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短編小説まとめ

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作家、優衣羽の新規短編小説を載せる場です。気ままに更新。
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記事一覧

ルーティンワークに欠けた何か

生活は続く PM6:30 仕事終わりにスーパーへ行く。 PM7:00 帰宅。 PM7:30 夕食。無音。 PM8…

8

泡になって消えるなら、共に死んで馬鹿げた永遠を語らせろよ

「泡になって消えちゃうらしいよ」 昔々、と言っても二百年ほど前。ハンス・クリスチャン・ア…

優衣羽(Yuiha)
1か月前
4

海の月は揺蕩うだけで、月までの道のりは途方もないけれど

深海を揺蕩う海月のような生物 クラゲという生物がいる。透明で水の流れに揺蕩っている、ゼリ…

優衣羽(Yuiha)
1か月前
5

Paradise Regained

薪を割る音が冷たい空気を裂くように響いた。 かじかんだ手で切り株から跳んだ薪を拾う。雪は…

優衣羽(Yuiha)
2か月前
4

Planetes

彷徨う者たちへ 『アテンション、アテンション――プロジェクト・ノアが地球から離れて、本日…

優衣羽(Yuiha)
2か月前
6

小指でした約束を、薬指で誓い合う。

「指きりげんまん、嘘ついたら針千本のーます!」 「指切った!」 遠い昔の記憶、誰もが口に…

優衣羽(Yuiha)
3か月前
6

さよならは突然来るのではない。忍び寄っていた事に気づけなかっただけだ

「人は必要な時に、必要な人に会うらしいよ」 深夜のファミレス、ラストオーダーを聞きに来た店員は、席に流れる空気を察し足早に去っていく。 180円のドリンクバー。グラスの中で香料しか入っていないメロンが泡を立てた。向かいの席にはブラックコーヒー。白い陶器の縁に薄紅がついている。最後に見たそれは、もっと鮮やかだった気がした。 「そういうこと」 ”そういうこと”ってなんだ。聞き返す事すら出来ず開きかけた唇を閉じた。窓の外に広がる夜は都会の喧騒を掻き消す事が出来ない。点滅する

前世の推しとアイドルは、まともな恋など出来やしない

突然だが、前世の記憶はあるだろうか。 人は皆、輪廻転生を繰り返すと言うが、前の世で生きて…

優衣羽(Yuiha)
3か月前
8

神様なんて

※この物語は2020年に角川文庫より発売された「紅い糸のその先で、」の初期原案、「ウラニアの…

優衣羽(Yuiha)
3か月前
6

ウラニアの慈悲

※この物語は2020年角川文庫より発売された「紅い糸のその先で、」の初期原案です。 ウラニア…

優衣羽(Yuiha)
3か月前
6

幸福はあの日の姿を形作っていた

『お元気ですか?と言っても、数日振りなんだけど。 やっとこっちに着いて、荷解きしてすぐ手…

優衣羽(Yuiha)
6か月前
9

たかが、21g分の物語。

21g、彷徨い、巡り、天に消える。 「やあ、おはよう」 いや、こんばんは?男は眼鏡をくいっ…

優衣羽(Yuiha)
6か月前
9

モンスターな僕たちは

子供の頃、おとぎ話のようなハッピーエンドを望んだ。 平凡に日々を生き、ある日突然王子様に…

優衣羽(Yuiha)
7か月前
8

魔王様は死んだ

―ある四天王の手記 魔王様が死んだ。 勇者一行との戦いに敗れ、魔法使いは自身の身体ごと時間の狭間へ魔王様を連れ込み亡き者にした。 灰のように散りゆく魔王様を、崩れた魔王城の片隅、瓦礫の隙間から眺める事しか出来なかった。 声はとうに枯れた。 重なる数多の死体。 閉じる狭間。 泣き崩れる勇者。 立ち尽くす一行。 魔王城に、朝日が差し込んだ。 『今日からお前は四天王として我の軍勢を従え共に未来を紡いでもらう』 遠い昔の記憶。先代の魔王が悪逆の限りを尽くし、人間はおろ