店だった。

20200902築地4丁目星乃コーヒー2

空いていることもあって、私たちは大きな窓の席に案内されたのだが、ここからの眺めは絶品。映画やTVドラマの撮影で使われるのに最適な設定になっている。

20200902築地4丁目星乃コーヒー1

私が映画館監督だったら、絶対にここの席に主人公(もちろん、ヒーローとヒロイン)を座らせて、とりとめのない会話をさせたい。遠くに見える、築地本願寺や聖路加国際病院が、背景の良いアクセントになっている。

ここで息子はさらに、スパゲティを頼んでいた。高校時代はラグビー部の部活でご飯を沢山食べさせられるのを嫌がっていたが、30歳になった今は、高校生のような食欲になっている。人って、常に矛盾の塊ではないかと、ふと思う。

この後、息子は仕事に行き、しばしのお別れとなった。さすがに、彼はちょっと寂しげな顔をしている。普通は、息子の方が家から出ていくのだろうが、私たちは親が家を出ていく逆のパターンだ。でも、あと1年半経てば、私達夫婦は日本に戻ってくる。そして、私も定年だから、もう海外勤務はない。また家族が一緒になれるが、その時こそ、息子が我が家から巣立つことになる。

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翌日、昼近くの羽田空港。入道雲のある青い夏空だ。今回の一時帰国で飲む最後のビール。こんなセンチメンタルな気分になるビールも、これが最後だろう。なぜかadieu(アデュー)というフランス語が頭に浮かぶ。

私の、息子とのしばしの別れよりも、海外生活と海外勤務との別れ、観光客気分で日本に行くことの別れ、そうした「これで、おしまい」という気分に、このフランス語が合っているみたいだ。

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