「自作トランプゲーム」を作った者たちへ捧げる「トリックテイキング」のすゝめ
まずはじめに
もうはっきり申し上げます。
「自作トランプゲーム」って書いてるやつ、
山札から引いてあーだこーだするタイプ多くね?
いや、別にそういう引き運が試されるものが嫌いなわけじゃありません。むしろそれはプッシュユアラック(早い話、チキンレースとかブラックジャックの21を超えないよう近づける感覚のアレ)なゲームとしてアリだと思います。
ただ、僕が思うことがあって…。
「 も っ た い な さ す ぎ る ぞ ! ! ! ! ! 」
と思うんです。自分オリジナルのゲームを作りたいのは確か。だけど、トランプゲームは4桁級の遊び方がある、スーパーアナログゲームなのです。
デザインも10人10色。もっと言えば千人千色ですけども。
日本で遊んでいると残念なことにこの言葉を説明しても伝わらないのがほとんどです。
「トリックテイキングゲーム」
これ。知ってる?知らない?え?あぁ、そう。じゃあ、このゲームの代表例を挙げましょう。
「ハーツ」って知ってる?あの昔のパソコンの「Windows XP」にあったやつ。
「ナポレオン」って知ってる?そうそう、副官指定して10とかアルファベットの札を何枚取れるか競うやつ。
「ページワン」って知ってる?みんなで順番に出していって、同じマークが無いと山から引き続けるやつ。
「それだよ!!!!!」
そうなの!これがトリックテイキングなの!どれも知らなかったらごめんだけど…。これなの!これ!これがいわゆるトリックテイキングなの!
…と、いうことで日本人がトランプで遊ぶときにめっちゃ残念だと思っていること第1位に「日本人トリックテイキング知らんがち」を勝手に上げている東 洋星(あずま・ようせい)です。で、ですよ。ここからが本題。
トリックテイキング is 何?
ですよね。さっきからやかましいわ、と思っている方はここから先で分かります。Take it Easyってやつです。
早い話、「カードをみんなで出して強さ比べしようぜ」って言うゲームです。で、これの何が面白いっていうと、
*「ゲームによって勝ち負けに対する評価が変わる」
*「ほぼすべてのゲームはトランプ1つで完結する」(得点記録は別)
*「ほぼすべてのゲームで通用する黄金律がある」
の3つからなるんですよ。
言ってしまえばこれから説明することを全部覚えてしまえば、約4桁のゲームのすべてを遊ぶ前準備が出来たと言っても過言ではないんです。これ凄くない?
と、いうことでここからトリックテイキングについてつらつらと書き連ねていきます。トランプが手元にあるとイメージしやすいかも。ご用意ください。
トリックテイキングの黄金律(=共通ルール)
①トリック
げ、専門用語かよ!と思ったそこのあなた。大丈夫です。今から説明していきますけど、なんとなく「あ、そういうものなんだ~」で終わってOKです。難しくないです。どれも中身。なんか一瞬怪しいアジア圏の人みたいになったな。
トリックというのは、「みんながカードを出して強さ比べをすること」を言います。トリックテイキングゲームでは大半の場合、親から順番にカードを出していきます。分かりやすく言うと「後出しジャンケンが出来る」ということです。
仮に、大きい数字が勝ち!というゲームがあったとします。…あ、数字の強さはゲームによって変わりますが、オーソドックスなのは「A>K>Q>J>10>9>…>3>2」です。Aだけテッペンにあることに気を付けてくださいね。Jokerは使いません。
4人に均等にカードを配ります。そしたらランダムに親(1番目の人)を決めて…その人がカードを出します。
カードを出すときは表向き。必ず1枚だけ出します。(複数枚出すものもありますが超ごくまれです。)
次の手番は時計回りに次の人。ここでのルールは「強い数字が勝ち!」なので、例えば最初の人が「7」を出したら、この手番の人は「8以上」を出せば勝てる見込みがあるわけです。
…を、最後の人まで順番にやっていきます。全員カードを出したらここでジャッジ。みんなのなかで一番強いカードを出した人を決めるわけです。
ここで勝った人が、勝利!となります。
トリックは「みんながカードを順番に出す→強さ比べをしてでかい数字の人が勝つ!」と覚えてください。
トリックテイキングゲームはこの「トリック」を何度も繰り返すことで成り立ちます。
…もうお気づきでしょうが、圧倒的にトリックテイキングゲームは「後攻が有利・先手が不利」です。だって後出しじゃんけんだもん。なので、勝った人が次のトリックの「親(=1番目)」になります。もちろん、場合によっては全く同じ人が親を務めることもあるでしょう。
②マストフォロー
マストフォローは「最初に出たカードと同じマークを出さないといけない」というルールです。
…え?
なんでそんなことすんの?って?
これもジャンケンに例えましょうか。
はい、じゃあジャンケンしますよ。
「最初はグー!」
これです。トリックテイキングにおけるマストフォローは、「ジャンケンの『最初はグー』と同じパワーの決まり文句」なのです。
最初の人が例えば「♠8」を出します。そうすると最初の人が「最初はスペード!」って言ったようなものになります。その瞬間からこのトリックは「スペードしか強さ比べに参加できませんよ!」という宣言がされたことになります。
ジャンケンにおいて、「最初はグー!」って言ってるときに「パー」出されてみてください。それも4人ジャンケンの時です。多分3人が口をそろえて「おいお前、それはねぇだろ!」ってツッコむと思います。
トリックテイキングも一緒です。「最初は♠!」って言われたら、次の人からも手札に♠があったら必ずそれを出す、というのがもう何百年も前からのお決まりなのです。たとえ途中で♠があるのに違うカードを出したとしても、手札を使い切るゲームがほとんどなので最後あたりで「おいお前、♠が無いって違うの出したのに、なんで♠出てくんだよ!」ってツッコまれます。イギリスとかアメリカとかでやったら、うっかりではない限りそこのテーブルからは破門'n'出禁でしょうね。それぐらい神聖なルールなのです。
じゃあ、本当に手札に同じマークが無いときってどうしてもありますよね。その場合は許されます。その時だけ、何でもいいのでカードを1枚出してね、って言われるんです。ない袖は振れない。ない札は出せない。
さっきも言った通り、「このトリックは○○だけで勝負!」と宣言されてるので負けるのは確定ですけど。
つまり、ここまでをまとめた例を言うと、
一番目が「♠Q」を出します→二番目は♠あるので「♠5」出します→三番目は♠ないので「♡K」出します→四番目は♠あるので「♠10」出しますのとき、
このトリックに勝つのは「一番目」です。一番目のプレイヤーが「♠」を出したので、この場は♠だけで勝負します。つまり、この時点で三番目の「♡K」は数字が大きいですが勝利できません。残った3枚の♠で一番大きいのが「♠Q」、という形です。
これはトリックで最初に出るカードによって決まるので、次のトリックでは最初に♡が出て、♡の勝負になる…ということです。とにかく、最初と同じものがあったら出して勝負しなさいよ、無かったら何でも出して降参しなさいよ、というのがマストフォローの黄金律です。
③切り札(=トランプ)
おや、なんかカッコイイ言葉が出てきましたね。
先ほど「違うマークだとトリックに負けてしまう」と言いましたが、このルールによって逆転勝ちできる可能性があります。(ゲームによっては無いものもあります。)
切り札とは、「特別にどんなカードよりも強い、と設定されたカード」を指します。例えば「切り札はクラブです!」といったら、どんなカードよりも♧が強くなります。言ってしまえばこう。
「♧のカード全部」>「その他大勢」
こう。
そう、♠Aすら敵わない存在になるのです。
同じマークが出せない時に、すかさず「♧」を出す!そうすると上の不等式によって♧の勝ち!…になるわけです。スゴイネー。
…なので、トリックの強弱って「数字より」「マーク」で見ることが多いです。まず、「切り札」>「最初に出たマーク(最初は○○)」>「それ以外」で強さ比べして、同じ強さのマークがあったら数字比べ…という感じです。
例外もあるので、とりあえずの型だけわかってくれればOKです。
トリックテイキングの目標(=得点のつけ方)
プレイヤーが「トリック」と称して勝負するくらいですから、それらには目標があるはずです。では、それは何によって決まるのでしょうか?
答えは点数です。といっても、点数には様々なパターンがあり、それらはある程度分類可能です。
①勝った回数が点数につながる
トリックで勝つと、出されたカードをすべて回収して、手札とは別に自分の前に伏せて束にして置くのが大抵です。この束の数、つまり勝利した回数が点数の基準になるものが多いです。例えば、1回勝つごとに1点とか。ちょっと難しいので言えば、4人で13回トリックします→3回目の勝利まではプラス点だけど、4回以上勝ってしまうとマイナス点になるとか。そういう感じです。
逆に1回勝つごとに「マイナス1点」なんてものもあるでしょう。そうするとみんな勝ちたがらなくなります。一気によけ始める。
「勝てばよかろうなのだ」とはいかないのがここにあるわけです。
手札が強すぎると困る場合があるのがトリックテイキングにしかない魅力だと思います。
②取ったカードが点数につながる
さっきも言った通り、トリックに勝つとすべてのカードを回収するといいました。あれ?その中身見ないの?と思う人もいるかもしれませんが、ゲームによっては見ます。それこそ「ハーツ」なんかはこのパターンです。
「ハーツ」というゲームはトリックに勝つとカードを回収しますが、取ってしまった「♡1枚につきマイナス1点」となります。しかも、「♠Q」はマイナス13点のおまけつき。ひゃぁあああ。
もちろん、何かしらを取っていたらプラス、というものもあります。プラスマイナスが混在するものもあります。トリック中に出たカードによって、自分の出すカードが変わるパターンですね。
③初めに目標を宣言した後、その通りできるかが得点につながる
「ナポレオン」はこの例です。初めに「10,J,Q,K,A」を仲間1人と合わせて何枚取れるかをみんなで宣言し合います。その後、最も高い数字を宣言した人が「本当にその枚数取れるかな?」に挑戦します。本当にその枚数取れたらポイントゲット!逆に、取れなかったら挑戦者以外がポイントゲット!(もしくは挑戦者がポイントを失う…)というものです。トリックテイキングの中でも、昔に作られたゲームはこの形式のものが多いです。また、カードごとに「評価点」が振られていることも多く、「カード全部で120点満点になるけど、何点取れると思う?」で競われる場合があります。結構あるんだよなぁこのパターン。リスクを負う代わりに、手札を見て「じゃあ切り札これな!」と設定できる権利が付くこともしばしば。
また、カードの評価値や枚数だけでなく、「勝利する回数」も予想することがあります。現在は1人だけが挑戦する形ですが、そうではなくて全員が一斉に「自分は○回丁度勝てる!」という宣言を取る形です。正解だったらポイントゲット!つまり「クイズ☆正解は十分後」。
基本的には上記の3パターンに分類されることでしょう。最も分かりやすいのはおそらく①の勝利回数準拠。以降②、③となるかと思います。
複雑さかつ、ハマったときの面白さはその逆ですね。③>②>①かな?
だからといって①が全く面白く無いわけではないのでご注意を。
ここまで書いたらやることは1つ。ゲームを作ろう
もうここまで来たら、僕の言いたいことはタイトルとこの大見出しからくみ取ってくれると嬉しいです。
「トリックテイキングを作ろう!」
です。
もうここまで整ってるものも珍しいです。言ってしまえば以下の空欄を埋めていけばゲーム出来ちゃいます。
*カードは全部で( )枚
*使うカードは( )
*切り札が(ある / ない)→切り札は( )
*数字の強さは( )
*( )人で遊ぶ[数字複数指定可能]
*トリックに勝ったとき( )点
*( )のカードを取ったとき( )点
*初めに予想(する/しない)、予想は( )を基準にする
→成功したら( )点 / 失敗したら( )点
はいこれ。もうこれ埋めるだけで終わりです。( )には何を入れてもいいものとします。だから「+10,000」点と入れても構いません。そんなことしたらゲームクラッシャーですけど。
と、いうことで、試しに今から作ってみましょう。何をって、ゲームに決まってるじゃないですか。トリックテイキングゲーム。
①カードは全部で( )枚
まずは使うものから。今回はトランプと断っているので「トランプ」を使いましょう。…で、昔からあるゲームって、52枚全部使いたがらないんですよ。人数によってカード枚数が変わることもありますが、今回は3人/4人のゲームを作りたいので丁度どちらでも割り切れる「36枚」としましょう。
カードは全部で(36)枚
②使うカードは( )
ここでこれが効いてきます。じゃあ52枚から36枚残すとして何残すんだって話。基本的には数字の弱いものを削る傾向が多いので、6,7,8,9,10,J,Q,K,Aを4つのマークから取り出して36枚とします。裏を返せば2,3,4,5は箱に返して使いませんってことです。
使うカードは(2,3,4,5とJoker以外)
③切り札が(ある / ない)→切り札は( )
これがちょっと難しい。初めは全くなしでいいと思います。遊んでみて「切り札入れたらどうなるかな?」の感覚でいいと思います。
今回は以下のように定めます。
切り札が(ある & ない)→
切り札は(最低点の人が手札を見て決める / 切り札無しもOK)
…え?どういうことぉ?と思っている人もいると思いますが、トリックテイキングゲームは、何回もゲーム(ディールとかラウンドとかと言ったりもしますが)を繰り返し、その点数を積み重ねていくタイプが多いです。これは手札による運要素について、何度か手札を配ってその時の成績を付けて合計し、平均化しようという目論見です。1ゲームだけやって「手札がよかったから~/手札が悪かったから~」といわれるので、「じゃあ複数回ゲームやればその言い訳できないんじゃね?」という考えですね。今回は4回行うものとします。
それを踏まえて、下の切り札の条件。一番不利な人が、一番やりやすい切り札を決めていいようにします。そうすることで手札を配るだけのゲームに選択の余地を持たせます。もちろん切り札無しでもOKです。
④数字の強さは( )
特別なことが無ければ、最初に言った通りの物でいいと思います。ここはもう素直に行きます。
数字の強さは(A>K>Q>J>10>9>8>7>6)
⑤( )人で遊ぶ[数字複数指定可能]
さっきも言いましたね。基本的には3~5が作りやすいです。
(3か4)人で遊ぶ
⑥トリックに勝ったとき( )点
ここから目標の設計に入ります。今回の目標としては…
・トリックに勝つと点数がちょっとずつ入る
・特定のカードを取ると一気に点数が変動する=プラスもあるしマイナスもある
・点数は全部取ると「マイナス」になるようにしたい
です。
4人の場合、36/4 = 9。9トリックやります。
3人の場合、36/3 = 12。12トリックやります。仮に1回勝つごとに1点プラスとします。最大12点として考慮した時、カードからの点数が合計で「-24」ぐらいになればいいかな。そうすると、全部取ったとしても-12点になるので、「全部取ればいいってわけじゃねーじゃん!」に陥らせることが出来ます。とりあえず、トリックに勝ったら+1点とします。
トリックに勝ったとき(+1)点
⑦( )のカードを取ったとき( )点
さて、トリックの価値を設定したところで、ここでこの点数を考えます。設計上ここの合計を「-24」にすればいいので…
プラスを12、マイナスを36として考えて、4つのスートに均等に振り分けます。つまり1スート単位に+3と、-9を振り分けます。
+2,+1,-3,-6で4つの数字に割り振られていると面白いのかな。
6,7,8,9,10,J,Q,K,Aから、マイナスとプラスを定めます。
7:+2 8:+1 J:-3 Q:-6
うーん、少しマイナスが重たすぎる。-9を3つに振る。
-3・-3・-3。ずらして…-1・-3・-5。これでどうだ。
8:+2 9:+1 J:-1 Q:-3 K:-5
ま、こんなもんかな?
これで全部のカードを足すと「-24」点。悪くないかも。
(8/9/J/Q/K)のカードを取ったとき(+2/+1/-1/-3/-5)点
ここで追記しておきますが、トリックに得点を付けたのは理由があります。得点カードが途中で全て獲得されたとしても、トリックに点数を付けることによってゲームを続ける気力をギリ持たせるためです。獲得した総合計がマイナスになっても「トリック取れば何とか軽減される!」ということでプラスにしています。
⑧初めに予想(する/しない)、予想は( )を基準にする
お待たせしました。これ。
しないよ!もうすでに得点の部分で頭がいっぱいいっぱい裕次郎なんだもん。
・トリック取って1点貰える
・特定の数字はプラス/マイナス点 のルールが 5つ
実質6つのルールあるんだもん!これにルール足してみろ!地獄ぞ!?
初めに予想(しない)
出来上がったものがこちらになります
ということでルールは以下の通り。
カードは全部で(36)枚
使うカードは(2,3,4,5とJoker以外)
切り札が(ある & ない)→切り札は(最低点の人が手札を見て決める / 切り札無しもOK)
数字の強さは(A>K>Q>J>10>9>8>7>6)
(3か4)人で遊ぶ
トリックに勝ったとき(+1)点
(8/9/J/Q/K)のカードを取ったとき(+2/+1/-1/-3/-5)点
初めに予想(しない)
これを3~5ゲームやる!そして、点数の高い人が勝ち!というゲームです。
ほら出来た。
となると、テーマは…8と9か。あ。
ビリヤードの「エイトボール」と「ナインボール」だ。
それでJ,Q,K。これは人!つまり…
俺たちハスラ―!(ビリヤードする人)
8と9のボールを落としたら勝つゲームをやってるよ!
でも周りのお客様にぶつけると減点な!
ってことでいいんじゃない?
名前は…「thrill - hustler」[スリル・ハスラー]で。テキトーですけど。
と、いうことで「トリックテイキングゲーム」のご紹介でした。
トランプを遊ぶ際に、トリックテイキングゲームのことを見つけたら、ぜひこの記事を思い出してあげてください。また、自分でルールを作るのも簡単です。ぜひ、素敵なルールを思いついたら、友達や家族に布教してあげてください。
おわり
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