見出し画像

広報うちこの特集ができるまで(後編)

こんにちは! 元広報うちこ担当の兵頭です。今回も広報紙の特集づくりというマニアックな内容ですが、全国で頑張っている自治体広報担当の皆さんの参考になるように「後編」も頑張ります。

前編では特集づくりの基本的な流れとポイントをお伝えしました。「骨子」ができたら、その膨らませたイメージを元に、実際に取材していくことになります。後編では、私の最後の特集となった広報うちこ4月号vol.306の特集を例に、どのようなことを考えながら制作したかを説明したいと思います。

特集「内子の子育てどうなってるの?」の概要

内子町では高校3年生までの医療費無料化や、出産・子育て応援ギフトの配布、伴走型相談支援など、充実した子育て支援を実現しています。しかし、令和4年の町内の出生数は50人(前年の6割程度)と激減。少子化対策の難しさが浮き彫りになっていました。
そこで特集では、内子町の各子育て支援施策の周知を図るとともに、子育て世代の人たちの生の声を紹介しました。行政と当事者のギャップを知ることで、今後のよりよい子育て支援につなげたいという試みです。

令和5年4月号は表紙もかわいいよ

制作前にちょっと補足

紹介する特集は6ページですが、このページ数が標準的で作りやすいと思います。理由は、文章の基本的な構成である「序破急」や「三幕構成」がそのまま使えるから。三幕構成だと、1プロット目が「導入」、2プロット目が「転換」、3プロット目が「解決」、みたいな感じです。この特集も似たような構成になってます。それから、1つのプロットに多くの内容を詰め込みすぎないことも大切なので、「1プロットに1つの内容」を心がけましょう。
※1プロット=2ページ

読みやすい文字量はどれくらい?

ついでに1プロットの文字数ですが、私は1600~2000字くらいが読みやすいと考えています。広報うちこの場合、テキストの文字サイズが「15Q」なので、全部を文字にするとだいたい4000字まで書けます。
写真と文字が半々くらいとして2000字。タイトル回りなどに余白を作りたいので1600字くらいという計算です。
この数字を決めておくと紙面が作りやすくなります。例えば特集内で「何人くらいにインタビューしようか」と考えるとき。2人なら800字、4人なら400字、6人なら250字くらい、という目安ができるので、プロットの内容によって一人を深掘りするのがいいか、複数に広く浅く聞くのがいいか、をイメージしやすいです。
それでは、プロットごとに制作の過程や工夫点を見ていきましょう。

Plot1_導入「知ってる?」

まず町の支援を紹介し、町の取り組みや課題を洗い出すプロットです。実際の骨子では、次のように考えていました。

取材前に作っているので、最終的な紙面と違う部分にも注目してみてください。

当初は代表的な支援を6~8個くらいを紹介しようと考えていました。でも、紙面に落とし込むと、お堅い……。文字だらけで行政行政した堅い導入になりそうだったので、担当者のおすすめする支援をインタビュー形式で紹介する手法に変更しました。
紙面上の担当者の言葉にもありますが、何よりも大切なのは「支援の入口」です。ガイドブックを紹介することで情報量の少なさをカバーし、読みやすさを重視。まずは担当者や支援とつながることが一番と考えました。

タイトルがダジャレ。しかも読みにくいかもですが、ご愛嬌。

Plot2_転換「今、子育て中の皆さんの本音」

子育て支援センターなどを利用している皆さんに、育児の生の声を聞きました。町の支援は充実していると言う皆さんですが、まだまだ困っていることが「ある」と分かります。今後の支援を考えるヒントになればと思って作ったプロットです。

改めて骨子を見ても「ふんわり」ですね。こういう骨子は取材力が試されます。

2プロット目では「量と質のバランス」に工夫を加えました。実際は、育児休暇を取った男性の話だけでも1ページは埋まるくらいのボリュームになるほど、示唆に富んだ内容でした。が、「現場の生の声」という切り口なので、一人二人のインタビューでは偏りを感じます。より多くの声を入れることも大切です。そこで先ほどの文字数で考える手法で、1600字中の2人は400字、残りは6人×150字くらいにして、量と質に注視。「ホンネ」の部分を伝わりやすくしています。

タイトルは似ていて、場面は転換する。目線もプロット1からガラッと変わります。

Plot3_結び「解決方法を一緒に考える」

物語の三幕構成なら最後は「解決」ですが、そうはいかないのがまちづくりの難しいところ。広報紙では行政の方向性を示しながら、読書の皆さんに自分事にしてもらえる、一歩を踏み出してもらえるような終わり方がしっくりきます。

載せる意味がないくらい実際の紙面と変わってますね💦 

プロット1に予定していた担当課長のインタビューを最後にしました。子育て支援などについての新しい計画作りに取り掛かる直前だったので、課長の思いを伝えながら、子育て世帯へのアンケート調査の機会があることを伝えています。特集を見て、「自分も意見が言いたい」という雰囲気ができていれば幸いです。
行政的な答えを押し付けるような特集をたまに見かけますが、必ずしも広報紙の特集で完結する必要はないと思います。いろいろな人の考え方や思いを伝えて、その上で「いい問いかけ」ができること——。町の未来をよくする方法を一緒に考えてくれる人が増えれば、それが町の力になると思います。

特集の終わり方

最後に小ネタですが、特集の終わり方にも気を使っていました。テキストなどで上手に締めることもそうですが、見た目で「終わり」と分かることも大切だと思います。
そのためにしているのが、最後っぽい写真の配置を決めておくこと。最後のページは大きな写真を1枚使うとか、組み写真にするとか。あと序破急の構成の考え方で、最後のテキストを「強く短くする」ことも採用してほしいです。まとめを長々と書くと読後感が薄らぐので、余韻が残る程度の文章量がいいと思います。

今回、私の担当最後の特集を題材に説明しましたが、期せずして基本的な作り方の紙面になっていました。レイアウトなども参考にしやすいと思います。ぜひご一読ください。


この記事が参加している募集

広報の仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?