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神さまたちの詩歌集。

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降りてきた詩や短歌たち。
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記事一覧

5月の全短歌⑥《終》夏の手前

5月の全短歌⑥《終》夏の手前

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ソプラノとアルト、テナーとバスたちがケラケラ笑う四重奏の家

52
生きている副賞として差し上げますよく飛ぶ星となぐさめのチョコ

53
ビル街を選んで咲いたたんぽぽの後悔さえもアイデンティティ

54
出席に丸を囲んだカマキリの同窓会はすごくせつない

55
火曜日のサザエさんから告げられるとにかく明るく生きていこうと

56
人間のために生きてるわけじゃない若手の虫が翻す羽根

57

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5月の全短歌⑤ファミリーツリー

5月の全短歌⑤ファミリーツリー

41
安全なベルトがあるから楽しめるどれほど人生旋回しようと

42
片割れと再会の日が来たときの練習をする余りものたち

43
夜明け前報われなかった歌たちが誰かの星になろうとしている

44
どうしてもそれをしたいという吾子の瞼の水と尊厳を抱く

45
死にかけるところでなにか気がついた空を見て鳴く仰向けの虫

46
止まってるわけではなくて凪いでいる愛する人の庭先の風

47
わたくしのすべ

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5月の全短歌④歌声とシアター

5月の全短歌④歌声とシアター

31
カラコンをしているからと嘘をつく赤い目からは小川の流れ

32
雨上がり虹を忘れた神様の代わりに飛んだ忘れ物たち

33
夢中という言葉を辞書で引いたならおまえの顔が載っている朝

34
窓の外シーラカンスが泳いでるどれほど深い愛なのかしら

35
死ぬことが100%決まってる可愛くたって足りなくたって

36
ゆっくりと離れてしまった思い出を再上映する瞼のシアター

37
雨粒のどれか一つ

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5月の全短歌③あーぷん

5月の全短歌③あーぷん

21
信号がもうすぐ青に変わるからそれまでわたし夕陽に染まる

22
プログラムされた心が誤作動を呼んでる君の太陽フレア

23
心には心以外のものがいて、ここはわたし、と場所取りテープが

24
ほんとうのふるさとからの便りだろう風の香りに母の面影

25
あーぷんはあーぷんとしか言わなくてなのにぜんぶをわかってくれる

26
境目を超えてないから入ってと37.4℃の嘘を

27
朝日より先に起

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5月の全短歌②五月の風

5月の全短歌②五月の風

11
海になる予定の雲が空にあり優しくされるたびに広がる

12
傷跡の残るハートが旅に出るポラリスだけを羅針盤にして

13
道草を食べていたので遅刻した草食系が平和を築く

14
愛してる以下の言葉を摘み取って花束にした毎日がある

15
両方の指じゃ足りないこんなにもあふれる好きを数えてる夜

16
舞い上がるだけでよかった花びらが落ちていくとき恋を報せる

17
本当は窓を割りたい葉のため

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【連作短歌】憧れ

【連作短歌】憧れ

連作で作ってみた超個人的な憧れの5+1首を。

チャンスしかやる気の出ない新庄のようになりたい少年の夏 

野球少年だったんですけど、自分のことを天才だと思ってました。小学生までは。現在日本ハムファイターズの監督の新庄剛志に憧れてましたね。あんなふうに奇想天外なプレーをしてやろうって思いながら。今も憧れていますが、今では、ああはなれないし、自分とは違うタイプだと思っています。でも、やっぱり惹かれて

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5月の全短歌①リトルジャーニー

5月の全短歌①リトルジャーニー

1
しあわせがあふれてしまって淋しさが旅に出てる日少し淋しい

2
乗り換えをしたはずなのに行き先はふるさとまでのリトルジャーニー

3
俺の中モンシロチョウが棲んでいておまえでいけと粉を振りまく

4
君にしか見えない地図が埋まっててどうやらぼくは照らす係だ

5
もしかして違う世界があるかもと手をかけるドアとりあえずノック

6
この腕は羽根なんだよというように風を切り裂きベビーカーが浮く

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4月の全短歌⑤《終》ボンジョルノプリンチペッサ

4月の全短歌⑤《終》ボンジョルノプリンチペッサ

41
好きじゃないわけを並べて泣くほどの恋をしているあなたを見てる

42
雲間からこぼれる青がほらねって出口はあるよとささやいている

43
ふわふわの羽毛がひとつ取れるごとわたしの中の夕陽が落ちる

44
今日君が「アンパンマン」と言ったから愛と勇気が友だちになる

45
からっぽの心に水をやるように君の涙がわたしを潤す

46
何にでもなれるわけではないけれど一秒あれば幸せになる

47

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4月の全短歌④一億超の

4月の全短歌④一億超の

31
脳内の総再生数一億超終わることない思春期がある

32
思い出を一枚一枚スクショして君に手渡す秘密の答え

33
脈なしの恋でも拍を打っている等間隔を装いながら

34
背中とか腕とか手にはないけれどどこでもいける羽根があるから

35
夕方に目覚めた猫と目が合っておまえは帰れとビームを放つ

36
あしたまた会うために言うさよならの軽さで心が空をゆく

37
この海の広さは知らなくてもいい

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【書籍化】毎日超短話(歌)2023 amazon/楽天ブックス

【書籍化】毎日超短話(歌)2023 amazon/楽天ブックス

2023年に書いた「毎日超短話」ほぼ全話、そして2023年の短歌の中から71首を、一冊にまとめました。

タイトルは「毎日超短話(歌)2023 」。
全272ページ。

※画像は見本版のため、実際の色合い、紙質などと異なります🙇

簡易的な作りのため、背表紙は入れられませんでした。自分でラベルしてもいいかも。

4月から3月へと流れていく構成。
文字はちょっと小さめ。
歌詞カードのようなイメージ

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【短歌】注目を集めた7選その2

【短歌】注目を集めた7選その2

各所で注目頂けた短歌を7選、紹介します。

あこがれの雪になれずに耳もとで泣いてるみぞれの温かさすき

コトバディアへの投稿作品、テーマ「あこがれ」の一首。Xスペースにおいて、丸山永司さんの「短歌と歌の日」に取り上げて頂きました。

みぞれが雪になれないのは、雪より温かいからという思いです。

手に取らず廻る帆立を眺めれば母が隣で笑う気がする

ラジオ石巻「たんたか短歌」への投稿作品。テーマ「帆」

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4月の全短歌③丸くする人

4月の全短歌③丸くする人

21
映えるのに疲れたスマホ留守にしてさあ目を閉じて世界を描け

22
もしもしと電話の真似をする君と話してるのは神様か母

23
いつまでも可視化されない傷があり風が撫でてるときだけ気付く

24
「おかえり」と迎えてくれる子のための花火のような「ただいま」がある

25
悲しみよ急いでおいで今やっと涙腺のフタ外したところ

26
花びらが前髪に降り色めいた彼女と春がステップを踏む

27
西日

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4月の全短歌②桜の教室

4月の全短歌②桜の教室

11
一回も話すことなくさよならをする人もいる桜の教室

12
花の名は覚えないけど君の名は忘れることなく庭に咲いてる

13
公園の土管に隠れてキスしたい桜が雨に飛ばされてる日

14
再会の時のくるのを馳せている激流をゆくお魚の群れ

15
ほんとうは聞いてなくても「そうだね」と答えてくれるそれもまた愛

16
ああそうか、今日は今日しかなかったとさよならをする声で気がつく

17
強運の持ち

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3月の全短歌⑧《終》これから君は

3月の全短歌⑧《終》これから君は

71
失恋をした直後とかだったはず忘れな草と名づけた人は

72
4番手あたりの惜しいわたしにも表彰台は用意されてる

73
たぶんもう会わないけれどすれ違うことはあるかもあったのかも

74
新米がお釜の中で立っていてよそう茶碗でお辞儀をしている

75
性別はわからないけどあの二匹たぶんつがいで旅をしている

76
そよ風が生まれた日に立ち会ったつくしが春の足るを知る

77
笹舟に散った花び

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