見出し画像

完全犯罪

先日、誕生日を迎え、栄えある40代に突入した。
たくさんの誕生日のお祝い(ダイレクト)メールに混ざって、それは来ていた。

免許更新のお知らせだ。 


夫からは詐欺的ゴールド免許と言われているが、今回も無事にゴールド免許。

駐車場であちこちぶつけてたって、違反や事故はないんだもの、ピカピカゴールドである。

もちろん詐欺ではない。

正真正銘のゴールド免許。



写真が詐欺だってわけでもない。

5年前は若かったのだから。





そう、免許更新というと、あの一大イベントが待っている。


ご存知、写真の一発撮り。

今後5年使う写真を、一発撮り。

3回言うが、一発撮り。



普段、SNSにアップする1枚のために十何枚も撮って、シミとシワをなくして色白にして、加工でメイクして、やっと世に出せる写真ができる私にとって、無加工一発撮りは恐ろしい難題。

小心者ゆえ、もう一度撮らせて、なんて口が裂けても言えない。


息子や娘のマイナンバーカードは自宅で撮影した写真でできた。

免許証でもできるでしょ!?と、意気揚々と調べた。



自撮りは可能、もちろん加工はNG。
まぁたしかに、加工はダメよね…。



証明写真用アプリをダウンロードしてみた。
だけどやはり加工はできない。

いやだから、ダメなのよね、加工は。



ネットで調べる。
「免許証 写真 加工」

…。
諦める。加工は。



でも、家でなら何枚も撮ってもいいじゃない?ということで、家で撮る。



まず、被写体である私の入念な準備が必要。

服は明るく写るように白い服にして、髪型もいつもよりきちんと固めて。
(以前の免許証、アホ毛とかピンが変に写ってたのが残念な免許証だった。)

ほうれい線が上がるように後ろでキュッと結んでシワ隠し。

メイクを念入りに。
シミを丁寧に消して、アイラインもちょっと太めに。
マスカラもバッチリ、口紅も塗り塗り。

撮影は明るい蛍光灯のある洗面所近くの白い壁際で。



証明写真アプリを使ってパシャリ。
ほらできた! 


そんなわけはない。
何枚も撮り直した。
パシャリパシャリパシャリパシャリ…。


真正面から撮るとなんでこんな顔になるのか。
あ、こういう顔なのか。


笑わないとオバサンだな。
あ、オバサンなのか。


自分に何度もツッコミながら、ようやっと納得の(というか、諦めがついた)1枚ができた。

これなら5年間持たなくてはいけない免許証の写真にふさわしい!(我慢できる!)



自宅プリンターで印刷し、そのまま近くの区役所にある免許センターの出張所へ向かった。



「写真、これ使えますか?」
「はい、確認しますね」

免許センターのおじさんに、謎にはにかみながら写真を提出。


ところが、何かおかしい。


免許センターのおじさん、私の写真をくるくる回して首を傾げる。


雲行きが怪しい。


犯行がバレそうな犯人の心境ってこんな感じじゃなかろうか。


落ち着いて言い訳を考える。



か、加工してないですけど!!!
ちょ、ちょっと今日はメイクが濃いだけで!!!




全然落ち着けない。



「この写真いつ撮りました?」
「さっきです」
「ですよね、服が同じですしね」



まるで事情聴取のよう。



心臓はバクバク。



まさか…。
まさかのNG!?




「どこで印刷しました?」
「家のプリンターです」
「余白のせいかな、サイズが小さいんです」



なんてこった!



写真の印刷、ちゃちゃっといつもの設定で印刷したら、余白が設定してあったらしい。

写真のサイズがどうにもあわなかったということらしい。



絶望。

あぁ、一発撮り。
あぁ、二重アゴの恐怖。



「地下にあるコンビニで余白なしで印刷し直してこれますか?」


お、おじさん、神!?



「できます!印刷してきます!」

「あと5分でビデオ教習が始まるから、すぐに、余白なしで印刷してきてください。」

「今すぐ行ってきます!」




食い気味に宣言し、向かいのエレベーターに走り、エスカレーターの方が早かったなと思いながらエレベーターを待ち、久々のコンビニ用プリントアプリに戸惑いながらも私的超特急で印刷を終えた。



5分はちょいと間に合わなかった。

けど、平日の14時頃の免許センター出張所には私の他にいなくて、教習の開始を待ってくれた。


色んな意味で汗だくになりながらも無事に、写真を提出、恐ろしい一発撮りを回避できたのだった。





「あの、免許証の受け取りに来ました」
「あー、はい、お待ちください」


息子と昨日の夕方、できあがった免許証を受け取りに行った。



新しい免許証を持ってきたおじさん、私の顔と写真を何度か見比べる。



ドキドキ。




いや、ここでダメとかはないはず。



あ。

今日は薄化粧だった!



アイラインひいてなくて、マスカラどころかビューラーもあててない。

朝塗った口紅は落ちてるよね完全に。




犯行が…バレる!?




「はい、こちらです」
「あ、ありがとうございます」




…よかった、完全犯罪。




これで、次の5年後まで、免許証の写真で悩まなくてすむ。




さようなら、残念な免許証。



こんにちは、完全犯罪の免許証。





ちなみに、犯罪は犯していない(化粧はOKである)、はず。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?