(詩) 「流動」





断崖を越えた道の先で
薄い灯が 形を定めずに
揺れ動いていた

強い潮風が 纏う衣を濡らして
過ぎ去ってゆく
いや
腐蝕をもはや厭わなかった

透明の強度を
憎みさえして
脱ぎ捨てた衣を海に浸した

纏うものが
翼であってはならない
潮風は これまでと変わらず
ちらつくように執拗に吹き
かえって彼の体を
清めるだろう

言葉はもはや 錨にならず
朽ちかけた舟の軋りが
岸辺に反響していた

一羽の鳥が背を屈めて
沈む影を覗き込んでいる

ただ 空ではなく
地上を舞うためだけの
翼がほしい

何時か あなたの
青い瞳の中に
辿り着き
飛び込んでゆく
その日のために