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新しき映像を古きモニターに映すなかれ ◆ 水曜日の湯葉127[5/8-14]

5月8日 水

新作短編のプロット提出締切だが何も思いつかないので「小説家は普段どのようにネタを考えているか 〜事例とともに学ぶ〜」という解説記事を書いたら勢いでネタができた。人間は言語で思考するという話があるが、僕は解説で思考しているのだと思う。そういえば受験生のころ、数学が解けないので「その問題を友達に解説する」という想定の文章を書いたら普通に解けたことがある。

Apple の新型 iPad が発表された。それにともなってCM上の表現が話題になった。楽器や画材を大量に並べてプレス機で潰すというもので、かなり多くの人が「リスペクトを欠く」に嫌悪感を示していた。iPad が旧来のアナログな表現手段を縮小させていくことは確実なので、表面だけ「我々は画材や楽器にもリスペクトを持ってますよ、仲良く共存しましょう!」とか言い出すのも不誠実な気がするが。

これは「肉屋の看板問題」の系統だと思う。肉屋の看板ではよく食われる側の豚が笑顔になっており、なんなら包丁を持ってエプロンを着てることさえある。絵的には可愛らしいが行為としてはだいぶグロテスクだ。それよりは豚が屠殺される動画を店頭で流しているほうが、絵的にはグロいが行為としては潔い、という見方もできる。

とはいえ「飯を食ったら排泄するのが当然の事実だ。だから排泄をCMで流すべきだ」とはさすがに僕も思わない。世の中には生活に不可欠だが見せるべきではない現実が色々ある。性行為は見せてはいけないが生まれた子供は見せてよい。なんとなくそういうことが決まっている。誰が決めたんだろう。

(と思ったら数日後に Apple が謝罪を発表した。Apple が謝罪することあるんだとちょっと驚いた。Apple って明らかな間違いを犯しても次世代機でしれっと「さらに良くなりました」とか言って修正するイメージだった)


5月9日 木

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