さよならは突然来るのではない。忍び寄っていた事に気づけなかっただけだ
「人は必要な時に、必要な人に会うらしいよ」
深夜のファミレス、ラストオーダーを聞きに来た店員は、席に流れる空気を察し足早に去っていく。
180円のドリンクバー。グラスの中で香料しか入っていないメロンが泡を立てた。向かいの席にはブラックコーヒー。白い陶器の縁に薄紅がついている。最後に見たそれは、もっと鮮やかだった気がした。
「そういうこと」
”そういうこと”ってなんだ。聞き返す事すら出来ず開きかけた唇を閉じた。窓の外に広がる夜は都会の喧騒を掻き消す事が出来ない。点滅する