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vol.1【映画】トラウマ映画 震える舌

・概要

5歳の少女が破傷風に感染しその闘病の日々をホラーテイストに描いた1980年公開の作品。

今回紹介するのは、「震える舌」と言う作品です。

監督は「砂の器」や「八つ墓村」で知られる野村芳太郎さん。

野村芳太郎監督はサスペンスからコメディ、ホラー、メロドラマ、時代劇とどんな作品でも手がけられるタイプの監督です。表面的にはエンタメ色の強い作品が多いですが、根底に何か熱い人間讃歌のようなモノを感じさせてくれるのが野村芳太郎監督作品の魅力だと思います。

ちなみに製作の角川映画について少し解説すると、
1976年より角川書店が自社発行の書籍を原作に製作した映画の事を指します。
なぜ角川映画と名前が付くまでに至ったかというと、ヒット作が沢山あったことは言うまでもありませんが、今でこそ当たり前になった「実写化」というメディアミックスの前身例にあたるからです。
それまでも文芸作品を原作に作られた映画は日本にも沢山ありましたが、書籍と映画の双方を宣伝する事が出来て、尚且つ広告宣伝費も抑えられるという、一石二鳥の戦略をはじめて行ったというわけです。

あらすじ

舞台は千葉県のある団地、そこに住む3人家族、
父の昭、母の邦江、そして二人の娘にあたる幼稚園児の昌子ちゃん(5歳)。
この昌子ちゃんがこの映画の主人公です。

ある日、昌子ちゃんは団地の前に流れるドブ川で遊んでいましたが、指先に小さな怪我をしてしまいます。

それが悲劇の始まりでした。

それを境に、昌子ちゃんは普通に歩けなくなったり、歩き方口が開かないなどの不可解な現象に襲われます。父親の昭はそんな不可解な行動を取る昌子を叱りつけ、一方 母親の邦江はそんな厳しい父親のしつけによるストレス性の病気だと疑い、二人は小競り合いをはじめてしまいます。

ここでこの夫婦の関係性の悪さも徐々に明るみになってきます。

その夜が明けても、昌子ちゃんの不可解な行動は続きます。それどころか、ある夜、激しい発作に襲われ、
その苦しみから舌を噛んでしまい流血騒ぎになってしまいます。

それから両親は昌子ちゃんを連れて色んな病院に駆け込みますが、原因がわからず、病院をたらい回しにされてしまいます。

しかし、ある病院の小児科医が「破傷風」という感染症と診断します。


破傷風とは、土などで繁殖する菌で、感染すると体の中で菌が増殖し、神経に到達して全身の筋肉を麻痺させたり、痙攣を引き起こさせたりする感染症です。 

更に腹筋や背筋も一緒に痙攣する為、後弓反張と言ってまるでフィギュアスケートのイナバウアーのような姿勢になって、背骨を折ってしまうケースもある恐ろしい感染症です。

この破傷風の症状は、エクソシストや呪怨のブリッジを彷彿とさせる。


7日間の血清治療で治ると医師から告げられますが、それも、その間、背骨を折る程の強い発作に耐え切れるかどうかの話です。

医師は昌子ちゃんは音や光で発作を誘発させない為に、徹底的な閉鎖環境を設けますが、病院で騒ぐ子供たちが原因で発作を起こしたり、寝巻きを変えようとした時に発作が起きたり、昌子ちゃんは何度も何度も発作に襲われます。

昌子ちゃんが発作に苦しむシーンがとにかく痛々しくて辛い。

娘のそんな姿に疲弊し始める両親、それをキッカケにこの物語は思わぬ展開を迎えます。

実は初めて発作を起こした時、父の昭は昌子ちゃんが舌を噛み切らないように、昌子ちゃんに自分の指を噛ませました。


勘がいい人ならピンと来たかもしれません。
そうです。発作に苦しむ娘を横目に、両親は自分達も破傷風に感染しているかもしれないという恐怖に苦しみ始めるのです。

破傷風がヒト同士で感染しない事は、医師によって映画序盤に語られていますが、この展開を経て、この物語は、新たなテーマを孕みはじめます。

物語はもう少し続きますが、昌子ちゃんが助かるのか、またこの家族がどんな結末を迎えるのか。
それは皆様の目で確かめて頂きたいと思います。

まとめ


今回紹介した作品「震える舌」は、
ホラーやスプラッター映画の手法で恐怖を演出しつつ、家族とは何か、人間の弱さや愚かさ、またそれでも生きたいと願う人間の強さや美しさを描いた名作です。

普通の映画に満足出来なくなった映画ジャンキー達に是非観てほしいと思います。

それではまた。

*「震える舌」は現在、U-NEXT hulu FODで視聴可能。

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