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バーチャルYouTuberを特許情報で俯瞰する

はじめに


(この記事は、個人の意見により作成されたものです。)

みなさんは、「Vtuber(V(バーチャル)Youtuber:ブイチューバー)」という言葉はご存知でしょうか?
そうです。みんな大好きですよね?(偏見)
私もよくVtuberのゲームの実況をYoutubeで見ています。

簡単にVtuberの実施形態の一つを説明すると、Youtube上で2次元のキャラクターがお喋りしながら、ゲーム配信を行うというものです。(関係者から怒られそうな説明ですが、、)

もう3年近く、見ていますがとにかく、多くのVtuberが存在し、それぞれ個性があるため、奥が深い。見たことがない人がいましたら、ちょっとこっちに来ませんか?(沼)


Vtuberとは?

さて定義として、Vtuberとはどういうものなのか?というと
wikipediaでは

バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー、英: Virtual YouTuber)は、2016年12月に活動を開始したキズナアイがYouTuber活動を行う際に自身を称した事に始まる語である

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/バーチャルYouTuber

と書かれています。


図1:「いらすとや」さんで適切な図を発見。


こんなイメージです(図1)。また、同引用では、以下のようなことが書かれています。

バーチャルYouTuberの大きな特徴として、人間の全身の動きを読み取るモーションキャプチャの利用をあげることができる。モーションキャプチャは日本においてエンターテイメント分野では3Dモーションの作成を始めとして1990年代からゲーム開発等において用いられてきたものであるが、この技術を利用することで、リアルタイムでキャラクターにリアクションを取らせ、生放送やゲーム実況を行わせることを可能にしている。同じ2次元、もしくは3次元のキャラクターであっても、アニメやゲームと異なり直接に生放送での視聴者とのやりとりが可能なことなどから、人気が高まったと言える。

https://ja.wikipedia.org/wiki/バーチャルYouTuber

今回はこのVtuberの技術・市場動向が気になったので、簡単に調査・分析してみます。


分析

公開情報

・話題性
まずは、Vtuberが流行り始めた時期を確認します。

図2

キズナアイがデビューした2017年くらいから急激に関心が高まっている様子でした(図2)。

・市場性
市場本などの情報はあまりなく(Global Informationなどで検索をしましたが、)、これから増えていくのかなという印象でした。

市場規模ではありませんが、株式会社ユーザーローカル様が過去に調査を行なっておりました。下図ではおおよそ1ヶ月ごとではありますが、おおよそ20%の成長率で推移しています(参考1)。

参考1:プレリリース バーチャルYouTuberの市場成長に関する分析調査結果を発表から引用(http://www.userlocal.jp/news/20180806vc/)

フェルミ推定は慣れてないので、適当ですが、ここからファン数のCAGRを20%と考えた時に、単純計算ですが、2022年には25億人???(ファンになる対象が複数いることも考えられます。)などと考えると、ファン数が多い分、大きな市場になる可能性が多いかもしれません。

また、下記リンクも参考になるかもしれません。Vtuberのトップ層は、「バーチャルセレブリティ」と言われています。


また、技術としてVtuberを支える「モーションキャプチャ」の市場性は、

米国市場は急速に回復しています。2021年5月4日のリリースで、米国経済分析局と米国国勢調査局は、2021年3月の米国国際貿易の回復について言及しています。国内の輸出は、2021年2月に124億ドル増加し、2,000億ドルに達しました。増加傾向、輸入は2,745億ドルに達し、2021年2月には164億ドル増加しました。しかし、COVID19は依然として世界中の経済を悩ませているため、米国の前年比(前年比)の平均輸出は2020年3月から70億ドル減少しました。 2021年3月まで、輸入は同時に207億ドル増加しました。これは、市場がどのように回復しようとしているのかを明確に示しており、これはヘルスケア/ ICT /化学産業に直接的な影響を及ぼし、モーションキャプチャカメラ市場製品に対する大きな需要を生み出します。

Motion Capture Camera Market 2022 Status and Outlook, Industry Growth Rate, Opportunities and Challenges to 2031 | Says Kenneth Research

米国市場だけですが、かなり市場は大きそうです。

最後にこの業界のプレイヤー(進出企業)はどのようなものかを調べてみました。
抽出した結果、以下の企業が挙げれました。(以下略称)

・GREE
・コロプラ
・REALITY
・カスタムキャスト
・バルス
・カバー
・ANYCOLOR
・VShojo(海外)

現在も企業数は増えており、成長市場なことが伺えました。

特許情報

次に特許情報を見てみました。「モーションキャプチャ」として
検索すると、ファミリー数が多くなり、分析コストがかかるので、今回は明細書中に「Vtuber」が記載されているものを抽出しました。計26ファミリーが抽出でき、これを母集団としました。

・出願企業

図3:出願企業ランキング

図3より、コロプラやGREE等が関係特許を出しているのは予想通りですが、調べきれなかった海外企業であるBAIDUやテンセントが抽出されたのは意外でした。
また、SONYも同様に予想していませんでした。
SONYは最近2021年に、Vtuberのプロジェクトを立ち上げている様子です。

SONYはモーションキャプチャ技術を保有していることも公開情報から伺えるので、業界的に強い企業になるかもしれません。


・抄録データのキーワードの抽出

抄録中のキーワードの頻出数をもとにランキングを行いました。
wordとエクセルを活用し、文章の分かち書き、カウントを行えるため簡単に下図(図4)のようなものが作成できます。(参考

図4 単語の頻出ランキング

気になったキーワードは「analysis」です。

記載されている、バンダイナムコエンターテインメントの特許を見てみると、

請求項1
コンピュータシステムを、
ゲームプレイのプレイ動画についての実況を行う実況キャラクタの動画と、前記プレイ動画とを合わせた実況動画を生成する実況動画生成手段、
前記ゲームプレイのプレイ状況を分析する分析手段、
前記分析手段の分析結果に基づいて、前記実況キャラクタを制御する実況キャラクタ制御手段、
として機能させるためのプログラム。

「ゲーム実況を行いつつ、プレイ状況を分析することで、Vtuberのアバターを制御する」のようなことが書かれています。
課題背景に関しては、とても細かく、感心しました。

本発明は、コンピュータに動画を生成する機能を実現させるためのプログラム等に関する。
近年、ゲームプレイのプレイ動画を編集し、ユーザが別音声(例えば、実況や解説、その時々の仲間とのチャットの音声)などを加えて作成した実況動画を、動画配信サイトを利用して配信するユーザ、いわゆる「ユーチューバー(YouTuber)」が知られるようになった。また、それに関する技術も知られるところである(例えば、特許文献1を参照)。近年では、ユーチューバーに代わって「ブイチューバー(Vtuber)」と言われる架空のキャラクタが実況をするように見せる形態も知られるようになった。以降、そうした架空のキャラクタを「実況キャラクタ」と言う。

さて、一般的に、ユーチューバーが実況動画を配信するには、プレイ動画の用意、動画編集、実況音声(多くはユーチューバーが話すユーザ音声)の追加、配信サイトへのアップロード、と言う段階を経ることとなる。更に実況動画中に実況キャラクタを登場させるには、あたかも実況キャラクタが、実況アナウンサーやスポーツ番組のパーソナリティのごとく振る舞う動作を設定して実況キャラクタの動画を生成し、これをプレイ動画に合成する段階が必要になる。この実況キャラクタの動作設定と、実況キャラクタの動画の用意は、それなりの機材と時間を要するため、ブイチューバーとして活動してみたくとも始められないユーザが多くいた。
また、実況キャラクタの動作設定と、実況キャラクタの動画の用意は、実況動画配信の形式にも制限を与えていた。具体的には、ユーチューバー自身がプレーヤとしてプレイしながらリアルタイムに実況するライブ形式の実況動画配信の場合、ユーチューバーはプレイ操作と、実況や解説と、実況キャラクタの操作との、1人3役を同時にこなさなければならない。そのため、一時たりともプレイ操作を止められないジャンルのゲーム(例えば、アクションゲームやシューティングゲーム、フライトシミュレータ、など)を、実況キャラクタを用いたライブ形式で配信する行為を実現することは難しかった。
本発明は、実況キャラクタを用いた動画配信に係るユーザを補助するための新たな技術の提供を課題として考案されたものである。

Vtuberの補助を行うツールは新たなVtuberの参入を促進する点で、業界貢献をするでしょう。
今回の母集団の中には、補助ツールとして他にも、
・発話内容のテキスト化システム
・ユーザーがリズムを掴む支援をするシステム

が挙げられます。


・特許分類(IPC)
特許分類の内訳をランキングにしました。
図5より、上記Vtuberの定義とマッチしているように見えます。特に、A63F 13/428は、「Vtuberのアバターの表示、同期に関する演算システム」として、イメージ通りの分類です。
また、母集団を読み込むと、「映像配信装置」、「ライブ放送管理プラットフォーム」の特許があることを確認できました。

図5:IPCランキング

特許情報について簡単にまとめると、今回の母集団では、
・(3Dを含む)Vtuberのアバターの表示、同期に関するシステム
 (映像加工・演算制御)
・映像配信装置
・ライブ放送管理プラットフォーム
・Vtuberを演じる、つまりユーザーの補助・支援システム

に関する特許が抽出できました。

求人情報

5/14(土)時点の求人情報 (doda)を抽出しました(図6)。(Vtuber記載があり、技術職であるものを抽出)
目に入るのは「クラスター株式会社」、特許情報や公開情報で見えていませんでしたが、人材を多く募集している様子です。

図6:「Vtuber」記載求人データ一覧

クラスターでは、Vtuberの3Dライブ支援の開発を事業として行なっています。

現在、バズワードであり、「Meta(Facebook)」も本格参入しているメタバースですが、ここでも勿論関わってきます。

Youtubeでの実況配信では、キャラクターとファンは同次元に存在せず、情報の双方向性はありませんが、「cluster」では、ライブで必要な臨場感とVtuberに反応を見てもらう(レスポンス)を返せることができそうです。

現在では、このようなプラットフォームを使い、ライブ・エンタメ産業に参入していることがわかりました。コロナ下だからこそ、今後需要が見込める事業ではないでしょうか?
ちなみに、メタバースではない、ライブ映像を観戦するチケット価格では、リアルのライブと変わらない価格帯となっています(図7)。


参考:https://vtuberfesjapan.jp

今回はここまで。


まとめ

ここまでの分析から、
・Vtuber(アバター)の映像技術の進化
・Vtuberへの技術的な支援が加速
・市場の拡大・ライブ・エンタメ産業など他産業への進出(教育系Vtuberも確認しました。)

が確認できました。

また、Vtuber関連のベンチャーが複数立ち上がっていることからも、市場注目度は高いでしょう。

最新技術の探索のため、特許発明者について調査したり、モーションキャプチャまで調査範囲を広げたかったですが、時間の関係上ここまでとなりました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

以上


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