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オールアウトするべきか?

今日は、表題に絡めて『工房流トレーニング』の考え方・スタンスについて、述べていきます。

現場でトレーニング指導をしていると、WTルームの様子を観にきた監督やコーチより、時折、「もっと追い込まなくていいんですか?」と問われることがあったり、あるいは、私を飛び越えて「もっと限界まで追い込め」と監督やコーチが選手に向かって直接檄を飛ばす場面が見られます。

先日も工房において、ある選手との話題になったことがあり、また過去には他のジムも並行して通っていた選手から、そこのジムではもっと追い込むような雰囲気づくりや声がけにより、限界を超えさせてくれるので、工房でも(その選手に対しては)そのようにして欲しいと言われたことがありました。

さて、このような限界まで追い込む(オールアウトする)という考え方に対する私の(工房の)持論を先に言うと、基本的には「No」その必要はないというスタンスです。

もっとも、オールアウトすること自体を否定するわけではなく、競技によりアプローチの方法は違いますし、時期によっては私も採用することがあります。
そもそもオールアウトの定義が難しくはありますが、ここでのイメージは、ベンチプレスやスクワットで潰れてから、フォーストレップス法を多用して限界まで反復させることであったり、トレーニングが終わった後に仰向けになりしばらく立てなくなる程の状態までさせることを指しています。

繰り返しになりますが、工房流トレーニングにおいても、先だっての投稿で紹介したボート競技のトレーニングでは、その要素が色濃くあります。
また、日本代表チームの合宿での代名詞ともなった「Hard Work」が求められるラグビーのトレーニングにおいては、必要不可欠な要素です。
特にシーズンオフ期間の鍛錬期には、“工房名物 100本リフト”に代表されるようなハイボリュームなトレーニングをプログラムの柱とすることがあります。具体的には、ベンチプレスやスクワットで総挙上回数が100回を超えるまでセットを重ね、それにより胸や腕、脚が乳酸でパンパンになる程まで「追い込む」アプローチです。
そのようなアプローチ法を用いながらも、トレーニングにおける基本的なスタンスは、限界までやり切る必要はないと思っています。

そもそも、スポーツ選手におけるウェイト・トレーニングとはどのようにあるべきでしょうか?
端的な言葉で表現すると
「動ける身体をつくること」です。
強く,速く,柔らかく,しなやかなに動ける身体をつくる。
それは、フィジカル要素が高い競技も含めて、ほとんどの競技に求められる共通の課題(テーマ)ではないかと思います。

一方、動けなくなるほど限界まで追い込むようなトレーニングは、特に最終盤においては力みが生まれ、フォームの乱れも起こり、それにより当然怪我のリスクも高まります。
また、選手はウェイト・トレーニングが主ではなく、練習を構成する要素の一部であるということを忘れてはいけません。
限界まで追い込み、筋疲労や筋ダメージを翌日以降にも相当残した状態で良い練習ができるでしょうか。
限界を超えていくなら、競技そのものの練習で何らかの形で超えていくべきだと思います。
もちろん、競技の練習ではそれができない為にトレーニングで体力的なキャパシティを拡大しておくという考え方も分かります。

つまるところ、トレーニング指導者によって、色々な考え方があるということになってしまうのですが、限界まで追い込んで悦に入っているような光景を見かけると、それって指導者の自己満になってないかなぁ、練習とのバランスやリカバリー、競技特性のことなど総合的に考えているのかなぁ、と疑問を感じてしまいます。

ここまで書いて、私が指導した選手に感想を聞いたら「いやいや、鬼頭さんのトレーニング、十分キツいですけど」というツッコミが入ることは、予想でき、また否定はしません。
ただし、基本的なスタンスとしては上記の通りなのです。
十分にキツいと思われているトレーニングにおいても、私の中では「良い加減」を狙い、考えてプログラムを作成しているのです。

さて、今日は少しだけ専門寄りの話題を取り上げてみました。
抽象的ではありますが、工房流トレーニングの考え方の一端を知ってもらえたら幸いです。

JPFストレングス工房
鬼頭 祐介

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