毎日超短話616「キーケース」
むかし恋人にもらったキーケースと、フリーマーケットで目があった。いや、ただ同じブランドのものってだけなんだけど。懐かしくなってそれを手に取ると、カギが付いている。
え? これ売り物ですか?
と聞いてみる。店主はニコッと笑いながら、思い出にするためのカギです、と言った。そして、そのカギはすーっと消えて、胸の中に入っていった。
キーケースを戻して、軽く会釈をして、歩き出す。次の人の、思い出のために。
一年前の超短話↓
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日曜版を有料にしますと予告しましたが、前記事の音声配信を有料にしましたので、毎日超短話は引き続き無料公開に致します。
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