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『宙ごはん』を読みました

『宙ごはん』を読みました。
2022年に出版された小説です。著者は町田そのこさん。
町田そのこさんは、2021年に『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した方で、本作は受賞後に出版された一作目になります。


あらすじ

物語は、主人公の川瀬宙(そら)が育ての母である"風海"と産みの母である"花野"と共に暮らすことから始まります。
宙は花野のことを「カノさん」と呼び、風海は「ママ」と呼ばれています。
しかし、花野は大人らしいことをせず、宙が小学校に上がると風海は夫の海外赴任に同行し、宙と花野の共同生活が始まります。
花野は宙に対してあまり関心を示さず、ごはんを作らないどころか授業参観にも来ません。
代わりに恋人の拓殖との時間を優先します。
そんな中、花野の中学校からの友人である佐伯が宙に手を差し伸べてくれます。
佐伯は料理人であり、宙にパンケーキの作り方を教えてくれます。
宙は小学生、中学生、高校生と成長していく中で、自分と同じように身勝手な大人たちに翻弄されながら、自分たちの置かれた状況を打開し、成長していきます。
そして、物語のキーになる存在として、おいしい手作りの料理が登場人物たちの関係性を紡ぎます。

EdgeCopilotの生成文を一部修正して引用

感想

物語としては、複雑な家庭で育った主人公の宙が、小学生~中学生~高校生と時間を経ていく過程で起きた出来事が描かれます。

その中で宙が自身の複雑な家庭や、途中で出会う複雑な事情を抱える人物たちと向き合いながら、自身の中に抱えているわだかまりのようなものを少しずつ整理していき、一歩ずつ成長していく物語です。

そして、その物語にはいつも"料理"が大事なキーとして関わっていました。なので、本のタイトルが"宙ごはん"になっているのだと思います。

作中には様々な料理が出てきますが、第一話と最後の第五話が両方とも"ふわふわパンケーキ"がキーになっているのも印象的でした。パンケーキに始まり、パンケーキに終わる、といった構成でしょうか。

また、成長するのは主人公の宙だけではありません。産みの親の花野さんや途中で登場する人物たちも、登場時の最初の頃と終盤の最後の頃を比較すると、成長して変化がある事に気付きます。

特に、宙の幼少期に「そう呼ばれるには(お母さんと呼ばれるには)、あたしには覚悟が足りないから、かな」と言っていた花野さんが、宙の成長に合わせるように自身も変化して成長していく姿が描かれる様が印象的でした。

花野さんの「世界ってあたしの年でも、どんどん広がって変化していくんだよ」という台詞が印象的です。

物語の終盤で、以下の文があります。この文が、この物語を象徴する文だな、と思います。

「ひとはきっと、いつでも変化の一歩を必死に踏んで生きていく。たくさんのものを抱えて、なお。そしてその一歩は自分だけの力じゃない。たくさんの大切なひととの思い出や、繫がりが奇跡のような力となって、手助けしてくれる」

作中より引用

人は一歩ずつ変化していきながら生きていく、それは自分の力だけではなく沢山の人の思い出や繋がりの力によって支えられている。
そういったメッセージが込められているのを感じます。

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