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憂える時

使い古した携帯電話は
買い替えの時期だと告げるように壊れ始めた。
消さずに残していた大切な記録は
失われていく。
一瞬のうちに消え去り
頭の中から離れていく。
心にあった優しき安堵は奪われていく。

返して下さい、僕の大切な記録。
返して下さい、僕の大切な想い。
唯一残った一枚の写真。
微笑む君が
「さよなら」と言った気がした。
途方に暮れる僕は
ただ携帯だけを握りしめていた。
小さな雫を目元に作って…。

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