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既刊作品の小さなお話

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既刊作品の小話などまとめ。たまに追加。
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記事一覧

君が残した365日 あとがき

※この記事には微かなネタバレ(匂わせレベル)が含みます。ご注意ください。 それでも誰かを想い残したのなら、きっとこれが本物の愛なのだと ある日、雲一つない秋晴れがまるで世界が一つになったかのように続いていた。マスクの下、薄く開いた唇はただそんな空を眺めていた。空想も何もない、綺麗だという言葉すら頭に浮かばず、目を奪われたような感覚で歩いていた。 不意に金木犀の匂いがした。ああ、もう秋だ。分かっていたけれど、歳を取るにつれ時間はあっという間に過ぎ去っていく。週5、8時間。

私は、さよならの先で君に会う

今日、世界の始まりで君に問う。 君が私(僕)を忘れても、私(僕)が君を憶えている。 開いたページはどこにでもあるような恋愛小説の有り触れた一節だった。僕と私で分けられた文章はどちらにも取れるし、どちらにも取れない。 忘れてしまったらそれが全てだろう。思い出す事さえ叶わないのなら、次はないはずだ。選択はいつだって間違え続けた。どこから間違えのかと言われても、始まりはずっと前、もしかすると子供の頃かもしれない。 合縁奇縁。人との巡り合いは気が合う気が合わないなどする事もあ

ラブレターを送る話

8.6光年先に想いが届くくらい、人を愛した記録を形に遺す。 っていう物語を書いたことがあります。どうも皆さんこんにちは。優衣羽です。 久々にnoteを書きます。そもそも、個人的な話をするのが久し振りです。Twitter以外で。 なんで久々なんですか!?っていう問いが浮かんだかもしれませんが、本音を言うと色々迷っていた節はあります。 とりあえず、まず忙しかった事。 毎日仕事、帰ってきてから仕事、仕事、帰ってきてから仕事、時折の休みはメンテナンス、みたいな感じで。自由に

沈む夏

「ねぇ、夏の匂いがするね」 光る波を見つめながら一歩前に進む君の首筋に汗が流れ落ちた。僕の視線は釘付けになり脳を熱が侵していく。 左手には先の見えないほど広大な海が広がっており、透明な水の中で魚たちが自由に泳いでいるのが見えた。汗、と一言だけ口にすれば君は振り返りタオルで首筋を拭う。暑いね、と言いながら再び歩き始める君の髪が尻尾のように揺れ動く。半袖のセーラー服からは日焼けした肌が覗き、今年も紫外線と闘わなければと意気込んでいた数日前はどこに行ってしまったのかと思う。

紅い糸のその先で、作者が語ってみた

2020.04.24 再び歩き出す音がした。 沢山待たせた分のお返しは、ここから先の人生で嫌というほど返していこうと思う。立ち止まらず貪欲に、そう思わせるに至った空白の期間を僕は忘れないだろう。 という事で、作者本人が自分の作品を語ってみた第二弾です。よろしくお願いします。 紅い糸のその先で、 運命なんて身勝手で酷い言葉だと思う。 運命を信じたら、 全ての事柄は運命によって作られたものだと言えてしまうからだ。 紅い糸のその先で、/優衣羽 子供の頃、いつか自分だ

僕と君の365日を作者が語ってみた

2019.03.05 人生が変わる音がした。 時間は有限で、この先など何一つ分からない。ただ歩き出した足音だけが耳に届いて、形を成して僕の想いを掻き消した。昇華させるのが美しいのなら、それもまた一興だと思った。 僕が小説家になった日の事だった。 僕と君の365日 どうも初めましての人は初めましてこんにちは 小説家してます優衣羽です。 発売から一年以上が経って、ふと、あとがきの事を思い出しました。作品のあとがきを書かないのはご愛嬌だったのですが、最近 「どうして