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【年齢のうた】THE YELLOW MONKEY その1●19才のせつない心、「カナリヤ」

このところは、「ALFA55」の関係者向けコンベンションにお邪魔したり……
そこでは流線形あらためRYUSENKEIのパフォーマンスと、リンダ・キャリエールのリリース発表で盛り上がりました。

そしてそして、日曜は羊文学の横浜アリーナ公演に行きました。こちらには感動! 3人とも良かったね。

あとはもう、ひたすら仕事をしております。
日程の関係で(GWも若干影響?)、前倒しで入ってきている仕事もあったりで、ヒーヒー言っております……!

しかし僕、実は5月にロンドンに行く話もあったのですが、その件は流れたようです。まあ元から可能性は高くはなかったのですが。今の国外は、レートと景気の関係でかなり物価高だと感じそうだから、大変そう。海外、行きたいけど。なかなかね。

ではでは今回は、THE YELLOW MONKEYについて書きます。
来月29日、5年ぶりのニューアルバム『Sparkle X』のリリースと、その前の今週土曜日には東京ドームでのライヴが迫っている彼らです!

2000年、バンドが終わりに近づく中で発表されたアルバム『8』


この【年齢のうた】で、イエモンことTHE YELLOW MONKEYについて……と、その前に。
実は僕、「イエモン」という呼び方が、まだ完全にはしっくり来ていないのである。というのは90年代当時はこの言い方は一般的ではなく、自分はまったく使ったことがなかった(イエモンと呼んでたファンもいたかもだが)。
ただ、これは解散後に出たファン選出のベストアルバムでタイトルに掲げられてから定着してきた感があり、2016年のバンド再集結(再始動)以降はかなり一般化したのではないだろうか。なので、ここでもなるべくイエモンと呼ぼうと思う。

で、あらためて。
当【年齢のうた】でイエモンについて取り上げるのは、実は初めてである。
これまでは、ヴォーカルである吉井和哉の年齢ソングを2回にわたって紹介していた。

最初は、吉井のアルバム『39108』について。

2回目はYOSHII LOVINSON(同一人物)の名義の曲「20 GO」(と「70 GO」)について書いている。

こう見ると、ソロでの最初のアルバムに収録された「20 GO」には、若い女性という設定やストーリー性があった。「70 GO」のほうは老人、加齢か。
対して、吉井和哉になっての『39108』のほうは、当時39歳だった彼自身の身の上のことがモチーフになっている。つまり、自分のリアルである。

吉井は、イエモンの頃(~2001年)から自分自身の内面をさまざまな形で楽曲に表してきた。そしてソロになって以降、そうした側面は、表現の生々しさを増しながら、より強まっている。活動上、バンドという枠組みがなくなり、自分ひとりによる歌を唄うのなら、個人の世界をいっそう追求するような状況になったということ。それだけに、こうした流れは納得がいく。

それは年齢ソングについても同じくで、当初のイエモンの活動期に、彼自身のリアルな年齢と絡めた歌があったことは記憶していない。おそらく、実際にそうだったのだと思う。
<追記/上記のことは事実でなかったことが判明したため、お詫びして訂正いたします。詳しくは今回の後に投稿した「【年齢のうた】THE YELLOW MONKEY その2」の回で記していますので、ぜひお読みいただければと思います>


ただ、イエモンにも年齢についての歌自体は存在する。吉井の実年齢とは違うところでのものだ。

そんな中ですぐに思い浮かぶ曲は「カナリヤ」。アルバム『8』に収録された曲である。

『8』は2000年にリリースされた通算8作目のアルバムで、つまり24年前のこと。ファンの方ならご存じだと思うが、彼らはこれを出してからしばらくして活動休止に入ってしまう。
2001年1月、大阪と東京のドーム公演「メカラウロコ・8」を区切りに、バンド自体が休止してしまったのだ。

アルバム『8』にはこの時期のシングル曲(およびそのカップリング曲)がいくつも入っているが、当時の彼らはバンド存続の危機にありながら、音楽的な試行錯誤をくり返していた。とくにアルバムに入ったシングルは「コラボレーションシリーズ」と称し、タッグを組むプロデューサーを楽曲ごとに替え、サウンド面で毎回違う方向性にチャレンジした。

そしてアルバム『8』の中にそっと置かれていたのが、この「カナリヤ」だった。

静かな人気曲となっていった「カナリヤ」


『8』は、僕が初めてこのバンドにインタビューしたアルバムでもある。しかしここに収められた「カナリヤ」は、最初はそこまで印象に残る曲ではなかった。何しろ派手ではないし、イエモンというバンドのイメージからするとおとなしく、むしろ地味なぐらいだ。
なのに、幾度か聴くと、気がつけば心の底に、ひっそりと存在している。そんな曲だった。

イントロからキーボードの音色が際立って響いていて、このエレクトロな感じも彼ららしくない。前述したとおり、サウンドの新生面を探った時期だからなのもあるだろう。

歌の内容は、19才になった女性の独白のようである。言葉を忘れたカナリヤが、もう一度会いたいとか、いつの日にかとか……別れとそのあとの心理を描いた歌詞には、せつなさと悲しみが内在している。
このことは、本アルバムのリリース後に活動休止してしまったこのバンドそのものを示唆したようにも感じられてしまう。そう思ったファンも多かったはずだ。

ただ、主張は強くないのに、この歌にあるような繊細さや静かなエモーション、心にじわじわとしみてくるような感覚も、吉井の、イエモンの音楽の魅力のひとつに間違いない。いい歌である。

イエモンが活動休止し、その3年後の2004年には正式に解散発表があった。メンバーたちはソロで活動するようになり、吉井も自分の名を掲げて動きを始める。やがてライヴもするようになり、さらにしばらくしたらイエモンの曲も唄うようになった。ただ、そこで「カナリヤ」が選ばれることはなかった。ソロで演奏されるイエモンの作品はほんの数曲だから、ムリもないことだ。

しかし、2004年。目立つことのなかった「カナリヤ」は、バンドが解散を発表したあとに編んだベストアルバムに収録されることになる。CD2枚の全27曲のうちに入ったのだ。

さらに2009年には、イエモンの結成20周年のタイミングで企画されたトリビュート盤でも選ばれることとなった。23曲の中でこの歌を選び、演奏したのは、tacicaだった。

2009年の段階でとっくに解散していたとはいえ、活動期には幾多のライヴ、ツアーを行った歴史があり、熱心なファンそれぞれが強い思い入れの曲を持つこのバンドにおいて、最終作でもそこまで目立たなかった曲の「カナリヤ」がこんなふうに選ばれたのはちょっとした驚きだった。なにせイエモンは、インディ時代も含め、ここまでのオリジナルアルバムだけで9枚もある。しかも「カナリヤ」は、ライヴの場ではさっきの2001年のドーム2公演でしか演奏されていない(はずな)のに、だ。

しかもこの後、さらにビックリすることが起こる。その驚嘆を招いてくれたのは、俳優の山田孝之だった。

山田は、2015年から翌年にかけてOAされたフェイクドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』に主演。その劇中のカラオケのシーンで、いきなり「カナリヤ」を唄ったのだ。切々と、本当にせつなさを含んだような唄い方で、だ。下記の動画の最後あたり、50秒付近が、その歌の場面である(歌の音声はないが)。

当時これを観た僕は、いたく感動した。もともとこのドラマは、山田が役者として悩んでいる時に移り住んだ赤羽の土地柄とそこに住む人たちとの交流によって心に灯りをともしていくストーリー。その苦悩の最中で彼はこの歌を、まっすぐに唄った。「カナリヤ」にそこまで思い入れを持っていた人がいたんだということがわかって、その驚きと、うれしさがあったのだ。

ご存じの人もいるかと思うが、山田孝之は少年時代からのイエモンの熱心なファンで、俳優として知られたあとに、吉井和哉と交流を持つようになっていた。2009年には吉井ソロの楽曲「ビルマニア」のMVに出演している。

そして同じ年、さっき触れたイエモンのトリビュートアルバムにおいて、「SEA」という曲に朗読という形で参加しているほどだ。

それから6年後、『北区赤羽』のドラマでは、吉井が作曲した「TOKYO NORTH SIDE」(つまり北区だ)を自身で作詞し、歌唱を担当。ドラマではこれがエンディング曲になっている。次の動画では、41秒付近で吉井が曲を依頼されている。

同作は、のちに吉井もセルフカバーしている。

やがて2016年初頭、イエモンが再集結をしたタイミングで、僕は山田孝之にインタビューすることができた。その席で彼は、イエモンを生で初めて観ることができるのをとても楽しみにしていると打ち明けてくれた。90年代に観れなかったのは残念だったと思いながらも、「でも今年、観れるので」と笑顔を見せながら語ったのである。

こうして再集結を実現させたイエモンは、その後、精力的な活動を展開。そして「カナリヤ」は、復活の最初の場となった代々木競技場をはじめ、各地のライヴで演奏されることが何度かあった。僕はそうして聴くたびに、いい歌だよなぁと実感したものだ。

こんなふうにさまざまなことがあって、「カナリヤ」はとても大切な曲になった。19才になった女の子のせつない思いが描写されたこの歌は、聴くたびにグッと来る。


さて、開演まで丸4日を切った東京ドームは、果たしてどんな空間になるだろうか。
今回は吉井の喉の治療……そう、咽頭ガンからの根治を経てのものになる。これまでの間に、昨年末の日本武道館でのアコースティックライヴ、今春の各地でのファンミーティングでの演奏はあったものの、バンドの正式なライヴとしては3年4ヵ月ぶりとなる。吉井ソロを入れると、彼がエレクトリック編成で唄うのは、2年3ヵ月ぶりだ。

5月には力強い新作『Sparkle X』をリリースする4人。このアルバムは、今の彼らの生きざまがそのまま映し出されているかのようだ。聴く者に生きるエネルギーを与えてくれる、まさに輝かしい作品である。

その直前にバンドが立つ、東京ドームのステージ。
今の4人の生きざまが感じられるようなライヴになることを期待している。


(THE YELLOW MONKEY その2に続く/ただしちょっと期間を空けてから書きます)


新横浜のステーキレストラン四季彩で
卵かけハンバーグ丼セット、1000円。
これにセルフでコーヒーor紅茶も付きます。
米沢牛ステーキとハンバーグが売りのお店らしいですが、
ライヴ直前だったのでこの程度の量で!
ていねいな仕事ぶりでした♪

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