(随筆) 内村鑑三「戦争を好む理由」

生命を惜しまざるをもって勇気なりと称す、しかも人類の多数は生命を愛せざる者なり。人世に絶望して常に死を思う、ゆえに他人を殺して自らも死せんと欲す。これこの世にありて戦争が常に多数の賛同を博するゆえんなり。もし生命の真価にして知られんか、人類は直ちに戦争を廃するにいたるべし。絶望家の世に多数を占むる間は開戦の声は常に高かるべし。

「内村鑑三所感集」(岩波文庫) 95頁


・明治三十六年十一月