ゆういちの一生 第9話 後編「Sunshine Town」

夜逃げしてきた先は、おばあちゃんの家でした。
香川県の西の端。
仁尾町という田舎町です。

なんと鉄道も通っていません。
公共交通機関はバスだけです。
香川県を横断する鉄道を作る計画があった時に、
仁尾町は反対をしたので鉄道が通ってないのだそうです。

夜逃げして来て、住むことになったおばあちゃんの家は、
そのまた山奥の、自然に囲まれた所。
地区名は「石ヶ谷」です。石の谷!

石の谷のユウイチ。

家には鍵すらついていません。
トイレに行くにも、一回家の外に出て、
外にあるトイレに行かなければなりません。
トイレの天井にはタカアシグモという大きなクモがよくいました。
ゴキブリを食べる益虫だし、人を噛んだりはしませんが、単純に怖いです。

その他、家の中や通路にはいろいろな生き物が出現します。
土間にゲジゲジやカマドウマがいます。
あまり好きではありませんが、
珍しい生き物なので楽しかったりします。

ゲジゲジ。

ゲジゲジは捕まえると、自分で足を切って逃げます。
足はしばらく動いています。
足に気を向けている間に逃げるのです。
トカゲのしっぽと同じ感じですね。

マイマイカブリ 。

トイレに行く廊下のところで、
マイマイカブリを見つけた時はテンションが上がりました!
死んでましたが。
生きてる時に会いたかったです。

マイマイカブリはその名の通り、
カタツムリを食べます。
カタツムリのカラの中に頭を入れて食べやすいように
首が細くなっているのが特徴です。
サザエのつぼ焼きを食べる時みたいな感じですね。

ヤモリ。

夜になると窓ガラスに
結構な数のヤモリが張り付きます。
一匹ずつも大きいです。

ハンミョウ。

夏、道を歩くと「ハンミョウ」がいます。
歩いて近づいていくと、ちょっと先に飛んで、
また近づくと、ちょっと先に飛ぶ、
楽しい虫です。
模様もきれいです。

ホタル。

家の近くに池があって、
夏には蛍がたくさん飛びます。

愛知県に来て、蛍を見る時は
「あ、あそこに1匹飛んでる!」
みたいになることもありますが、
こちらでは、もう、豊富に飛んでます。
たくさん捕まえて持ち帰ったこともありますね。
※蛍は持ち帰ってはいけません。

太陽の町。

当時、仁尾町は「日本で一番、日照時間の長い町」ということで、
世界初の太陽熱発電の実験「サンシャイン計画」が行われていました。
たくさんの大きな鏡に太陽光を反射させ、
太陽熱をタワーのてっぺんに集めて発電します。

太陽熱発電所の隣には、「仁尾太陽博」という博覧会が行われていて、
その後「サンシャインランド」という遊園地になりました。
太陽熱発電で動く遊園地だったと思います。
(曇りの日はどうしていたのでしょうか?)

駅とは?

町は山に囲まれていて、鉄道が通っていません。
町から出るにはバスのみです。
なのに、町の人々が、「駅に行こう」と言っています。
着いていくと、そこは、バスのターミナルでした。

太陽熱発電を町をあげてやっていたこともあり、
町の家の屋根には、まあまあソーラーシステムが付いていました。
今から40年前なのに、かなり普及していた感じです。

「太陽の町」こと仁尾町は、
その当時は、「仁尾太陽博」という博覧会や、
その後にできた「サンシャインランド」という
テーマパークがあったので賑わっていたのですが、
残念ながら、現在は過疎地です。

15年ほど前に久しぶりに仁尾町に行ってみたら、
隣町から仁尾町へ行く道の途中に

「ローソンまで あと5キロ」

という看板が出ました。
ローソンがその町の貴重なコンビニなのでしょう。
その位の過疎地です。

転校生。

学校では、僕は転校生です。
転校した最初は珍しがられました。

休み時間は、相変わらず外では遊ばず、教室にいます。
教室で女の子と遊んでいると、廊下から、男子が歌ってはやし立てます。

女の中に、男が一人♪

気の合う男子はいたけど少なかったです。
田舎だからか、その当時の流行なのか、
ヤンキーみたいな乱暴な子が多かったので
あまり気が合わなかったのでしょう。

学校では、いつものようにいじめられないように
小さくなって過ごしていました。


続く。


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